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知っておきたい奨学金の現状 ―― FPに聞く中受と教育費のキホン

専門家・プロ
2019年6月12日 佐藤あみ

中学受験をして、私立の中学校・高校と通うと高額になる教育費。そのため、大学にかかる費用は奨学金に頼るというのも、選択肢のひとつになるかもしれません。今回はそんな奨学金現状について、教育資金設計等のコンサルティングを行うファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんに伺います。

返さなくてもいい大学独自の奨学金

近年、大学では国立・私立にかかわらず、返済不要の給付型奨学金制度の数を増やしています。活用できれば、かなりおトクな制度だといえるでしょう。都心の主要大学から、審査基準のハードルが比較的低く、給付額が高いものをピックアップしました。

大学独自の給付型奨学金制度例

国立大学

東京大学

名称

さつき会奨学基金参考Web
申請時期 入学前(予約型)
奨学金額 月額3万円
支給期間 4年間もしくは6年間
採用候補者数 約15名
<主な申請者資格> ●女子 ●自宅外通学 ●調査書の学習成績概評がA以上 ●家計基準は日本学生支援機構第1種に準ずる …など
一橋大学

名称

学業優秀学生奨学金参考Web
申請時期 大学が選抜
奨学金額 月額8万円
支給期間 12か月間
採用候補者数 12名
<主な申請者資格> ●学部2~4年次の前年度1年間の成績により候補者を決定 ●家計の経済状況は加味されない…など

私立大学

早稲田大学

名称

めざせ! 都の西北奨学金参考Web
申請時期 入学前(予約型)
奨学金額 半期(春学期)分授業料相当額
支給期間 4年間継続
採用候補者数 約1200名
<主な申請者資格> ●首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)以外に設置された通信制を除く国内高等学校、もしくは中等教育学校の出身者、または首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)以外に居住する者で通信制高等学校の出身者 ●父母の給与・年金収入金額(控除前)が800万円未満の者 …など
慶應義塾大学

名称

学問のすゝめ奨学金参考Web
申請時期 入学前(予約型)
奨学金額 年額60万円医学部は年額90万円、薬学部は年額80万円
支給期間 最長4年間医学部・薬学部薬学科は最長6年間
採用候補者数 550名以上
<主な申請者資格> ●首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)以外の高等学校等出身者 ●父母の収入・所得金額を合算した金額が給与・年金収入1000万円未満(税込)、事業所得金額514万円未満(税込)の者…など
東京理科大学

名称

新生のいぶき奨学金参考Web
申請時期 入学前(予約型)
奨学金額 年額40万円
支給期間 4年間薬学部薬学科は6年間
採用候補者数 年間100名
<主な申請者資格> ● 一般入学試験(B方式)を受験し、4月入学する者 ● 前年の世帯収入が、給与所得世帯においては700万円未満、給与所得世帯以外においては292万円未満の者 ●志望する学科が設置されたキャンパスへの自宅からの通学が困難な者
※理学部第二部の志願者は対象外 …など
東京理科大学

名称

乾坤の真理奨学金参考Web
申請時期 大学が選抜
奨学金額 年額40万円
支給期間 4年間薬学部薬学科は6年間
採用候補者数 若干名
<主な申請者資格> ●入学試験の成績が特に優秀だった者 …など
明治大学

名称

明治大学給費奨学金(未来サポーター給費奨学生)参考Web
申請時期 3月下旬から4月
奨学金額 ・文系学部:年額20万または30万円
・理系学部:年額30万または40万円
・未来サポーター給費奨学生:授業料1/2相当額
支給期間 1年間
採用候補者数 約1400名
<主な申請者資格> ●新学年で、定められた学業成績基準単位以上の単位(卒業要件内のものに限る)を修得していること ●2年生以上はGPA2.50以上かつ定められた単位数を習得している者 ●源泉徴収の支払金額が841万円の給与世帯、給与外世帯の場合『収入-必要経費』・確定申告の所得金額が355万円…など
明治大学

