連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

教科別 記憶の効果を高めるには|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2019年9月19日 石渡真由美

2020年度から大学受験が大きく変わります。知識重視の「大学入試センター試験」に代わって新たに導入される「大学入試共通テスト」では、マークシート試験に加えて、思考力や記述力を求める問題が出題されます。「知識一辺倒の教育」から抜け出し、人間にしか生み出すことができない力を伸ばしていこうという考えなのでしょう。

思考力も記述力もベースになるのは「知識」

こうした「知識一辺倒の教育からの脱却」はよいのですが、どうも近頃の教育は「考える力」ばかりに着目し、知識を身につけること(暗記・覚えること)をないがしろにしているように感じられます。しかし、思考力や記述力を伸ばすうえで、知識が欠かせません。

知識量のない人が自分の意見を一生懸命主張しても、薄っぺらで中身のない主張になってしまいます。知識量があってはじめて深く考えることができますし、豊かに表現することもできます。ですから、知識、暗記を軽視することはできないのです。

4教科の学習、記憶の効果を高めるには

一般的に中学受験では国算理社の4教科の知識が求められます。どの教科も覚えることが膨大で、すべて覚えるのは容易なことではありません。しかし、覚え方を工夫すれば効率よく身につけられます。今回は各教科のおすすめ暗記法を紹介しましょう。

社会はエピソードで記憶する

社会を覚えるなら、エピソードが有効です。前回記事(中学受験 歴史の暗記はエピソードと追体験で覚える)でもお伝えしたとおり、歴史なら年号や用語だけを「点」で覚えるのではなく、その前後の時代背景を「流れ」で覚えておくと記憶に残りやすくなります。

歴史や地理は興味があれば比較的覚えやすいですが、多くの小学生が苦手とするのは公民です。小学生の子どもにとって、公民分野はなかなか興味がわきにくいものなのでしょう。しかし、自分の生活と関連づけたり、インパクトのある話をしてあげたりすると、記憶に残りやすくなります。

例えば今年のニュースのひとつとして、参議院の定数が6席増えました。この「6」という数字。小学生にとっては多いのか少ないのか、いまいちピンときません。そこで、私の塾では子ども達に次のような話をします。

「国会議員の平均年収は約2200万円なんだ!」

「しかも、一人の議員に秘書を3人つけられる」

「で、その秘書の平均年収は一人約700万円」

「さらに、国会議員は列車や飛行機などの交通費が無料! これが大体、月100万円!」

「いろいろな優遇を考えると、国会議員一人あたり年間で約5000万円以上のお金が国から支払われるんだ!」

こういうエピソードを交えると、子ども達は「げげっ、じゃあ6人増えたら3億円もかかるってこと!?」と、驚きます。

「今年は参議院の定数が6席増えた」とだけ、丸暗記することもできるでしょう。しかし、こういったエピソードを元に対話すると、子どもはその驚きと共に記憶に残こすことができます。このように、社会は驚きや怒り、感動といったエピソードと共に覚えるのがおすすめです。

理科は原理・原則理解を覚える

理科も覚えることがたくさんあります。記憶に残すには、原理・原則を理解させることです。理科の入試では、昆虫は6本で、クモは8本、といったように、生物の足の数を問う問題がよく出ます。

こうした知識は一つひとつ覚えるとなると大変です。そんなときは、なぜそういうふうに進化してきたのかを、おもしろいエピソードを交えて教えます。たとえば次のような感じです。

:「ねぇねぇ。ムカデって見たことある?」

:「うげぇ、あるよ。気持ち悪い……」

:「あれって足何本?」

:「めちゃくちゃたくさんある」

:「そう。ムカデやゲジゲジはたくさん足があるから、“多足類”っていうんだ。じゃあダンゴムシは?」

:「あれは、かわいい」

:「ははは。ダンゴムシは、足が14本。ムカデやゲジゲジよりも足の数がすくないけれど、コレって進化してるってことなんだよ」

子どもは「○○を覚えなさい!」と言われると「覚えるのはつまらない……」と感じますが、こうした雑学を聞いて、リアクションすることは大好きです。

ちなみに、理科の暗記はグループ分けで覚えるのがポイントです。各グループの特徴をしっかり覚えておけば、あとは虫の名前でも花の名前でも、自分が覚えやすいやり方(語呂合わせなど)で覚えてしまえばOK。すべてをまんべんなく覚えようとするのではなく、要点を押さえて覚えることがポイントです。

国語の知識は連想で覚える

国語で覚えるものといえば、漢字や四字熟語です。漢字は何回も書いて覚えるものと言われますが、それが嫌で漢字嫌いになる子がたくさんいます。

私は、漢字は書いて覚えるよりも意味で覚えることをおすすめしています。漢字には「へん」と「つくり」があります。「へん」や「つくり」にはそれぞれ意味があります。例えば「てへん」だったら、手で行う動作の漢字が多いということがわかります。それを知っておくと、意味も把握しやすくなり、より記憶に残ります。

また、漢字は全体をかたまりで覚えると、忘れてしまいがちです。しかし、分解すれば、意味から連想ができて、覚えやすくなります。例えば準備の「備」という漢字。子どもは「つくり」の一部である「用」のところを「冊」と書いてしまいがちです。これも言葉の構造で理解していれば、準備の「備」だから「用意する」の「用」だな、というふうに意味から連想できます。

算数は図解を覚える

算数にはさまざまな解法パターンがあります。この解法を覚えてしまえば、平均点以上は取れるようになりますが、この無数にある解法を覚えるのがまた大変です。そこでおすすめするのが「図を描いて覚える」ことです。

例えば「和差算」や「倍数算」なら線分図を、「つるかめ算」「差集め算」「過不足算」なら「面積図」を、「出会い算」や「追いかけ算」なら状況図やダイヤグラムを、食塩水問題全般ならビーカー図をというように、作図法で解くことができます。

一度に100種以上の解法を丸暗記するのは大変ですが、図の描き方でおおまかにカテゴリー分けをしておけば、覚えるべき解法パターンを減らすことができます。このように自分なりに分類をしてみることで、覚えやすくなります。

学習とは結局「どれだけ覚えられたか」

今回は各教科の暗記法をお伝えしました。これらは記憶に残すためのヒントです。しかし、必ずしもこの方法でなければならないというものではありません。

ただ一つはっきりしていることは、学習とは結局「どれだけ覚えられたか」によるということです。それをもとに思考力・記述力のつき方も変わってきます。学習の基本は「覚えること」です。思考力や記述力を裏付けるものは知識量であり、そしてその知識量を支えるのは記憶力=暗記力なのです。


これまでの記事はこちら『今一度立ち止まって中学受験を考える

※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。

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