連載 ホメ夫先生のやる気引き出し術

理系科目が苦手という思い込みの危険|全力珍回答! ホメ夫先生のやる気引き出し術(26)

専門家・プロ
2016年8月23日 辻義夫

こんにちは。

辻・アインシュタイン・ホメ夫です。

夏休みもあと少し、8月末は数日間塾が休みだから学校の宿題の残りをしなくちゃ、というお子さんもいるのではないでしょうか。

今回は、お子さん、親御さんたちの間でまことしやかに語られる都市伝説(?)について考えてみたいと思います。

それは

「うちの子は理系科目が苦手で……」

「女の子だから理科ができないんです」

といった話。

「理系科目が苦手」という思い込みの危険

なぜか「男子は理系科目ができて女子は文系科目が得意」といったことを信じている方は多いです。また、算数や理科でつまずくと「理系科目は苦手」とあきらめモードになるお子さん、親御さんも多く、ホメ夫はなんとかしてそれをひっくり返してやろうとやっきになるわけです。

統計をとったり大規模な調査をしたわけではありませんが、少なくとも中学受験の算数や理科の得意、不得意は性別なんかに関係ないと思いますし、「苦手だからできない」と本人や親御さんが思い込んでいては損です。

苦手、難しいと思い込んでいる科目の説明は聞いても頭に入ってこないし、面白みも感じにくいからです。

また親御さんの中には、謙遜の意味で「うちの子は算数ができなくって……」とお子さんの前で先生や他の親御さんに言ってしまいがちな方も多いのですが、これもやめましょう。「あなたは算数が苦手」とお子さんにすり込んでいるようなものです。

「できない」のではなく「知らない」

さて、中学受験専門というわけでもない小規模な塾に通っていたMくんのお話です。

通っている塾の勉強だけでは、目標とするO中学校への合格が難しいのではないか、との危機感から、6年生の9月にSS-1にやってきました。

これまでの模擬テスト、塾で使っているテキスト、ノートなどを細かく見ていくと、O中学校合格から遡った学習メニューが見えてきました。目標とするところまで、偏差値にしてあと15。

入試まであと5ヶ月、やらなくてはならないことを整理し、スケジュールに落とし込みます。短期間で入試応用レベルの問題に対応できる力をつけるには、かなりの学習の密度と本人の努力が必要です。

Mくんはおとなしいタイプで、真面目で努力家。国語は塾の勉強だけで、模試でも結果が出ています。でも理系科目にはちょっと自信がありません。

では理数系の科目ができない子なのかというと、できないというよりは「知らないことが多い」という印象でした。わりとおっとりしたタイプなので、「打てば響く」という理解のしかたではないですが、ちょっと時間をかけて理解、納得したこと、腑に落ちたことに関しては、次から確実に使いこなせる、そんなタイプの子でした。

「Mくんは理系向きだね」

こう言うと、最初はなんだか不思議そうな顔をしていましたが、知っていることが増え、実際に解ける問題が多くなってくると、嬉しそうにどんどん問題を解くのでした。

「思い込み」も実力のうち

ホメ夫がMくんに伝えていることを、Mくんが家でお母さんに言ったようです。

「先生、あの子が理系向きだなんて、そんなこと……」

面談時に、やや謙遜気味におっしゃるお母さん。でもホメ夫はおだてたわけでも、Mくんを乗せようとしているわけでもなく、真面目に「この理解力と問題を解くガッツがあれば、理系科目を得点源にできそうだぞ」と考え始めていたのでした。

Mくん自身も「理系が得意」と思い始めていて、知っていることが増え、考えるためのツールを身に付けるたび、それを問題で使い、使って解けるようになったら喜びを感じ、また新しいことを身につけようとする、そんないい循環に入っていたのです。

こうなると「思い込み」も大きな武器です。これまで苦手と思っていた算数、理科が得点源になり始め、成績にも反映してきました。

彼が何より楽しそうにやっていたのがO中学校の過去問。

彼が問題を解き、ホメ夫は問題を

A:合格するために絶対とりたい問題

B:合格するためにできればとりたい、合否を分ける問題

C:難度が高く、合否に直結しないであろう問題

に分類し、突き合わせをします。その作業をたっぷり十数年分。やるたびに新たに「身につけておくべきこと」が発見でき、得点は合格点に近づいていきました。またペース配分もすっかり身につき、O中学校の問題を解くうえでの「作法」は万全。

この作業は非常に大きな力になったと思います。毎年毎年、良問をつくり続けてくださるO中学校の先生に感謝の気持ちすら生まれてきます。O中学校の入試対策として、これほどよくできた問題集は存在しません。

「理系」になったMくんのその後

こうやって受験を乗り切ったMくん(O中学校にも合格しました!)、その後どうなったのでしょうか。

実は3年後に、お母さんが妹さんに関する相談でご連絡をくださいました。

「先生、Mは先生のおかげであれからすっかり『自分は理系が得意』って思い込んじゃって、今じゃ一番好きな科目は理科なんですよ。部活も科学クラブ(笑)」とお母さん。

Mくんの「思い込み」は、ついに本物になっていたのでした。

夏が終わり9月が近づいています。

年の後半、お子さんの「思い込みパワー」に火をつけてみませんか?

※この記事は、「マイナビ家庭教師」Webサイトに掲載されたコラムを再編集のうえ転載したものです


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※記事の内容は執筆時点のものです

辻義夫
この記事の著者
辻義夫 専門家・プロ

中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員

つじ よしお大手進学塾での指導経験を経て、中学受験専門プロ個別指導SS−1創設メンバーとして副代表、現在は顧問を務める。「わくわく系中学受験理科」と称される指導法、勉強法は「楽しく学べて理科系科目が知らない間に好きになってしまう」と好評。子どもの良いところをほめまくることから「辻・アインシュタイン・ホメ夫」の異名を持つ。「カレーライスの法則」「ステッカー法」など子どもが直感的に理解できて腑に落ちる解法を編み出す名人でもある。著書に『頭がよくなる 謎解き理科ドリル』(かんき出版)『中学受験 見るだけでわかる理科のツボ』(青春出版社)『中学受験 すらすら解ける魔法ワザ 理科・計算問題』(実務教育出版)などがある。

中学受験情報局「かしこい塾の使い方」 https://www.e-juken.jp/

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