名称

明治大学特別給費奨学金参考Web
申請時期 大学が選抜
奨学金額 学費のうち授業料相当額
支給期間 4年間
採用候補者数 非公表
<主な申請者資格> ●「一般選抜入学試験」 、「全学部統一入学試験」および「大学入試センター試験利用入学試験」の合格者から採用 ●採用する学部は、法学部、文学部、理工学部、情報コミュニケーション学部…など
立教大学

名称

自由の学府奨学金参考Web
申請時期 入学前(予約型)
奨学金額 年額50万円理学部は70万円
支給期間 原則4年間毎年の申請・審査により2年目以降も継続受給が可能
採用候補者数 約500名
<主な申請者資格> ●首都圏以外(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県以外)の高等学校等出身者 ●ほか、入試種別、成績、家計基準などの条件あり…など
※2020年度入学者から制度変更を予定
中央大学

名称

中央大学予約奨学金参考Web
申請時期 入学前(予約型)
奨学金額 授業料相当額半額
支給期間 4年間ただし、毎年度各学部における継続審査あり
採用候補者数 約100名
<主な申請者資格> ●首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)以外の国内高等学校出身者 ●父母両方(合算)の所得証明書に記載されている金額が、給与・年金収入のみの場合給与・年金収入の合計金額が700万円以下(税込金額)。もしくは給与・年金収入のみ以外の場合、合計所得金額が346万円以下の者 ●高等学校等での調査書の評定平均値が「4.1以上」の者…など
法政大学

名称

新・法政大学100周年記念奨学金参考Web
申請時期 4月
奨学金額 ・文系学部:20万円
・理工系学部:25万円
支給期間 1年間
採用候補者数 540名
<主な申請者資格> ●学業成績が優れ、教育上経済的援助が必要な者 ●新1年生は全員申請可能。2年生以上の申請資格は、前年度の修得単位数が、教職資格科目を除き30単位以上(ただし理工系学部の4年生は25単位以上)で、前年度のGPAが2.1以上の者…など
法政大学

名称

チャレンジ法政奨学金参考Web
申請時期 入学前(予約型)
奨学金額 ・文系学部:38万円
・理工系学部:43万円(1年次)
支給期間 1年間審査を毎年受けることで、4年間の最短修業年限期間中の継続受給が可能
採用候補者数 200名
<主な申請者資格> ●首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)以外の国内高等学校出身者 ●一般入試(T日程入試・英語外部試験利用入試・A方式入試)、大学入試センター試験利用入試(B方式・C方式)を受験する者 ●学校(中等教育学校の場合は後期課程)における全ての教科・科目の評定平均値が「3.8以上」である者 ●父母年収合計が600万円以下(税込み)の者(事業所得の場合は197万円以下)。父母それぞれの所得証明書の年収・所得を合算(申請時において最新のもの)…など

※すべて2019年5月時点の情報です。最新の情報は各校のホームページ・募集要項などでご確認ください

東京大学の「さつき会奨学基金」は、自宅外通学の女子学生が対象で、在学中は月3万円が支給されます。東京大学にはこのほかにも複数の奨学金制度があるのですが、女子学生向けの奨学金が充実しているようです。私立大学の学内奨学金制度は、採用候補者数も多い傾向があります。特に早稲田大学と慶応義塾大学は力を入れていて、返済不要の給付型奨学金はどちらも100種類以上にのぼるので、活用しやすいのではないでしょうか。

地方からの受験者は必見「予約型」奨学金

国立も私立も共通しているのは、「予約型」の奨学金があることです。

「予約型とは、入学前の高校3年時に申し込みをする奨学金制度です。その学校への入学を強く志望していれば、要件次第で採用され、合格後に奨学金が支給されるというもので、主に遠方からの受験生が対象になっています。家計基準は各大学それぞれ異なりますが、慶應義塾大学のように、“父母の年収が1,000万円未満”と幅が広いところもあるので、申請時期や要件も含めて志望校の奨学金情報のチェックがおすすめです。大学案内のパンフレットや、学校のWEBサイトにも記載があります」(竹下さん)

