連載 中学受験は親と子の協同作業

中学受験合格後 春休みの学習と、初年度の成績が重要なワケ|中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩 Vol.27

専門家・プロ
2019年2月14日 石渡真由美

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中学受験を終えたばかりの受験生のみなさん、そのサポートを長期に渡ってしてきた親御さん、お疲れさまでした! 第一志望校に合格した子、悔し涙を流した子、それぞれの進路が決まったことと思います。

中学受験の目標は志望校に合格すること、そして合格を目指す過程で、今後の学習のやり方を学ぶことでした。この合格や不合格が人生のゴールではありません。むしろ、この先をどのように学び、成長していくかが大事なのです。

中学で好スタートを切るには、春休みの先取り学習が大事

長かった受験勉強が終わり、春からの進路が決まった今、6年生は解放感に浸っていることでしょう。これまでやりたくてもやれなかった遊びや体験を、ぜひ思う存分楽しんでください。

でも、中学受験でせっかく身についた学習習慣をゼロにしないでください。

進学先の学校から、春休み中に宿題が出ている子もいると思います。入学前に学校から出される宿題というのは、これまでの復習が中心なので、すぐに終わってしまうでしょう。

子どもからすると、「宿題も終わった! あとは遊び放題!」と喜びたいところです。しかし、入学まで遊び呆けてしまうと、その後苦労することになりかねません。

ですから、春休みの間にほんの少し先取り学習をしておきましょう。先取り学習は英語と数学の2教科だけで十分です。具体的にどんなことをしたらいいのかお伝えしましょう。

英語

英語は中学から始まる教科です。入学前にアルファベットは書けるようにしておきましょう。その際、きちんと丁寧に書くことを意識してください。

入学後、最初の中間テストでは、必ずアルファベットを書くという問題が出題されます。このテストでは、文字の正確性を厳しくチェックしますので、いい加減に覚えないようにすることが大事です。

また、Apple、Noteなど簡単な名詞を50個くらい覚えておくといいですね。少しでも単語を知っていると、アドバンテージになります。

耳を慣らすには、NHKの『基礎英語』がおすすめです。4月から新しいテキストで始める前に、CD付のバックナンバー(4月・5月号)を購入し、まずは聞き流しておきましょう。ここでは英語に触れることを目的とします。毎日少しずつがポイントです。

数学

入学までの間に、学校準拠の数学問題集を使って中学1年生範囲の半分くらいまでやっておくとよいでしょう。この時に意識して欲しいのが、きっちり丁寧に解くことです。

中学受験の勉強は合格点に到達すればOKで、7割とれればいいという世界でした。でも、中学の数学は100点をとることを目標にしてください。

中学受験の学習はスピードを重視していましたが、これからは読みやすい数字をノートに丁寧に書き、論理的に考えることを意識しましょう。

中学生になったら勉強のやり方と考え方を変える

ここまでは、入学までの過ごし方でした。では、入学後はどのように勉強を進めていけばいいのでしょう? ここでは前述した英語と数学を例にお伝えします。

英語

英語は「読む」「書く」「聞く」「話す」の4技能をバランスよく伸ばすことが大事です。

まず授業で習ったところを音読する習慣をつけましょう。英単語や英文を音読することで、「読む」「聞く」「話す」の3つができることになります。

また、ノートを1冊用意し、左側に英文を、右側に和訳を書くというのも、毎回やっておくといいですね。このノートはテスト対策用に使うといいでしょう。

このように学習の仕方を決めておくと、授業内容の定着だけでなく、定期テスト対策の準備も同時に行えます。

数学

教科書にある例題や練習問題はすべて解くようにしましょう。授業で習った範囲は、その日のうちに解くと定着します。

「そんなにたくさんできないよ」と思うかもしれませんが、時間にしてせいぜい20分くらい。中学受験の勉強と比べたら、たいしたことはありません。

ただし、ひとつ気をつけて欲しいことがあります。それは、中学生になったら、算数のテクニックを早く忘れて、数学の手法に切り換えるということ。

中学受験経験者は、中1くらいまでの内容なら算数でもなまじ解けてしまうので、数学の手法を無視して答えを出そうとする子がいます。

算数と数学の手法は大きく異なります。算数は具体的な事柄を多く扱い、数学は抽象的な事柄を中心に扱います。数学の最初にならう「文字を使った式」は、その抽象的な事柄を扱う最初の練習です。

算数と数学では頭の使い方もまったく違います。中1の1学期はその考え方に移行する時期であることをしっかり意識して取り組むようにしましょう。

最初の中間テストで上位3分の1を目標にする

さて、ここまで6年生の春休みから先取り学習をしていくようにとお伝えしてきました。「せっかく受験から解放されたのに、春休みも勉強しなくてはいけないなんて……」と思う子もいると思いますが、6月初旬には入学後最初の中間テストが控えています。

各学校では、成績を順位で表したり、成績分布図を発表したりします。そのときに自分がどの位置にいるかで、今後の勉強に対するモチベーションも変わってきます。ですから、1学期の中間テストは上位3分の1を目標に頑張ってみましょう。

初めにいい成績をとっておくと、「よし、僕はこの学校でこのくらいの成績なのだな。ならば、あとちょっと頑張れば上位20番に入れるかもしれないぞ」とやる気がアップしたり、「入試では合格最低点ギリギリだったけど、私は案外できるかもしれない!」と自信を持てるようになったりします。

不思議なことに、中1の1学期の成績順位と、高3卒業時の成績順位は強く関わっています。逆に、入学試験の順位は卒業時の順位にはあまり関わっていません。入学試験で補欠合格の子が主席で卒業したという話も多く聞きます。

中学生になったからといって、親はすぐに目を離さない

最後に中学入学後の親の関わり方についてお伝えしたいことがあります。

中学受験は子どもがまだ幼いため、大なり小なりどうしても親のサポートが必要でした。ところが、合格から進学を境に「今後は親が手をかけず、自分で勉強をすべき」といった考えのもとで、突然子どもの学習から遠ざかってしまう親御さんが少なくありません。

もちろん、できるだけ早く子ども自身で自立した学習ができるようになるのが理想的です。しかし、子どもは急に変われるものではありません。

いきなり手を放して、子どもが何をどうしていいのかわからず、勉強についていけなくなってしまうということにならないよう、しばらくは親が目をかけるようにしてあげてください。

中学受験期に親が手厚くサポートしていた子は、2年くらいかけて徐々に手を離していったほうがうまくいきますし、そこまでべったりと子どものサポートしていなかったという親御さんでも、中1の1学期はしっかりと子どもを見てあげるようにしてほしいのです。

また、中学入学と同時に、次は大学進学のための予備校に通わせるご家庭もあります。しかし、あまりに先を急ぐと、学校で習う基礎がおろそかになる危険性があります。中学はまずは学校内の成績を上げることに重点を置くようにしましょう。

親が手をかける時間をなかなか取れない、という場合は、中1から英語や数学といった新しい教科を学ぶにあたり、学習のやり方を学ぶ目的で、はじめだけ家庭教師をつけるというのも有効だと思います。また、中3から高校の学習内容に移行していく際に、急に勉強が難しくなるので、そのタイミングで家庭教師をつけるものよいでしょう。

いずれにしろ、大事なのはこれからの学習であるということを、中学入学前に知っておいて欲しいと思います。


これまでの記事はこちら『中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩

※記事の内容は執筆時点のものです

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