学習 連載 合否を分ける中学受験「社会」の学び方

合否を分ける中学受験「社会」の学び方(26)|世の中について語れ! 麻布中 平成29年度「社会」

専門家・プロ
2017年2月14日 馬屋原吉博

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こんにちは。中学受験専門の個別指導教室「SS-1」教務主任の馬屋原です。

今年度の有名校の社会の入試問題の傾向と対策について、少しずつコメントしていきます。

先回の「開成中学」に続きまして、今回は第2弾「麻布中学」をお送りいたします。

麻布の社会の特徴

麻布の社会は、中学入試の社会の中でもかなり異色な部類に属します。

  • 特定のテーマから日本社会の変化を追う「本文」が準備されている
  • 1行~3行の記述問題が多い
  • 直近の時事よりも、ここ数十年の社会の変化についての知識が求められる

といった特徴を持っています。

ちなみに昨年の本文のテーマは「境界」でした。

すでに難民問題が世界を席巻していたとはいえ、ドナルド=トランプ氏が大統領に選出され、日本政府が駐韓大使を引き上げさせるその前に、「境界」をテーマに問題を作ってきた麻布の先生のセンスにうならされましたが、さて、今年はどんな問題が出たのでしょうか。

僕の家は高級住宅街!!

「僕の家は東京の田園調布という住宅地の一角にある。」という、なかなかインパクトのある書き出しが目を引く今年の問題の「本文」は、田園調布近辺の歴史を追いながら、「建築物」や「地域社会」の変化について考えさせるものでした。

最後の論述(問9)では、「防犯カメラ付き住宅」「オール電化住宅」「高層マンション」「震災復興住宅」「郊外の大型ショッピングセンター」といった5つ建築物からひとつを選び、その建築物がどんな社会の問題を解決し、さらにどんな別の問題を引き起こしてきたかを、100字程度で語ることが求められました。

ただ、こちらは、選べる例が5パターンもあることから、しっかりと麻布対策を練ってきた受験生であればほとんど書けたのではないかと思われます。

私がより麻布らしさを感じたのは、そのひとつ前の問8です。

地域社会における「助け合い」や「共有」の精神を奨励する「田園調布憲章」を読ませたうえで、「街の環境の維持が難しくなってきたのは、この憲章がどのように受け止められるようになったからか」を問う問題でした。

ほとんどの受験生が「なんとなく」はわかったかもしれませんが、「『個人』というものがより重視されるようになった」と書き切れた受験生は、そんなに多くなかったのではないかと思います。

肝心の対策は? 家庭での会話が鍵

このように、ここ数十年の日本社会の変化について論じさせる麻布の社会には、つけ焼刃の学習ではなかなか太刀打ちできません。

麻布志望のご家庭のお父さま、お母さまは、できるだけ早いうちに、この学校の社会を数年分、解いてみることをおすすめします。

大人であればある程度答えられるけれども、それを子供に問うから難しい、という麻布の社会の最大の特徴を実感できれば、必然的に普段、家でどんな会話を意識すると良いかが見えてきます。

塾が提供する麻布対策講座も有効ですし、徹底した過去問演習も必須です。

今年の問題の問7は「多摩ニュータウン」に関する問題でしたが、麻布はH12年の問題でも多摩ニュータウンについて触れています。私が麻布志望の生徒を担当する場合、20年分近くやりこみます。

しかし、それ以上に、それまでのご家庭での会話の質が答案の質を大きく左右するのが麻布の社会です。それが「良いことなのかどうか」は分かりかねるところもありますが、少なくとも麻布の社会に対応するには、親から「子供にはまだ早い」というリミッターをかけられることなく、積極的に「世の中」について知る機会を与えられた受験生の方が有利です。

※この記事は「マイナビ家庭教師」Webサイトに掲載されたコラムを再編集のうえ転載したものです


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※記事の内容は執筆時点のものです

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