中学受験ノウハウ 連載 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

子供に嫌われている親がよく言う12の言葉―― 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

専門家・プロ
2024年8月14日 菊池洋匡

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自ら伸びる力を育てる学習塾「伸学会」代表の菊池洋匡先生がおくる連載記事。「親子で楽しく試行錯誤することで、子供が伸びる」ということを、中学受験を目指す保護者さんにお伝えします。

こんにちは。中学受験専門塾 伸学会代表の菊池です

多くの親御さんたちのお悩みに、「子供が本音を話してくれない」というものがありますよね。

学校であったこと、塾であったことを話してくれない。

こちらから話しかけても「わかんない」とか「別に…」とか「普通」とか。

こうした答えの99%は、本当に「わかんない」のではなく、拒絶のサインです。

例えば私は生徒に対して効率の良い学習のコツとして、「授業で習ったことを家でお母さんやお父さんに話すととても良い復習になるよ」と教えているのですが、あるときある子がこんなことを言いました。

「でも先生、うちの親は私が習ったことを話すといつも『こういうことも習ったはずじゃないの?もっとちゃんと覚えなさい』とか言うんですよ。話すと嫌な気持ちになるから話したくないです」

このご家庭では、効率良く学び成長するチャンスを手放してしまったということです。

また、別のある子は、親と話をしたくない理由についてこう言いました。

「テストができなかったときに、できなかったって言ったら、どうしてできなかったのって怒るんです。だから、嘘を言うのは好きじゃないけど、本当のことを言わないようになりました」

このご家庭では、子供が困難な状況にあるときに、良い方向に変わっていくサポートをするチャンスを失ったわけです。

親を拒絶する子供は、親に何かを話しても助けてはもらえないし、かえって嫌な目にあうことを経験から学習しています。

先ほど挙げた「追及する」「怒る」はわかりやすい例ですね。

他にも親がそれと知らずに使ってしまっている、親子関係を壊し、子供から拒絶されるようになる言葉があります。

トマス・ゴードン博士の『親業―子どもの考える力をのばす親子関係のつくり方』という書籍の中で、それらの言葉は12種類に分類されて説明されていました。(名著だと思うので興味があれば購入して読んでみてください!)

今回の記事では、子供に嫌われている親がよく言う言葉の12種類の類型と、博士がおすすめする親子関係を強固にして子供の成長を後押しする声かけについてご紹介しようと思います。

もしあなたがお子さんの成長をサポートしたい、サポートしようと思ったときに拒絶されないように良好な関係を維持したい、と思っているのであれば、これらの12種類の声かけをしていないか、ぜひチェックしてみてください。

そして、博士のおすすめする声かけに切り替えていくようにしてくださいね。

子供に言われたらどう返す? 2つのシチュエーション

それではまず、12種類の類型についてお話をする前に、これからお話しする2つのシチュエーションで、あなただったら子供にどんな返事をするかをちょっと考えてみてください。

その上で、それが12種類のどれかに当てはまらないか考えていただくと、より一層具体的にイメージできて良いと思います。

①勉強なんて役に立たない!

子供があなたにこう言いました。

「勉強なんかしたって何の役にも立たないよ。もう中学受験なんかするのはやめた。えらくなるのに中学受験が必要なわけでもないし、社会で成功するにはほかにいくらでも方法があるさ」

こういうメッセージに対して、あなたならどんな言葉を返すでしょうか?

我が子に対してあなたが言うことを考えてみてください。

②なんでお手伝いなんてしなきゃいけないの?

家でのお手伝いについて、子供がこう言いました。

「どうして僕がお風呂掃除とゴミ捨ての仕事をしなきゃいけないの?友達はみんなそんな家事の手伝いなんかさせられてないのに、僕だけやらされるなんて不公平だ!」

子供から拒絶される親の12の型

こうした子供のメッセージに対する反応は人それぞれですが、ゴードン博士によれば、子供から拒絶される親の反応は、だいたいこれからお話しする12の型のどれかにあてはまるものだそうです。

あなたの反応は拒絶される反応ではなかったかチェックしてみてください。

【1.命令・指示】

「いいから宿題を早くやりなさい!」

「他の家がどうかなんて関係ない、お風呂掃除はあなたがやりなさい」

【2.注意・脅迫】

「受験勉強をしなかったらあとで困るのはあなたよ!」

「あなたが家事をしないなら私もしません。そうなったらあなたはご飯を食べられないわよ」

【3.説教】

「やりたくなくても勉強はやるべきものだ」

「家族の中で自分の役割を果たしていくべきだ」

【4.解決策の提案】

「勉強がわからなくてつらいなら先生に相談してみたら?」

「どんなお手伝いだったらやれるか考えてみよう」

【5.講義】

「中学受験をすることがあなたにとって結局一番素晴らしい経験になると私は思う」

「子供のとき、家庭で責任をもって何かをやっていれば、大人になってからも責任を果たせる人になるんだよ」

【6.批判・非難】

「勉強をしたくないなんて未熟な考え方だ」

「不公平だなんて考えにはまったく賛成できないね」

【7.称賛・同意】

「お前はやればできる子だ」

「私もそう思う」

【8.ばかにする、辱める】

「お前は根性無しだ」

「お手伝いをしたくないなんて怠け者め」

【9.分析・診断】

「悪い成績を取っているからそんな風に考えるんじゃないの?」

「もっと遊びたくてそんなことを言ってるんでしょ」

【10.激励、同情】

「明日になれば、きっと気持ちが切り替えられるさ」

「私も昔そんな風に考えていたことがあったよ」

【11.尋問】

「いつから受験をしたくないって感じ始めたの?」

「誰があなたを遊びに誘ったりしたの?」

「家でのお手伝いについて何人の友達話したの?お手伝いをしていないみんなって誰の事?」

【12.話の腰を折ったり話を変えたりしようとする】

「塾に火でもつけて燃やしちゃったらどうだい?」

「まぁいいじゃないか。もっと楽しいことを話そうよ」

「同じこと前にも話したじゃない」

12の型が親子関係を壊す理由

いかがでしょうか。

どれかに当てはまっていませんでしたか?

