連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

6年生なのにいまだにやる気のスイッチが入らない。どうすればいい?|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2019年10月03日 石渡真由美

6年生の受験生は、入試本番まで4ヶ月を切りました。大人の感覚だと、「どうしよう! あと少ししかない!」と焦り始める時期ですが、「当の本人には、焦りどころかやる気も感じられない……」と嘆いている親御さんは少なくありません。一体、いつになったらやる気を見せてくれるのでしょうか?

過去問対策が始まると自動的にスイッチが入ることも

子どもがやる気に満ちて、勉強に取り組んでくれたら、親としてはどんなに嬉しいことでしょう。しかし、残念ながらその期待になかなか応えてくれないのが、小学生の子どもです。

大人であれば、時間感覚が身についているので、あと4ヶ月しかないと思うと、否応なしで頑張ることができますが、子どもにとっては4ヶ月先のことも遠い未来。本番が迫っているという感覚はまだうすく、「今ここで頑張らなければ!」という展開にはなりません。しかし、9月のはじめから受験校の過去問を取り組むようになると、現実が見えてきます。

合格するためには、最低でもこの点数を取らなければいけないという合格最低点というものがありますが、それと自分の点数との差が具体的に見え、“自分事”として捉えるようになります。それをきっかけに「この調子でいけば合格できそうだ!」とモチベーションが上がったり、「このままではまずいぞ!」と真剣に勉強に取り組むようになったりすることもあります。でも、これも子どもによって受け取り方は異なり、現実の学力を知り、「どうせ頑張っても合格なんて無理なんだ……」とあきらめモードになってしまう子もいます。

過去問の結果については、9月の段階であれば学校にもよりますが、合格最低点より60点足りなくてもまだ挽回の余地はあります。12月の段階でも30点の差なら合格可能範囲です。私の教え子で、9月に算数0点を取った生徒が、開成中に合格したという例もあります。ですから、最後まであきらめずに頑張るよう、親御さんは励ましの言葉をかけてあげましょう。

「子どものやる気」VS.「親の忍耐力」

とはいえ、子ども本人にまったくやる気が感じられないと、親御さんもイライラしてくるかもしれませんね。でも、親御さんがコワイ顔になっていくほど、子どものやる気は遠ざかっていきます。ですから、ここは親御さんの忍耐力が試されるときです。なかなかやる気を出してくれないわが子にイライラしたり、モヤモヤしたりするのであれば、やる気のスイッチを入れる工夫をしてみましょう。

効果が高いのは「ごほうび」です。「勉強をさせるのにごほうびを与えるなんて……」と思うかもしれませんが、ごほうびのあげ方を工夫すれば、子どもを机に向かわせることができます。例えば、その日にやるべき家庭学習をきちんとできたらスタンプを1個押して、1週間分のスタンプがついたらハーゲンダッツのアイスクリームを買ってあげるといったごほうびでも、子どもは喜びます。小学生の子どもは大きな目標に向かって頑張ることは難しいですが、短期的な目標に向かって頑張ることならばできるものです。しかも、目の前に大好物のアイスクリームがあれば、俄然張り切ります。「そんなもので釣れるかしら……」と半信半疑な親御さんも、試してみてほしいと思います。

また、目標に対してごほうびを変えるというのも効果的です。例えば次の模試で合格可能性が10%アップしたら、ファミレスで好きなものを好きなだけ食べていいといった特別なごほうびを用意してあげると、目の色を変えて頑張る子もいます。このように、ごほうびの効果は高いのです。

けれども、ごほうびにゲームをする時間を増やすことはおすすめしません。始めるとなかなかやめられないのがゲームですから、この時期にやらせるのは危険です。子どもから集中力を奪わないためにも、ゲームやスマホは目に入らないところに置くようにしてください。

生活にメリハリをつけるとやる気は上がりやすい

勉強をしなければいけないのはわかっているのに、始めるまでに時間がかかってしまう――。小学生の子どもにはよくあることです。なかなか勉強を始めようとしないお子さんにイライラして、叱ってからスタートしても決して、子どものやる気は上がりません。

「勉強しなさい」と叱ると、子どもから「あー、今やろうと思ったのにやる気なくなった」と言われることがよくあります。多くの親はそれを子どもの言い訳と捉えますが、実はそうではありません。子どもは本当にやる気を失ってしまうのです。これを心理的リアクタンスと言います。

そうならないためにも、「その時間が来たら必ず勉強を始める」という環境づくりをしておきましょう。おすすめのアイテムはチャイムやタイマーです。勉強を始める時間になったら、学校のようにチャイムを鳴らして、否応なしに勉強時間にしてしまうのです。ただ、勉強は長い時間やれば効果が上がるというわけではありません。子どもの集中力が続くのはおよそ30〜40分。ダラダラとやらせても、頭には残りませんので、メリハリをつけて休ませることが大事です。

実際の試験は50分ということが多いので、その時間だけは集中できるように訓練をしていきましょう。入試は時間配分も重要ですから、それを身につけるためにも、終了10分前と5分前に知らせてくれるタイマーをセットし、時間を意識させます。そうやって、集中すべきときは集中し、休憩を適度に入れながら、メリハリつけてあげると、子どものやる気が上がりやすくなります。入試まであとわずか。ここでお子さんのやる気をうまく引き出せるかどうかは、親御さんの工夫次第なのです。


これまでの記事はこちら『今一度立ち止まって中学受験を考える

※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。

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