高成績なら授業料が全額免除されることも

予約型以外では、申請の必要がなく、大学側が選抜するタイプの奨学金制度も目立ちます。このタイプの特徴は、家計の経済状況が審査基準にならないところが多い点です。奨学金額も高額で、一橋大学の「学業優秀学生奨学金」の場合は月額8万円(年間96万円)。明治大学の「明治大学特別給費奨学金」は授業料相当額なので、学部によっては年間120万円近く支給されます。ただし、採用候補者数は少ないので、入試や毎年の成績でより良い実績を残さなければなりません。

奨学金の定番「JASSO」

ここまで大学独自の奨学金制度を見てきましたが、学外奨学金のなかで最も知名度があり、人気も高いのが、「JASSO(日本学生支援機構)」のものです。大学独自の奨学金に比べると審査基準は厳しいですが、「もしものときのために、知っておくと安心」と竹下さん。

返済不要の「給付型」と「貸与型」の2種類があるのですが、特に貸与型は日本の大学生の2.7人に1人※が利用しているほどで、一般的になりつつあります。JASSOの奨学金についても、詳しく教えていただきました。

※日本学生支援機構「奨学金ガイドブック2019 」より

■JASSOの奨学金制度
┣ 給付型
┗ 貸与型
  ┣ 第一種:利息なし
  ┗ 第二種:利息つき

「返済不要の給付型は、今後、対象者の大幅拡充の動きがあります。それまでは収入基準が住民税非課税世帯のみだったのが、2020年4月入学者より、年収約380万円までの世帯も対象になります」(竹下さん)

一方、貸与型には第一種と第二種があり、それぞれ無利息のものと、利息つきのものに分かれます。無利息の「第一種奨学金」の採用基準は、原則として高等学校等の成績が3.5以上、家計収入(年額)は4人世帯の例では747万円以下。

大学の場合、借りられる金額は最大で月64,000円(私立・自宅外)、返還には2つの方法があります。ひとつは、借りた総額から月々の返済額が算出され、毎月定額で返還していく“定額返還方式“。もうひとつは、貸与終了後の収入や所得に応じて返還額が変動する“所得連動返還方式”です。

「定額返還方式の場合、社会人になりたてで収入が多くない段階でも定額で返還するため、これが大変だという話をよく耳にします。所得連動返還方式なら、収入の少ない時期は負担の少ない額で、その後は収入の増加に応じて毎月の返還額が増えていくしくみなので、毎月余裕を持った返還ができます」(竹下さん)

第一種奨学金 無利息

採用
基準
学力基準 家計基準の目安(4人世帯の場合)
申し込み時までの高等学校等の成績が5段階評価で平均3.5以上 ※1 申し込み時の家計収入(年額)が747万円以下 ※2
貸与
月額
最高月額 64,000円(私立・自宅外の場合)
返還
方式
選択可能
・定額返還方式
・所得連動返還方式

日本学生支援機構「奨学金ガイドブック2019」より作成
※1 住民税(市区町村民税所得割)非課税世帯・生活保護受給世帯の生徒または社会的養護を必要とする人(児童養護施設入所者等)については、この学力基準に満たなくても、学習意欲があれば申し込み可能
※2 住民税(市区町村民税所得割)非課税世帯・生活保護受給世帯の生徒または社会的養護を必要とする人(児童養護施設入所者等)については、この家計基準に満たなくても、申し込み可能

利息がつくタイプの「第二種奨学金」は、比較的ゆるやかな基準設定になっています。「しかもJASSOは、一般の教育ローンなどに比べて金利も低いため人気が高い奨学金(ローン)です。対象になる学生も多いのではないでしょうか」と竹下さん。