もし、あなたにお子さんがいるのであれば、1つも言ったことがない…なんてことはないと思います。

ゴードン博士も、これらのどれかにあてはまるのが普通の親だとおっしゃっています。

ではなぜ、これらのメッセージが親子関係を壊すのでしょうか?

例えば「お前はやればできる」の、あるいは「先生に相談してみたら?」の、なにがいけないのでしょう?

ゴードン博士によれば、これらの言葉を聞いたときに、子供はその裏に隠された別のメッセージを読み取ることがあるからです。

そして子供は次のように感じることがあります。

「やればできるということは、できないのは僕の頑張りが足りないと思ってるんだ」

「先生に相談しろってことは、僕には自分で解決する力が無いって思ってるんだ」

「僕の言うことを真剣に聞いてくれないんだ」

「僕がどんな気持ちでいるか、気にしてないみたいだ」

と。

じゃあ、親はどうしたらいいの?

酷い言いがかりだ! いったいどうしろっていうんだ!?

そんな風に思う親御さんも多いんじゃないでしょうか。

何も言えないじゃないか!

と思いますよね。

そう、それが正解です。

①しゃべらない、はっきり言わない

「しゃべらないこと」は子供からの感情・問題のメッセージに応じるのに、適切で建設的な方法の1つ目です。

親が自分の考え・判断をしゃべるのではなく、子供自らが考え、判断・感情を表現するように促すのです。

どんな言葉をかければいいか?

たとえば、

「そうだったのか」

「本当かい!?」

「なるほど!」

「面白いね」

というように、【はっきりとは何も言わない反応】の方が良いのだそうです。

そうすれば、子供がもっと話すように、子供に会話のボールを持たせてあげることになります。

忠告・教訓などを口にして自分のメッセージを送り、子供から話のボールを奪わないようにすることが大切です。

②子供自身の考えを促すように問いかける

そして、もっと話すようにさらに後押しするためには、

「それについてもっと知りたいんだけど」

「例えばそれってどういうこと?」

「つまり、まとめるとどういうこと?」

「なぜそうなったんだろう?君の意見は?」

といった問いかけをするのも効果的だそうです。

これらは、子供自身の考えを促すための手段となります。

それは同時に、意見や感情を持った1人の人間として君を尊重しているよ、私は君に関心があるんだよ、ということを伝える合図にもなります。

大人同士の関係でも、相手をリスペクトすることなく、相手の悩みや問題を聴くこともなく、自分の考え・主張ばかりを話す人は信頼されません。

これは子供が相手の場合だって同じです。

忘れがちなことですが、子供も1人の個人として、人格があるのです。

私たちが自分の言いたいことをいうのではなく、まずは子供の話を傾聴して信頼関係を築くこと

このことを忘れずにいたいものですね。

毎回できなくて当たり前

とはいえ、①②の方法を実際にうまくやるのは、私たち大人の側にも技術が必要で、難しいものです。

私も知ってはいても、ついつい余計なアドバイスをしてしまい、後で反省することが多いです。

子供の指導歴20年でも失敗ばかりです。

ちゃんと聞くことが「ときどきできる」でも十分すごい親ですから安心してください。

「毎回できる」だったら神様です(笑)

それくらいの気楽な気持ちで、聞くことに徹しようとこころがけてみてください。

以上、「子供から拒絶される親が言いがちな言葉12選 」を言わない方法ですが、結論としては「しゃべるな」「聞け」でした。

わかっていてもなかなかその通りにはできないものですが、何度もやりながら、少しずつコツをつかんでいきましょうね。

親子関係に傷が入っていると思ったら

なお、これまで子供にこうした声かけをし続けてしまった親御さんは、今から「子供の話を聞こう」としても、子供が話してくれないことも多いです。

子供からすると「どうせ聞いてくれないんでしょ」とか、「聞いてもどうせ私の言うことを否定するんでしょ」と思うわけです。

友人間や夫婦間でも、こっちが話をしても相手はスマホをいじりながら空返事とか、何を言っても「いやそれは」みたいな否定から入られるから、もう話す気無くしたって経験をしたことがある方は多いのではないでしょうか。

そして、自分はそうした態度を取るパートナーに対して怒っているのに、自分も子供に同じことをしてしまっていたって気づいて愕然とした、とおっしゃる親御さん、けっこういます。

あなたももし親子関係に傷が入っているなと思ったら、まずはこれまでの態度を謝罪することから始めると良いですよ。

失敗したときに謝る姿を子供に見せることは、子育てにおいてとても大事なことです。

子供に「失敗をしたら、それを取り戻すための行動をすることが大事だ」「失敗をしても取り戻すことができる」という学びを子供に与えることにも繋がります。

傷ついてしまった関係性を修復するのには時間がかかるかもしれませんが、あきらめずに頑張っていきましょう。

そして、ゴードン博士はただ話を聞くのの何倍も効果があるもう1つの方法があると言っています。

先ほどお話しした黙って話しを聴くだけの「受動的な聞き方」に対して、その効果的な方法は「能動的な聞き方」と呼ばれています。

こちらもいずれ記事にしますね。

それでは。

※記事の内容は執筆時点のものです

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