連載 中学受験のイロハ 鳥居りんこ

花が咲きそうな場所に置きなさい|中学受験のイロハ 鳥居りんこ(5)

専門家・プロ
2016年6月23日 鳥居りんこ

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人間は「置かれた場所で咲きなさい」(渡辺和子著 幻冬舎)ということが大切ということは本当にそのとおり!と思うアタクシです。

しかし、また一方で私たち親は「環境を選んであげる子育て」をしなければならないとも思うのです。環境は選べるからです。特に前回、触れました「わが子は育てにくいような気がする」と母が感じているケース。

この場合はオタマジャクシからカエルくらい変わってしまう子供の思春期を甘く考えてはいけません。もちろん、育てにくさを感じていない母でも、この思春期問題は避けて通れないので、わが子に対して無関心であっていいわけがありません。

母が「育てやすい子」と感じていても、子供自身のキャパが若干大きいというだけのことで、俯瞰で見れば「育てにくい子」と大した差はないからです。

つまり、どの子にとっても当てはまるということになりますが、考えるポイントは「どこにわが子を置けば、花開くか?」だけです。

私学でも公立でも、学校には独自のルールがある

私学には教育理念というものがあって、各々がそれに沿った教育方針を立てているのですが、りんこ流にちょっと乱暴に解説するならば、こういうことになります。

「私共、松学園の敷地面積は100m×100mです。このなかでは自由に走り回って構いません」

一方で竹学園はこう言います。

「私共、竹学園も10000平方メートル敷地面積です。このなかでは歩いて頂きます」

このように学校によって「歩け」を善しとするところ「走れ」を善しとするところ、いろいろです。「隊列を組んで歩け」というところもあれば「各々が自由に勝手にやってよし」というところもあります。

学校によって教育方針(ウチはこういう人が幸せになると思っているので、そのように育てますよというお告げ)はさまざまです。ただし、これにはこういう注釈が付くのです。

「この100m×100mを1ミリでも超えて、柵の向こう側に出てしまった場合は本校の生徒とはみなしません」

アタクシの言わんとしている意味をわかってくださいますか。学校は私立公立問わず、そこ独自のルールがあって、違反者には厳しいのです。

それゆえ、隊列を組んで歩くことが大嫌いな子供が「隊列こそが幸せに繋がる第一歩」と堅く信じて疑わない学校に行くことになると、三つ巴の悲劇が起こります。

ひとつは子供、ひとつは親、そして学校(教職員及び級友)です。誰にとっても不幸なことになります。

あなたがすべきことは、芽生えたばかりの才能を大切にすること

まずはあなたのお子さんをじっくりと観察してみてください。

・なにが好きで
・なにに興味があって
・なにが得意なんだろう?

という視点で観察します。

「わが子はだらしなくて、言い訳ばかりで、やる気も根気もないので、それを矯正してもらえる学校に行かせよう」と考えて中学受験に足を踏み出すと、数年先にあなたは誰かに「助けて!」と泣きつくことになります。

12歳足らずで、その子の「得意」を見抜くのは実はとても難しいのですが、すでに芽は出ているはずです。

今の時点で算数が大嫌いなのに、中学に入ったら大好きになって長じて数学者になったというケースよりも、現時点で「図形のセンス」があるとか「数式が綺麗に割り切れるとウットリする」という子の方が数学者の確率は増すでしょう。

親が着目するのは、この芽生えたばかりの小さな小さな才能です。中学受験を決意したならば、小さな才能が芽吹いたわが子がきちんと花咲くために肥料を与え、水を与え、お日様に当ててくれる学校を探さなければならないのです。

まずはわが子に、どんな得意があるのかを探すところからスタートです。

※この記事は、「マイナビ家庭教師」Webサイトに掲載されたコラムを再編集のうえ転載したものです。


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※記事の内容は執筆時点のものです

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