第二種奨学金 利息つき(在学中は無利息)※1

採用
基準
学力基準 家計基準の目安(4人世帯の場合)
次のいずれかに該当すること① 申し込み時までの高等学校等の成績が学校の平均水準以上であること② 特定の分野において特に優れた資質能力を有すると認められること③ 学習意欲があり学業を確実に修了できる見込みがあると認められること 家計収入(年額)が1,100万円以下
貸与
月額
2万円~12万円(1万円単位)※2 ※3
返還
方式
定額返還方式

日本学生支援機構「奨学金ガイドブック2019」より作成
※1 利率固定方式:年0.14%、利率見直し方式:年0.01%(2019年3月末)
※2 私立大学 医・歯学課程12万円を選択した場合、4万円の増額可
※3 私立大学 薬・獣医学課程12万円を選択した場合、2万円の増額可

さらに竹下さんは、申し込み方法のポイントについても語ります。

「貸与型奨学金で注目したいのは、大学独自の奨学金にもあった、高校3年生時点で申し込みをする予約採用。JASSOの場合は進学先が未定でも申し込みが可能なんです。しかも、予約採用は申請が通れば選抜なしで支給が約束されます。もしも浪人することになった場合は、予約採用の資格は自動的に取り消されます。予約採用で採択されても、あとでキャンセルができるので、貸与型奨学金を考えるのであれば、予約採用の申し込みをしておくと安心です」(竹下さん)

竹下さんによれば、JASSOの奨学金には、「入学時特別増額貸与奨学金」というものもあるそうです。これは大学の教育費で、もっとも多額な資金を要する入学時の支払い負担を補う制度です。こちらもぜひ注目しておきましょう。

貸与型奨学金のなかでも特に第二種は、採用基準から考えても検討してみる価値はありそうです。ただ、適用される金利水準が一般の教育ローンに比べて低いとはいえ利息はつきます。困ったときの選択肢として利用する際には、将来の返済に無理がないように借りすぎには十分注意しましょう。

民間企業の奨学金も条件が合えば◎

実は、奨学金制度を実施しているのは、大学やJASSOのような独立行政法人だけではありません。最近では民間企業でも、社会貢献活動の一環として給付型奨学金制度を設けているところがあるのです。学校の指定があるところなどさまざまなので、気になる方は早めの情報収集が安心です。

「地方の企業では自治体と連携して、“返済肩代わり制度”を行っているところもあります。ただし、地方出身者のUターン限定や、業種の指定、勤務年数条件などの要件があるので、検討する場合はお子さんの将来のことと併せて考える必要があります」(竹下さん)

ここまでに挙げたように、一口に奨学金といっても、いろいろな種類があります。給付型奨学金であてはまる人が多く、特に注目したいのは大学独自の奨学金でしょう。活用できれば、家計への教育費負担を軽減することができます。

※記事の内容は執筆時点のものです

竹下さくら
竹下さくら 専門家・プロ

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®。損害保険会社・生命保険会社勤務を経て、1998年にファイナンシャルプランナーとして独立、現在に至る。個人向けのコンサルティング業務を主軸に、セミナーでの講演、新聞や雑誌等への執筆活動など幅広く活動中。二児の母。主な教育資金関連の著書に、『「教育費をどうしようかな」と思ったときにまず読む本』(日本経済新聞出版社)、『「奨学金」を借りる前にゼッタイ読んでおく本』(青春出版社)、『親と子の夢をかなえる! “私立"を目指す家庭の教育資金の育てかた』(近代セールス社、共著)、『書けばわかる!わが家にピッタリな住宅の選び方・買い方』(翔泳社)がある。

この記事の著者

フリーエディター・ライター。広告制作会社でディレクターとして勤務の後、結婚を機にフリーランスに。現在は2歳の息子の子育てをしながら、今後わが子にも訪れるであろう中学受験について勉強中。

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