中学受験ノウハウ 連載 中学受験との向き合い方

受験によって育まれる力「レジリエンス」と「グリット」―― 中学受験との向き合い方

専門家・プロ
2019年7月31日 やまかわ

首都圏の一部では、4人に1人の小学生が挑戦するともいわれる中学受験。子供の受験に親はどう向き合えばよいのでしょうか。この連載では、『中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由』の著者である、田中純先生に中学受験との向き合い方をテーマにさまざまな話を伺います。

前回は、受験直前の過ごし方について解説しました。今回は受験によって育まれるレジリエンス(立ち直る力)とグリット(やり抜く力)について⽥中先⽣に伺います。

レジリエンスとグリッド

はじめにレジリエンスとグリットの意味についてお話しします。レジリエンスは復元力、つまり立ち直る力です。グリットは気概や気骨、やり抜く力を指します。歯ぎしりをしたり、歯を食いしばったりするときの音が語源の言葉です。

世の中には上手くいかないことや不条理なことがたくさんあります。そのときにもう一度立ち上がる、困難に立ち向かい、最後までやり抜くための力の源が、レジリエンスとグリットです。受験勉強で、これらの力が育まれるチャンスは、3つの「落」に直面したときです。

受験勉強で直面する3つの「落」
1、成績が落ちたとき
2、志望校のランクを落とすとき
3、試験に落ちたとき

いずれも苦痛や不快感、不満足を伴う苦い体験です。しかし、それらに耐えてもう一度立ち上がったり、困難に立ち向かったりすることで、苦境を突破するレジリエンスとグリットの力が育ちます。

目標に向かうための力 「自立」と「自律」

レジリエンスとグリットを意識するうえで、あと2つ知っておいてほしい力があります。それは「自立」と「自律」。レジリエンスとグリットが「目標までに立ちはばかる壁を、突破する力」だとすれば、自立と自律は「目標に向かって前進する底力」です。

受験勉強の最中、ときにはデコボコな道や坂道があるでしょう。しかし、自立・自律の力が備わっている子供は、それがわかっていても、みずから前に進むことを選択できます。壁の先の目標を見据えているため、たとえ逆境や苦境があったとしても、どうすればそれを乗り越えられるのかを考え、レジリエンスとグリットの力と共に立ち向かおうとする意志の強さを持っているのです。

ここで自律と自立、それぞれの特徴を見てきましょう。

やるべきことを自分で探すことができるのは「自立」

「自立」というのは、誰かに頼らず、自分でなにをすべきか考え、物事をすすめていける力のこと。たとえば、明日の授業の教科書をカバンの中に入れる作業を考えてみましょう。これは必要なことを自分で選んでカバンに詰め込むわけですから、「自立」ですね。勉強に当てはめれば、自分で課題を設定したり、問題集を解いたり、1人で目標設定ができる力です。

ルールやルーティンを実行するのは「自律」

「自律」とはルールやルーティンを守ること。たとえば、「授業中は立たないで座っていよう」と考えるのは、ルールを守ろうと自分を律することです。勉強でいうと、目標設定の記事でお話ししたような、勉強量や時間を決めて机に向かう姿勢も「自律」です。さらに気が進まないけれど自分が選んだことだから、しっかりやろうとすることも自らを律することです。

やりたいことを我慢して勉強をする、やりたくない勉強でも決めたことだから我慢してやる。とても大事な要素ですね。

子供が落ちこんでいるときに親がするべきこと

苦境はレジリエンスやグリットを鍛えるよい機会になりえますが、3つの「落」を体験すると誰だって落ちこみます。自立・自律の力が備わっている子供でも、やる気をなくしてしまうことがあるかもしれません。目の前でわが子が打ちひしがれているとき、親はどのように接すればいいのでしょうか。

ここで大切なことは、ほめることや叱ることではなく、努力してきた事実があることを問いかけることです。本人が気づいていないだけで、辛くてもやり抜いたことや、一度倒れても立ち上がって再挑戦したことは、たくさんあったでしょう。

たとえば、計算ドリルを最後までやり抜く、前日に先生に怒られたけど学校に行く、習い事を休まずに続けるなど。そのことを気づかせてあげましょう。

「あなたはあのとき、最後まで諦めなかったよね」
「どうやって気持ちを切り替えたの?」

このような問いかけを送ることで、「こういうふうに見てもらえていたんだな」という安心感につながります。また、「自分はこんなふうに困難を乗り越えたんだな」と、記憶をたどりながら確認することもできます。何気なくやり過ごしてきたことでも記憶に刻まれることで、苦境を乗り越えるための武器に変わります。

あとは「早く立ち上がりなさい!」と声をかけたくなるのをグッと我慢して、何も言わずにそばでじっと見守るだけです。子供が自力で立ち上がったときには、「やれた! 立ち上がれた!」という表情を見せてくれるはずです。

その気持ちを映すように「あなたが喜んでいて、私も嬉しいよ」と反応をシンクロさせれば、親子で喜び合う体験ができます。失敗するということは苦い体験でもあるのですが、嬉しかった思い出にもなるものです。

受験勉強は毎日が関門の連続

3つの「落」だけでなく、レジリエンスとグリットを育む機会は多々あります。たとえば、塾の小テスト、毎日課されるたくさんの宿題など。受験勉強は毎日が自分との戦いです。ときにはやる気を失ってしまうこともあるでしょう。そんなとき、気持ちを回復させるために重要になってくるのが、家族の存在です。

では、家を安心できる癒しの場所にするには、どのような点に気をつければいいのでしょうか。次回は、その点について詳しく解説していきます。


これまでの記事はこちら『中学受験との向き合い方

※記事の内容は執筆時点のものです

田中純
田中純 専門家・プロ

開成中学校・高等学校、国際基督教大学(ICU)教養学部教育学科卒業。神経研究所付属晴和病院、中高教諭、学校カウンセラーを経て公文国際学園開講準備に参加。現在は赤坂溜池クリニックやNISE日能研健康創生研究所、コミュニティ・カウンセラー・ネットワーク(CNN)などでカウンセリングやコンサルテーションを行っている。相性はDon先生。著書「ストレスに負けない家族をつくる」「中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由」(みくに出版)。公式YouTubeはこちら

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この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。