連載 中学受験は親と子の協同作業

入試本番の得点力につながる過去問の取り組み方|中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩 Vol.39

専門家・プロ
2019年8月08日 石渡真由美

「過去問はいつから始めればいいですか?」
「どんなことに気をつければいいですか?」
「どう活かせばいいですか?」

中学受験セミナーで必ず聞かれるのが、過去問に関する質問です。そこで今回は、過去問の正しい取り組み方についてお伝えします。

過去問はいつから始めればいいの?

中学受験において、過去問は10月から始めるのが一般的です。ただし、夏まで順調に勉強が進められているのであれば、9月から始めてもいいでしょう。また、国語に関しては、勉強時間に余裕があれば6年生の1学期から始めても差し支えありません。むしろ、問題文が長かったり、記述が多かったりする学校は、早めに傾向に慣れておいた方がいいでしょう。

しかし、10月の時点でまだ弱点がたくさん残っている場合は、まずは基礎固めをしっかりしてから、11月以降に集中して取り組むことをおすすめします。その方が結果的に得点力は伸びるからです。

過去問は1月の“肩馴らし校”を含め、受験する予定の学校は一通りやっておきましょう。第一志望校なら過去5年分、第二志望校なら過去3〜5年分、第三、四志望なら過去3年分、“肩馴らし校”なら過去1〜2年分が目安です。

ただし、麻布中や武蔵中などのように過去10年ほとんど入試傾向が変わっていない学校なら10年分やっておくといいでしょう。逆に同じ難関校でも開成中のように毎年問題傾向が変わる学校は、そこまで過去にさかのぼる必要はありません。

時間配分・入試スタイル・問題傾向に慣れるためには

過去問に取り組むときは、入試本番を意識することが大事です。まず、制限時間は必ず守るようにしましょう。はじめは、ほとんどの子が時間が足りないと思いますが、解き終わらなくても時間が来たらストップします(解き終わらなかった問題については、後で時間を計らずに解きます)。そして、解答欄がどのくらい埋まっていて、そのうちの何%が正解できたかを見ていきます。

例えば、100点満点中50点だったときの見方として、90点分の解答欄を埋めているのに50点しか取れなかった場合は、慌てて解いているか、雑な解き方をしていることが考えられます。

一方、60点分の解答欄を埋めて50点取れている場合は、基礎はできているけれど、取り組むスピードが遅いと判断できます。その場合は、スピードアップをしていかなければなりません。このように解いてみた問題に対し、どのくらい正解できたかをチェックし、解けなかった原因を探っていきます。

過去問はいくつかの出版社から発行されていますが、どれも実際の入試問題よりも小さいサイズになっています。そこで、実際の入試問題のサイズに拡大コピーをしてから取り組むようにします。

その際、思考の跡がわかるように、傍線や計算式を残しておきましょう。入試問題は、首都圏は比較的余白がありますが、関西は問題がぎっしり詰まっています。こうしたとき、どこに書き残せばいいのか練習をしておく必要があります。

また、各学校の問題形式の特徴をつかんでおくことも大事です。例えば女子御三家のひとつの女子学院の入試問題は、とにかく枚数が多く問題数も多い。そのため、瞬時の判断力と処理能力が必要になります。男子難関校の麻布中は入試問題の枚数は標準的ですが、問題文が長いのが特徴です。このように、各学校の入試スタイルや問題傾向をつかんでおくことが大事です。

また、入試問題にも相性というものがあります。長く厳密な文章で書かれている問題、子どもにわかりやすいように短くまとめている問題、会話文や資料などを入れ込んでいる問題などいくつかのパターンがあります。

問題の難度自体はそれほど変わらないのに、例えば会話文が入る問題になると、どうもしっくり来ないとか、問題文が命令調だとなんだかやる気がしなくなるなどという場合は、入試問題と相性が合わないことが考えられます。

第一志望校は思いきってチャレンジをしてもいいと思いますが、第二志望以降の学校については、確実に合格を決めたいところです。そのため、こうした入試問題の相性もあなどれません。そうやって、いろいろな角度から過去問を研究しましょう。

過去問は得点力をつける学習。正しく取り組むことで伸びていく

過去問は解いて終わりではありません。間違えた理由を探り、改善していくことが大事です。間違えにはいくつかの原因があります。例えば、単なる計算ミスであったり、問題の読み間違えであったり、字の書き間違えであったり、またはそもそも知識が抜けているということも考えられます。

間違えたところは、解説をしっかり読んで、理解ができたらもう一度解いてみましょう。そこで解ければOKとします。何度もくり返し解かせる必要はありません。ただし、似たような問題が出たときに解けるよう、類似問題を解き、その周辺の知識を再確認しておきましょう。解説を読んでもさっぱりわからないものに関しては、一度保留にしておきます。合格ラインに達していれば、その問題は“捨て問”と判断できます。

過去問をやり始めて、点数が悪いと落胆し、ときには厳しく叱りつけたりする親御さんが少なからずいます。でも、それは大きな間違いです。過去問の解き始めは、なかなか点数が取れません。合格最低点が70点の問題で40点ぐらいしかとれないことが、実は普通なのです。

そのような子ども達が、時間配分を知り、問題文の言いまわしに慣れ、問題レベルを知ることで、本番では合格点を軽々と超えていきます。

「この計算ミスが無かったら、5点上がったね。どうしたら計算ミスを減らせそうかな?」や、「このあたりの知識を忘れていなければ、あと8点もあがったね。今すぐにそのあたりを覚えておこうか。あなただったら、すぐにやれるわよ」というような励ましが、この時期の学習を強力に後押しします。

まずは合格最低点を目標に始めてそれがクリアできれば、合格者平均点を目標にすることをおすすめします。子どもは「ちょっとがんばれば、なんとかできそう」と感じることのできる目標には、本気でがんばれることを知っておいてください。


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※記事の内容は執筆時点のものです

西村則康
西村則康 専門家・プロ

プロ家庭教師集団「名門指導会」代表
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員

にしむら のりやす日本初の「塾ソムリエ」としても活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導が評判。暗記や作業だけの無味乾燥な受験学習では効果が上がらないという信念から「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。また、学習指導だけでなく、受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーション術もアドバイスする。「中学受験は日常生活を犠牲にしてまで行うものではない」「主役は塾の先生や家庭教師ではなく、お子さんとご家庭だ」という「生活の延長線上の受験」を理想に掲げている。著書に『中学受験は親が9割』(青春出版社)、『中学受験基本のキ! (日経DUALの本)』(日経BP社)など、20冊を超える。

西村則康公式サイト http://www.nishimuranoriyasu.com/
名門指導会 https://www.meimon.jp/
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」 https://www.e-juken.jp/

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。

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