連載 脳を育てる勉強法|ドクター吉田

イマドキの子供を動かす「ほめ方」のコツとは? 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の脳を育てる勉強法(14)


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数年前から「ほめれば、子供は健全に育つものだ」と信じ込み、やたらと大げさにほめようとする親や先生が増えてきました。でも、いざ、ほめてみたら、イマドキの子供はすぐに増長し、悪影響のほうが多かったという苦い経験をお持ちの方も多いでしょう。

ほめて子供のモチベーションを上げるにはコツがあります。

「ほめる」の副作用

たしかに、ほめてあげることは、子供の脳の発育にとって、とても大事なことです。ただし、子供を望ましい形に導いてあげるには、ほめ方にちょっとしたコツがあることが、脳科学の研究などで明らかになってきました。

カギを握っていたのは、脳内にある「A10神経」です。ほめられると、この神経が刺激を受け、快感ホルモンとも呼ばれるドーパミンを分泌するため、気持ちよく感じます。

この仕組がいい方向に作用すれば、努力して結果を出そうとする健全なマインドが、子供の脳に深く刻み込まれます。ところが、ドーパミンはワガママな行動を促す副作用ももたらすため、ほめられたことで増長してしまう場合もあるのです。

副作用を防ぐ「ほめ方」のコツとは

この副作用を防ぐ最善の方法は、ほめた直後に、さり気なく次の目標を示してあげることです。

たとえば、子供が試験で80点を取ってきたとしましょう。手放しにほめたら、増長して勉強しなくなるかもしれません。そこで、ほめた後に、さりげなく「次は85点が狙えるね」と目標を付け加えていただきたいのです。そうすると、脳内で意欲を生み出す側坐核が刺激を受け、今後も引き続き勉強しようというヤル気が強化されます。

このとき、ヤル気を最大限に高めるコツは、ほめられた子供が、「このまま頑張ると、次はなんとか達成できそうだ」と、心の底で確信できる水準に目標を設定してあげることです。

次の目標が低すぎると、脳はドーパミンの作用を持て余し、増長してしまいます。かといって、「次は100点満点をとろう」などと、高すぎる目標を安易に口にしてしまうのは最悪です。子供脳は、頑張って試験でいい点をとっても無理難題を押し付けられるだけだと学習し、次第に無気力になってしまいます。

普段から子供をよく観察し、ほめた後は、半歩だけ進んだ目標を示してあげるようにしてください。

※この記事は、「マイナビ家庭教師」Webサイトに掲載されたコラムを再編集のうえ転載したものです。


吉田たかよし(医学博士・心療内科医師)

灘中学、東京大学、国家公務員上級経済職試験、医師国家試験などの合格体験を元に、日本で初となる受験生専門の心療内科、本郷赤門前クリニックの院長を務める。カウンセリングと最新の磁気刺激治療を組み合わせ、「受験うつ」から早期回復を図るプログラムを開発。脳科学と医学を応用した受験指導にも取り組む。『今どきの大人を動かす「ほめ方」のコツ29』(文饗社)など著書60冊を上梓。

本郷赤門前クリニック
https://www.akamon-clinic.com/


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※記事の内容は執筆時点のものです

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