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プロが教える受験生の作文教室「公立中高一貫校適性検査の極意1・意見作文に効く対比の構図」

2015年9月11日 桐生玲子

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前回、200字の意見作文が、公立中高一貫校適性検査の対策の基本になることをお伝えしました。まずは自分の意見を構築するのですが、その時にお子様の考えをまとめやすくするのが200字意見作文です。

ただ、お子さんって「さあ、意見を書いてみて」と言われても、なかなか書けないものなんです。そこで、私の塾で試行錯誤の結果、頭の整理をつけやすいことが分かったのが、まず意見を賛成か反対かで考えてみる対比の構図です。本来「意見」というのは、千差万別様々な考え方があるものです。私たち大人は、いろいろな経験があるからこそ「私ならこう思う」という意見を自分の中から出すことができますが、大人は自分ができるからといってお子さんの立場で考えることができません。

そのためつい子どもたちに「自分の意見なんだから、自分で考えて」と言いがちです。もちろんさらっと書けるお子さんもある程度いらっしゃいますが、私の体感では、多くの小学生のお子様に「自分の意見を言う」というのはかなり難関で、意見を求められると「??」となる場合がほとんど。どのように考えたらいいのかがわからない場合が多いのです。意見がないというより、どう考えたらいいのかがわからない。

そこで、私の場合は、ある一つの事柄Aに関して、ざっくりと意見を二つに分けて考えるという方法でアクセスしています。ひとまずAという意見に「賛成か反対か」で考えてみてもらいます。例えば、図書館に漫画の本が置いておくことは有益かというテーマがあったとして、それに対して賛成か反対か、お子さんに自分がどちらにしっくりくるかを考えてもらいます。その場合に、賛成や反対の理由の例も、私たち大人の方で提示してあげることがコツです。まだ、論理的な思考力や経験の乏しい小学生の段階では、与えられないことには、自分の意見などは何もないのだと考えていただいていいでしょう。ですから「私は、図書館に漫画の本を置いておくことに賛成です。なぜなら理由は・・・」と理由を考えさせたあとに、「賛成の場合の例で言うとね・・・」ということで教えます。

たとえば「本を置いておくだけより、漫画も置いてあると図書にあまり興味のない生徒も図書室に来るようになって活性化する。科学漫画や歴史漫画など、漫画になっていることによって頭に入りやすくなって効率よく勉強ができる」など。それを、一緒に相談しながらお子さん自身の200字の意見として形を作ります。そこまで土台を作ってから、20分で書いてみよう、と書かせます。うまく相談ができていれば10分で書けます。

その後は、反対の意見を論じてみます。例のテーマの場合、「図書館に漫画の本を置くことに私は反対です。なぜなら、漫画の本が置いてあるとやはりみなそちらが読みやすいので漫画を利用してしまい、本を借りる人が減ってしまうからです。また、本を借りに来たのについ面白いために漫画を読むのがやめられなくなったり、笑い声が出てしまいうるさくなる場合もあると思います」。などのように敢えて反対の意見も考えてみます。

この作業をやることで、やっとお子さんたちは自分で「自分の意見とは何か?」がわかってくるようです。個別の受験作文用の授業では、初めの数回は、必ずこの作業を繰り返します。そうすることで、自分の意見をどうやって作り出していくのかお子さんたちが構築できます。

意見とは、生み出すものではなくて、まずは与えるもの。そして子どもたちはいずれ与えられた意見を自分の力で取捨選択していくのです。私たち大人にはいろいろな考え方があるよということを提示して教えてあげることが必要なのではないでしょうか。親としての考え方、教師としての意見は出し惜しみすることなく、お子さんにどんどん教えてあげてくださいね。

次回は、書くときのスピードについて、何文字をどれくらいのスピードで書けるようにすればいいかをお話します。

※記事の内容は執筆時点のものです

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