連載 中学受験は親と子の協同作業

東京・神奈川在住の受験生は1月の千葉・埼玉入試を受けるべき?|中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩 Vol.22

専門家・プロ
2018年11月29日 石渡真由美

首都圏では、1月になると、千葉・埼玉の入試が始まります。千葉・埼玉在住の受験生にとっては、入試本番になりますが、2月1日〜3日を本番に控えている東京・神奈川在住の受験生にとっては、1月の千葉・埼玉入試は、本番の雰囲気に慣れるための「肩慣らし受験」。近年は肩慣らしとして2校以上受けるのが一般的です。

1月実施の千葉・埼玉入試 「肩慣らし受験」はできるだけした方がいい

東京・神奈川に住んでいて、千葉・埼玉から遠いエリアに住んでいる場合、「実際に通うのは無理だし、受けない」と判断する家庭が多くあります。

でも、以下の3つのタイプの子どもの場合はぜひ受けておいて欲しいと思います。

■1月入試を受けてほしい子

[1]週例テストでは点がとれるのに、模試のようなテストになると点がとれない子

[2]全部落ちたらどうしよう……、と心配ばかりしている自信がない子

[3]まだ本気になっていない子

詳しく説明をしましょう。

週例テストでは点がとれるのに、模試のようなテストになると点がとれない子

知識はあるのに、本番でその力を発揮しにくいタイプの子です。塾の教室で行うテストなら落ち着いてできるのに、模試のように大きな会場で実施されるテストになると、周りの人の多さに圧倒されたり、緊張が高まってしまったりして、いつものようにじっくり取り組むことができません。

そういった子は、とにかく場に慣れることが大事です。いきなり、本番を迎えるよりも、「肩慣らし受験」をして、入試会場の雰囲気に慣れておくことをおすすめします。

全部落ちたらどうしよう……、と心配ばかりしている自信がない子

直前期になると、不安から最悪な状態を考えてしまう子がいます。そういう子には、自信を持たせてあげることが大事です。「肩慣らし受験」で、確実に合格がとれる学校を受験し、「もう一つ合格をもらっているのだから、本番は思いっきりやっておいで」と送り出してあげるといいでしょう。

まだ本気になっていない子

男の子によくいるのが、年が明けた1月になってもまだ受験のスイッチが入らないというケース。1月の「肩慣らし受験」で不合格になって初めて、「このままではまずいぞ」ということに気がつき、やっとスイッチが入り、最後10日間の集中学習の勢いで合格した子を何人も見てきました。

「肩慣らし受験」の理想は1勝1敗。2勝は油断禁物

近年、「肩慣らし受験」は、2校以上受けるのが主流になっています。男女御三家をはじめとする難関中学を第一志望とする子の受験校として、渋谷幕張、市川、東邦大東邦、浦和明の星、栄東などが挙がります。ただし、渋谷幕張は“お試し”として受けるには難易度が高く、油断は禁物です。

「肩慣らし受験」の目的は、これから始まる入試に勢いをつけるためのもの。強気の受験はおすすめしません。勢いをつけるはずの「肩慣らし受験」で、まさかの不合格というケースも、実は少なくないからです。

理想は2校受けて1勝1敗。ここで2校とも合格してしまうと、「なーんだ、受験なんてこんなものか」とヘンに余裕の心が生まれ、本番で気を抜いてしまうことがあるからです。

でも、1勝1敗なら「合格」という安心を手にいれながらも、「不合格」という現実も知ることになるので、「このままでは本命が合格できないぞ。ラストスパートを頑張ろう!」という気持ちになります。

2敗でも必要以上に落ち込まない。そこから2週間の立て直しに集中して

では、もし2校とも不合格だったら……?

おそらく親子で不安な気持ちになるでしょう。でも、ここで落ち込んでいてはいけません。

もし、そうなったとしても、本番まであと2週間あります。ここで気持ちを引き締め、改善すべきところを補強していけばいいのです。

本来なら学力で受かるはずの学校なのに、不合格になってしまった場合は、その原因を探ってみましょう。

肩慣らしの学校の入試を受けたら、その後すぐに「今日はどんな問題が出たの?」と聞いてみます。その時にすぐに思い出せなかったら、もしかすると極度に緊張していたことが考えられます。また、テストに集中していなかったのかもしれません。

「このテストで緊張感を味わったから、2月1日の本番では緊張しないで受けられるわよ」と励ますことがポイントです。

「こんな問題が出たよ」ときちんと思い出せれば、落ち着いて試験に臨めていた証拠。心配は要りません。でも、どんなミスをしたのかを振り返ることが必要です。

多くの塾では「1月入試は終わったら解かなくていい」と言っています。実際、塾では1月の「肩慣らし受験」に関して振り返りはしませんし、よほど強い要望がない限り見てあげることもしてくれません。

でも、もし塾以外に力量のある家庭教師や個別指導を付けているのなら、なぜ不合格になってしまったのか、間違いの原因を探り、やり直しをさせた方がいいでしょう。そうすれば「ここは問題を読み間違えてしまったのだね。本番では気をつけようね」と改善することができます。

でも、そういう第三者の立場の人がいなければ、やらなくていいと思います。なぜなら、親がやると感情が入ってしまい、直前期に親子関係がギクシャクしてしまう危険性があるからです。

「肩慣らし受験」後から本番までの2週間は、本命の過去問を解きましょう。一度やった過去問ももう一度解いてみます。2回解けば、おのずと点数が上がり、それが自信につながるからです。

過去問は模試よりも本番のテストに近いイメージがあるから、過去問の結果が悪いと必要以上に焦ったり、お子さんを叱ったりする親御さんがいます。でも、それは逆効果です。ここでジタバタしたり、ガミガミ言ったりすると、子どもは自信をなくし、「今さらやっても……」という気持ちになってしまいます。

直前期なら「この部分ができたらあと10点はとれたね」「あと5点とれたら合格ラインだよ」と前向きな言葉で励ましてあげましょう。中学受験で最後の最後に必要なのは、お子さんに自信を与えてあげることです。


これまでの記事はこちら『中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩

※記事の内容は執筆時点のものです

西村則康
西村則康 専門家・プロ

プロ家庭教師集団「名門指導会」代表
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員

にしむら のりやす日本初の「塾ソムリエ」としても活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導が評判。暗記や作業だけの無味乾燥な受験学習では効果が上がらないという信念から「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。また、学習指導だけでなく、受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーション術もアドバイスする。「中学受験は日常生活を犠牲にしてまで行うものではない」「主役は塾の先生や家庭教師ではなく、お子さんとご家庭だ」という「生活の延長線上の受験」を理想に掲げている。著書に『中学受験は親が9割』(青春出版社)、『中学受験基本のキ! (日経DUALの本)』(日経BP社)など、20冊を超える。

西村則康公式サイト http://www.nishimuranoriyasu.com/
名門指導会 https://www.meimon.jp/
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」 https://www.e-juken.jp/

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。