連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

塾に通っているのに成績が上がらない原因|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2019年2月07日 石渡真由美

塾に通っているのに、成績が一向に上がらない。もしかすると、その原因は授業の聞き方にあるかもしれません。

大手進学塾では生徒一人ひとりを見てはくれない

中学受験をするなら、必要な学習カリキュラムが整っている大手進学塾に通うのが一般的です。しかし、大手進学塾の学習カリキュラムは、年間で固定されていて、その日の授業で扱う単元は、その日のうちに終わらせなければいけません。したがって、授業はかなりスピーディーです。

私もかつて大手進学塾で塾講師をしていたときに感じていましたが、塾の1回の授業は教えることが膨大で、教えるほうも必死です。

大手進学塾には1クラス15人〜20人の生徒がいます。生徒はわずか10歳〜12歳の子どもです。クラスのレベルで子どもが授業に取り組む姿勢は異なりますが、授業に集中できない子も一定数存在します。塾講師のほうも、授業に集中できない子の存在に気づいてはいますが、一人ひとり注意を払っていると授業が中断してしまいます。そうなると、その日に教えなければいけないことが、教えきれずに終わってしまう……。

ですから、よほどのことがない限り、そういう生徒は放っておいて先へ進みます。つまり、大手進学塾では、カリキュラムを進めることが優先で、生徒一人ひとりを見る余裕がないのです。

「お母さんに教えないと!」で授業中の集中力を上げる

そうなると、集中力に欠けている子は、授業にどんどんおいていかれます。授業の内容が理解できないと、家に帰って宿題をやるにも、やり進めることができません。

ではどうすればよいのでしょう。対策としては、とにかく「授業をしっかり聞くこと」に限ります。でも、子供に「ちゃんと授業を聞いてきなさいよ!!」と言ったところで、なかなかうまくいきません。

そこでおすすめしたいのが、授業が終わった後、お母さんにその日に勉強したことを教える、という親子の決まりをつくることです。

たとえば、家にホワイトボードを用意しておき、塾から帰ってきたら、子どもに先生になってもらい、「ミニ授業」をしてもらいます。人に説明をするには、授業の内容をきちんと理解していなければできません。そうすると、「お母さんに後で説明をしないといけないから、ちゃんと聞いておかなきゃ!」と、授業に集中するようになります。

「本当にそんなことで変わるの?」と思うかもしれませんが、小学生の子どもは、お母さんのためなら頑張れるものです。ですから、お母さんも適当に聞いたり、わかったふりをしたりせず、子どもの説明をきちんと聞いてあげることが大切です。

子どものミニ授業でわかりにくい点があったら、「今の説明ちょっとわかりにくかったなぁ〜。お母さんにもわかるように教えてくれる?」といった声かけができるとよいですね。

このミニ授業は、授業中に集中して聞くためだけでなく、人に説明をすることで理解の定着を図るという目的もあります。集中力だけでなく、子ども自身の理解度も上がるわけですから、一石二鳥です。

授業に集中できているか? 子どものノートを確認する

私の塾では、板書の時間は板書の時間としてしっかり設けています。そして生徒みんながノートに書き終わってから説明に入ります。そうできるのは、1クラス10人以下の小規模塾だからでしょう。

しかし、大手進学塾の授業は、前述のようにスピード重視。一斉授業で板書と並行した説明が中心です。ですから、塾講師のなかには、この板書の時間を充分にとらずに、先へ進んでしまう人もいます。そうすると、子ども達は書き写すことに必死になり、講師が話す大事なポイントを聞き逃してしまうのです。

お子さんのノートを見て、もし書き途中の箇所が多かったら、親御さんから塾に、板書の時間をきちんととっているかを確認してみてください。

もし、お子さんがどうしても板書についていけないようでしたら、携帯電話で写真を撮っていいか、塾に相談してみるのも一手だと思います。

塾はいまだに感覚が古く、黒板の写真撮影を禁止しているところもあるかもしれません。しかし、大切なのは授業に集中して学力を上げることであって、板書に集中することが目的ではないと思うのです。

授業中の集中力を高めるために、「軽い予習」をする

授業中の集中力を高めるには、各家庭でも対策を考える必要があります。

私のおすすめは予習です。

「塾でたくさんの宿題が出されるし、予習の時間を確保するのは難しい……」

こう感じる親御さんが多いかもしれませんが、少しの時間でよいのです。次の授業で習う単元のテキストに目を通しておく程度の「軽い予習」でよいと思います。

特に理科と社会はこの「軽い予習」をしておいてほしいです。テキストの太字で書かれているところを中心に、ざっと目を通しておきましょう。

そうすれば、「明日の授業はここがポイントだろう」と予測できます。授業でその部分の説明になったときに、「今日の授業のポイントだ。しっかり聞いておこう」と意識して聞くようになります。

苦手なことはあえて本人に意識させる

集中力の持続は人によって違います。苦手な子は本当に苦手です。だからといって、授業中にぼーっとしていてもいいことはありません。

集中力がない子には、集中力がないことを自覚させることが大事です。「あなたは集中力がないから、ちゃんと聞いておくのよ」と親が何度も言ってあげていいと思います。子どもの弱点を言うと、その子に劣等感を与えると言う人がいますが、それは言い方の問題だと思います。

実は、私は子どもの頃、よく忘れ物をする子でした。母親はそんな私に何度もくり返し「あなたは忘れ物をしやすいから、気をつけるのよ」と言っていました。

すると、次第に自分の感覚が鍛えられ、たとえ何か忘れ物をしていたとしても家を出て3歩くらい歩くと、「あれ? 何か忘れていないかな?」と気にかけるようになりました。

今でも忘れ物をしそうになることがあるのですが、そうやって子どもの頃に母親が何度も言ってくれたおかげで、すぐに気づけるようになり、大人になってから大きな失敗をしたことはありません。

ですから、子ども本人に自らの特徴を意識させるために、言ってあげることは大事だと思います。ただ、その言い方が嫌味っぽかったり、怒っていたりしたら、子どもは「自分ができない子」と思ってしまい、自己肯定感を下げてしまいます。伝える時は、“笑顔で優しく”を忘れずに。

また、集中力が続かない子は、座席が自由なら前の方に座るようにするといいですね。塾には休まず行っているのに、成績が伸びないという子は、まずは授業の聞き方を変えてみましょう。


これまでの記事はこちら『今一度立ち止まって中学受験を考える

※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。