音読・黙読の切り替えで内的雑念は振り払える! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の集中力アップの秘策(3)
受験勉強への集中力を妨げる最大の要因は「内的雑念」と呼ばれるものです。
雑念には「内的雑念」と「外的雑念」の2種類があり、後者は工事の騒音がうるさいといった外的要因によるものです。
ただし、受験勉強に限っていえば、これはわずか5%程度に過ぎず、大半は「内的雑念」です。「入試で失敗したら、どうしよう……」といった不安や、「ゲームがしたいな……」といった願望などが、頭の中で言葉を伴って生じるもので、余計なことを考える結果、勉強の効率は著しく低下してしまいます。
音読が内的雑念を封じ込め、集中力を高める
内的雑念を封じ込めるには、音読が一番です。脳内の言語中枢は、ひとつの情報しか処理できません。だから、音読をしているときは内的雑念が強制的に中断されます。
この脳の性質を利用し、勉強中に内的雑念が生じたら、即座に音読を始めて封じ込めるべきです。立ち上がり、下腹部に力を入れて大きな声で音読すると、さらにこの効果は高まります。
音読と黙読を切り替えるトレーニングをしよう
しかし、音読にも欠点があります。それは、読むスピードが、黙読に比べ圧倒的に遅くなることです。人にもよりますが、同じ文章を読むのに平均2.5倍の時間がかかってしまいます。また、読みながら内容を深く考察する能力も音読によって低下するため、理解を深めるタイプの勉強には不向きです。このため、音読によって集中力が回復したら、できるだけ速やかに黙読に戻す必要があります。
私が代表を務める受験医学研究所では、脳機能を計測しながら理想的なタイミングで音読と黙読を切り替えるトレーニングを行っています。専門の医師が特別な検査装置を用いて指導すると、20分程度で最適な切り替えができるようになります。ただし、受験生ひとりでも、次の方法を実践すれば、内的雑念を封じ込めるコツがつかめます。
1.内的雑念が生じたら、即座に音読に切り替える。
2.音読により内的雑念が消えたと感じたら、黙読に切り替える。
3.再び内的雑念が生じたら、また、即座に音読に切り替える。
4.再び音読で内的雑念が消えたら、また、黙読に切り替える。
以上を根気よく繰り返すと、内的雑念を振り払うための脳内の感覚が次第につかめてきます。2週間ほど続けていると、約9割の受験生が効果を実感できています。
※この記事は、「マイナビ家庭教師」Webサイトに掲載されたコラムを再編集のうえ転載したものです。
吉田たかよし(医学博士・心療内科医師)
灘中学、東京大学、国家公務員上級経済職試験、医師国家試験などの合格体験を元に、日本で初となる受験生専門の心療内科、本郷赤門前クリニックの院長を務める。カウンセリングと最新の磁気刺激治療を組み合わせ、「受験うつ」から早期回復を図るプログラムを開発。脳科学と医学を応用した受験指導にも取り組む。『今どきの大人を動かす「ほめ方」のコツ29』(文饗社)など著書60冊を上梓。
本郷赤門前クリニック
https://www.akamon-clinic.com/
■バックナンバー
▼脳を育てる勉強法
- ご褒美で釣ると子供の脳は勉強嫌いになる!? 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の脳を育てる勉強法(16)
- 試験で頭が真っ白になるのは親が原因? 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の脳を育てる勉強法(15)
- イマドキの子供を動かす「ほめ方」のコツとは? 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の脳を育てる勉強法(14)
- 長引く風邪は「受験うつ」の兆候? 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の脳を育てる勉強法(13)
- 笑う門には「合格通知」来たる!? 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の脳を育てる勉強法(12)
- 勉強効率の低下は寝返り不足が原因かも? 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の脳を育てる勉強法(11)
- 「受験うつ」を招く丸暗記の勉強法には要注意! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の脳を育てる勉強法(10)
- 試験中に眠くなる……。低血糖が原因の「受験ハンガーノック」とは 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の脳を育てる勉強法(9)
- 子供の才能をほめると努力できないダメ人間に育つ! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の脳を育てる勉強法(8)
- 「放っといて」と怒鳴りだしたら「受験うつ」にご用心! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の脳を育てる勉強法(7)
- 逆転劇から学ぶ受験の極意! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の脳を育てる勉強法 (6)
- 五輪から学ぶ正しいライバル関係の築き方 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の脳を育てる勉強法(5)
- 開成中学の合否をわけた夏休みの体験! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の脳を育てる勉強法(4)
- オナラについての詩をどう捉える? 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の脳を育てる勉強法(3)
- 中学受験、合格の秘訣は頭の良さより実体験! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の脳を育てる勉強法(2)
- 朝型と夜型は遺伝子のタイプによって変わる! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の脳を育てる勉強法(1)
▼集中力アップの秘策
- 生活の雑音が志望校への合格をもたらす! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の集中力アップの秘策(14)
- 赤い色を見ると知能指数が低下する! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の集中力アップの秘策(13)
- うつ病になる子供が増加中! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の集中力アップの秘策(12)
- 噛んで噛んで学力アップ!? 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の集中力アップの秘策(11)
- 早起き大作戦★早朝のゲームタイム! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の集中力アップの秘策!(10)
- 落ち着きのない子供の成績を上げる秘訣! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の集中力アップの秘策!(9)
- 1日1時間の勉強だけで医学部に合格! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の集中力アップの秘策!(8)
- 集中力の持続は15分がベスト! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の集中力アップの秘策!(7)
- 声の高低にメリハリをつければ、集中力をコントロールできる 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の集中力アップの秘策!(6)
- タマネギのパワーで集中力をアップ! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の集中力アップの秘策(5)
- 脳のサーカディアンリズムが集中力を支配する! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の集中力アップの秘策(4)
- 音読・黙読の切り替えで内的雑念は振り払える! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の集中力アップの秘策(3)
- 試験中に問題文を指でさせば集中力が上がる! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の集中力アップの秘策(2)
- 入試の合否は姿勢で決まる! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の集中力アップの秘策(1)
※記事の内容は執筆時点のものです
とじる
お気に入り機能は
会員の方のみご利用できます
会員登録のうえログインすると
お気に入り保存できるようになります。
お気に入りのコンテンツは、
マイページから確認できます