連載 ホメ夫先生のやる気引き出し術

春なのに自由研究!? 小6男子が残した、形と価値のある課題発表とは?|全力珍回答! ホメ夫先生のやる気引き出し術(19)

専門家・プロ
2016年4月26日 辻義夫

もうすぐゴールデンウィーク、例年お出かけを予定するご家庭も多いと思います。何泊かでちょっと遠いところへ、というご家庭もあるでしょう。受験生のご家庭では、お出かけも「勉強」を意識したものにするという場合も多く、楽しみながら理科や社会の勉強にもなるようにと工夫することも多いようです。

お子さんが高学年、特に6年生になると、休暇といってもなかなか思い切って日程を割くことが難しいものです。サピックスのようにゴールデンウィークに特訓がある塾もあります。

そんな忙しい受験生ですが、とにかくやってみたら凄いことになった、というお話をご紹介します。

春なのに自由研究?

ある年のゴールデンウィーク、大手進学塾に通う6年生のSくん、さすがに6年生ということで旅行もなし、予定といえば塾の宿題と「◯◯中オープンテスト」といったテストなどのイベントくらい。

「つまんないなぁ……」などと悶々とした4月下旬を過ごしていたSくん。しかも、私立の小学校に通っているSくんには、塾の宿題に加えて、学校の宿題、それも厄介なものが出ていたのです。「研究発表」という課題です。夏休みの自由研究のような課題です。

何をやろうか、さっぱりアイデアもなく、飛び石のような休みの合計期間は約一週間。さて、どうしよう……。

とにかく「収集」することで何かが学べる!?

考えあぐねたSくん、とうとう半分やけっぱちで「秘策」を思いつきます。

「その辺の雑草を集めて、研究ということにしてしまおう」

「研究」というからには、何かしらそれらしき「形」が残らなければならない。そう考えたSくんは、雑草を一束ずつ、模造紙に貼り付けて「形」としました。

庭や近くの空き地へ行って、雑草を探します。よく見ると、雑草にもいろんな形のものがあるんだな、と思いつつ、はじめは引き抜こうとしたのですが、どうしても抜けないものは、ハサミで根元を切ります。大きなハサミを使ってもなかなか切れない雑草の茎に、なんだか怖い思いがしたそうです。

一日かけて近所の空き地や土手をかけ回って、いろんな種類の植物を集め、それを模造紙に貼り付ける準備をします。

まずは名前を調べなければなりません。図鑑を使って調べようとしますが、なかなかこれが大変です。

はじめは時間がかかり、投げ出したくなったのですが、花が付いているものだったら「花びら 白 たくさん」といった特徴でインターネットで検索すると、いろんな植物の写真が出てくるので、そのなかからいちばん似ているものを図鑑で調べるのが早いということがわかりました。

形ある、そして価値ある「珍回答」

「みんなにすげえ笑われたんだよ。」

と屈託なく話すSくんの話を、ホメ夫は感心しながら聞いていました。

「だって、学校に持っていく頃には草がぜんぶしおれちゃって、枯れ草持ってきて何やってんだよって。(笑)」

小学生の、友人に対する「ツッコミ」は、容赦がありません。

たくさんのしおれた雑草が貼り付けられたSくんの「課題発表」は、クラスメートから見れば、まさに「形ある珍回答」だったのでした。まわりの友達の発表は立派な実験キットを使ったものだったり、見栄えがするものがとても多かったから、なおさらです。

「でも先生にはすごく褒められたんだよ」

そりゃそうだと思いました。

「やってみて、どうだった?」

ホメ夫の質問に、Sくんは目をキラキラさせて答えます。

「いろんなことがわかったよ。持って帰ったころには花が閉じちゃってたものもあったから、その場でデジカメで写真とっとけばよかったとか。あとで調べたら、植物の標本をつくるときは、乾燥させるのが何より大切なんだって。僕のは乾燥させなかったのがダメだったんだね。それと、セロテープが剥がれてきて大変なことになった。植物標本を作るときは、セロテープじゃなくて紙のテープを使うんだって。あ、あと、雑草って、イネ科とキク科がやたら多いんだよね。」

「好きこそものの上手なれ」の逆からいこう

しばらくこの「価値ある珍回答」に関して話をしていて、ふとホメ夫は気づいたのです。

「Sくん、そんなに植物に詳しかったっけ? てか、興味あったの?」

するとSくんは、自分でも不思議そうに答えました。

「全然。興味なかった。でもずいぶん詳しくなったんだよね」

このことをきっかけに、植物を見れば「何科の植物かな」と考え、できれば携帯電話などで写真を撮り、インターネットで調べ、図鑑を見る、そんなことを自然とするようになったのです。

子どもに限らずですが、好きなもののことはどんどん調べたり、誰かと情報共有したりして、知識を増やす人は多いものですね。知識が増えて詳しく知ると、もっともっとそれが好きになる。鉄道好きでもアイドル好きでも何でも、似たようなことはおこります。

逆にSくんのように、まず知識を増やすことで、対象に対して興味が湧くこともあるんですね。「好きこそものの上手なれ」の鶏と卵をひっくり返したような話です。

ゴールデンウィークが近くなるといつも思い出す、Sくんの植物標本。

その夏、Sくんが植物標本にリベンジしたのは言うまでもありません。こんどはデジカメも、採集したものを場所ごとに分けて入れるための数枚のポリ袋も、ルーペも、硬い茎を切るための剪定ばさみも、忘れずに持って行ったようです。

ゴールデンウィーク、植物を中心にお出かけの内容を考えるなんて、いいかもしれませんね。

※この記事は、「マイナビ家庭教師」Webサイトに掲載されたコラムを再編集のうえ転載したものです


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※記事の内容は執筆時点のものです

辻義夫
この記事の著者
辻義夫 専門家・プロ

中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員

つじ よしお大手進学塾での指導経験を経て、中学受験専門プロ個別指導SS−1創設メンバーとして副代表、現在は顧問を務める。「わくわく系中学受験理科」と称される指導法、勉強法は「楽しく学べて理科系科目が知らない間に好きになってしまう」と好評。子どもの良いところをほめまくることから「辻・アインシュタイン・ホメ夫」の異名を持つ。「カレーライスの法則」「ステッカー法」など子どもが直感的に理解できて腑に落ちる解法を編み出す名人でもある。著書に『頭がよくなる 謎解き理科ドリル』(かんき出版)『中学受験 見るだけでわかる理科のツボ』(青春出版社)『中学受験 すらすら解ける魔法ワザ 理科・計算問題』(実務教育出版)などがある。

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