連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

全教科に効果的。読解力を鍛える「音読」のススメ|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2019年2月21日 石渡真由美

中学受験ではよく「算数が得意な子が有利」といわれます。入試で得点差が開きやすい教科だからです。しかし、私は国語力が最も大事だと感じています。なぜかというと、すべての教科の問題は日本語で書かれていて、それを読み解くには読解力が不可欠だからです。読解力がなければ、答えを導き出すことはおろか、問題の意味を理解することすらできません。

実際の中学入試問題を見るとわかりますが、国語に限らず、算数の文章題や、理科・社会の問題もリード文が異常に長くなっています。文章を正しく読み切る力がなければ、もはや入試に太刀打ちできなくなっているのです。

「音読」で文章を正しく読む力を鍛える

文章を正しく読む力を鍛えるのに、効果的な学習法といえば、「音読」です。小学校の国語の宿題にも音読がありますよね。

人は自分がしゃべっている言葉を自分で聞くことによって初めて、文字情報を理解できるといわれています。声に出して読むことで、文字情報を脳へ送っているのです。

また、音読の効果的なところは、文章の切り方を意識して読めることです。“文章には適切に切る場所がある”ということがわかると「読むときにどこで切ればいいんだろう?」と考えながら読むようになります。つまり、単語一つひとつを意識するようになるのです。この意識が、文章を正しく読む力を鍛えます。

音読は続けていくと、単語を意識しながら、黙読できるようになります。黙読は文を読むスピードを上げてくれますし、文章の「読み飛ばし」も防いでくれます。中学受験では大きな武器になります。

音読が苦手な子は読みやすい本で練習をする

音読には文章を正しく読む力を鍛える効果があるのですが、世の中には「音読が嫌い」という子が少なくありません。

音読が嫌いになる主な要因は、文章がスラスラ読めず苦痛に感じることです。そういう子は、絵本を読ませたり、一学年くらい読む本のレベルを下げて、子どもが読みやすい本を音読させてみたりするとよいでしょう。あるいは、鉄道や野球など、子どもが好きなジャンルの本を読ませると、スラスラ読めるようになります。スラスラ読めるようになると、苦痛が減り、音読を続けることができます。

親は正しく読めているかのチェックを

音読はただ早く、たくさん読めばよいというわけではありません。文章の切り方など、子どもが正しく読めているかを親が確かめてあげる必要があります。

たとえば、子どもが音読している本の中に「それぞれより上等」という文章が出てきたとします。この「より」はどこで切るのがいいのか、前後の文章で考えなければいけません。

でも、子どもは言葉を知らないので、どこで切っていいのかわかりません。きちんと読めているかを確認できる相手が必要です。その役をぜひお母さんにやって欲しいと思います。

共働きのお母さんは「忙しくてそれどころではない」と感じるかもしれませんが、子どもが音読している隣でじっと聞いてチェックする必要はありません。家事や仕事をしながら聞いてあげるだけで十分です。

もし、子どもがおかしな読み方をしていたら、「あれー? 今なんて読んだ?」といった具合に、正してあげます。また、難しい言葉が出てきたら、「さっき、『おぼろげ』って言葉が出てきたけれど、どういう意味だかわかる?」と聞いてみて、わからなかったら意味を教えてあげましょう。親子一緒に言葉の意味を調べてみるのも効果的です。親子で学習すると子どもも「やらされ感」が減って学習意欲が湧いてきます。

子どもの国語力につまずきを感じたら、家庭を振り返る

よく「国語はセンス」と思い込んでいる親御さんがいます。しかし、私はセンスではなく、「国語力は家庭で育まれていくもの」と思っています。

親が本を読まないのに、子どもが本を読むはずがありませんし、親が正しい日本語を使うことができていないのに、一方的に子どもに「国語でよい成績をとれ」というのは、おかしな話です。子どもの国語力を伸ばしたければ、まずは親御さん自身が正しい日本語を意識することが大切です。

たとえば、私達の日常では、主語と述語が抜けていても会話が成り立つことが多々あります。家族が揃った夕食の場で、誰かが「お茶」といえば、「お茶が飲みたいんだな」とその言葉の意図が通じるでしょう。

しかし、家族以外の人にその意図を伝える場合はどうでしょうか。「○○さん、お茶をいれてもらえますか?」といったように、きちんとした言葉で相手に伝えなければ、通じないことも多いはずです。

LINEやツイッターといったツールも短文や、紋切り型の文章が中心の世界ですから、長い文章を読んだり、書いたりする力は、親世代も子世代も、徐々に衰えてきているのだと感じます。

しかし、中学入試では、難しい言葉や表現がたくさん使われた長文を読み、設問の意図を捉え、条件を整理したり、自分の言葉で表現したりすることが求められています。こうした入試の国語に立ち向かうためにも、国語力や読解力を鍛えていくことは必要不可欠です。

ですから、もし子どもの国語力につまずきを感じたら、まずは家庭のコミュニケーションのしかたを疑ってみましょう。日常生活のなかで修正をしていけば、子どもの国語力は伸び、ほかの教科の成績もよい方向へと向かうはずです。

国語力は、学力向上や中学受験といった目先のことだけでなく、将来社会に出たときのコミュニケーション能力にも関わる、生きていくうえで非常に大切な力なのです。


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※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。