連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

「脱筆算」で計算ミスをなくす!|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2019年5月23日 石渡真由美

計算ミスが多くて得点につながらない子は多くいます。原因はいくつかありますが、なかでも多いのが筆算による計算ミスです。

「筆算神話」にとらわれてはいけない

「計算ミスを減らすために、丁寧に筆算をさせてください」

塾や学校の先生のなかにはそういう方が多くいます。親世代もそのように教わった人が多いかもしれません。だから、わが子の計算ミスが目立つと、「ちゃんと筆算しなさい!」と必死になります。しかし、私はこの方針に反対です。筆算することで、かえって計算ミスをする子がとても多いからです。

筆算には、「九九の書き間違えのミス」「位取りのミス」「小数点のつけ間違いのミス」「自分の字が汚くて読めないために起こる読み取りミス」「答えの書き間違えミス」など、実にさまざまなミスの危険性が存在します。それなのに、なぜわざわざミスを招きやすい方法を取り入れる必要があるのでしょうか? 私は無条件に筆算を推奨する「筆算神話」に疑問を感じずにはいられません。

よく出る2桁の計算などの基礎は身体で覚える

たとえば、25×4や125×8といった計算は、筆算をしなくても暗算で答えを出すことができますよね?

では、48×25はどうでしょうか? 一見、難しそうに見えます。でも、こんなふうにやってみたらどうでしょう?

48×25

48は4×12

4×25は100だから、12×100=1200

どうでしょう? 筆算をしなくても答えが出せませんか? このような方法なら、九九の範囲内で計算できて、しかも筆算によるケアレスミスを防ぐことができるのです。一方47×39などのように、暗算では難しい場合のみ、筆算をするとよいのではないでしょうか。

私は計算ミスを防ぐには、テストでよく出る「2桁×2桁」のかけ算や「平方数の計算」「3.14の計算」などは、九九を覚えるように暗記をしてしまうことをおすすめします。一度頭にたたき込んでおくと忘れませんし、計算の時間も省けます。

また、受験算数では1/8、3/8、5/8などの分数を小数に直すことがよくあります。このようによく出る分数も、その場で計算をするのではなく、頭にたたき込んでおくことがおすすめです。

スポーツでも音楽でもそうですが、基礎は何度も練習をして、身体で覚えることが大切です。ここがしっかりしていないのに、難しいこと(算数でいえば応用問題)をやらせようと思ってもうまくはいきません。

先に挙げた計算は、受験算数でいえば基礎にあたるものです。ここはしっかり身体で覚えるようにしましょう。次の一覧は、私の塾で生徒たちに暗記させている計算の一部です。ぜひ、参考にしてみてください。

試行錯誤することで算数の力が伸びる

ところで、私の塾では、ときどき「筆算禁止」を命じることがあります。筆算をしないことで、計算ミスを減らすという目的がありますが、ほかにも狙いがあります。

たとえば、「47×39を筆算しないで答えを出してみよう!」というと、子ども達は「えーっ!? それはムズイよぉ~」と、はじめは難色を示します。

でも、筆算を禁止にすることで、しばらくするとああでもない、こうでもないと考えるようになります。そして、子ども達なりに工夫をします。

ちなみに、47×39は、子ども達からこんな解答が出ました。

47×39を頭のなかで
考えるのは大変だから……、
47×40を出してみる。
47×40なら、暗算でもできそう。
47×40の答えは1880。
ここから47を引けばいい……、
答えは1833!

こうやってときどき、「筆算禁止令」を出すと、子ども達は夢中になって考えます。

今、中学受験の算数では思考力を問う問題が増えています。そのなかには、小学生の子どもにはお手上げというような難問を出す学校もあります。難問を否定するつもりはありませんが、難問を解くことが、算数の力を養うとは限りません。

計算ひとつするにせよ、力を伸ばすやり方はあるのです。前述した47×39のような計算はその例でしょう。思考をするには、土台となる基礎力と、試行錯誤する力が必要です。私はこのふたつの力を養うことが、算数の力を養うことにつながると強く感じています。

お子さんの計算ミスが多く筆算ばかりをさせている場合は、一度立ち止まってみてください。筆算を使わずに済みそうな問題については、筆算を使うのはやめ、基礎力と試行錯誤する力を鍛える学びにシフトしてみてほしいと思います。


これまでの記事はこちら『今一度立ち止まって中学受験を考える

※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。