連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

国語力を伸ばすなら「親子の会話」を見直そう|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2019年9月05日 石渡真由美

「国語力をつけるには、とにかく本を読ませればいい」と思っている親御さんは少なくありません。中学受験の国語の問題は、物語文や論説文などの読解・記述問題が出題されますし、かなりの長文も目立ちます。そのため「本をたくさん読めば、国語で有利になる」と思うのかもしれません。たしかに読書は有効です。しかし、ただ読書をさせるだけでは国語力は伸びていきません。

国語力の土台をつくる「語彙力」

国語力とは、「語彙力」「読解力」「記述力」の総合です。そのなかで、一番大事なのが語彙力です。ピラミッドの形を思い出してみてください。石を高く積み上げていくには、それを支える丈夫な土台が必要です。国語力を伸ばすうえで、語彙力はその土台となるもの。ここがしっかりすればするほど、立派なピラミッドが完成します。

語彙力の上にあるのが、読解力と記述力です。近年の入試では記述力や思考力ばかりが重要視され、そこを伸ばすことこそ大事といわれています。しかし、言葉や知識がなければ、思考力も記述力も伸ばすことができません。国語力を伸ばすには、何よりもまず「語彙力」を身につけることが大事です。

語彙力は「親子の会話」で伸ばせる

小学生の子どもが言葉を覚える環境は、おもに「家庭」「学校(友達)」「読書」の3つです。学校の授業だけでたくさんの言葉を覚えられるのであれば、それは好ましいことです。しかし、実際のところ必ずしもそれは叶いませんし、友達との会話も子ども同士ですから、そう多くの言葉を学べません。

となると、言葉を覚える環境として家庭が重要になります。ところが家庭というものは、互いのことをよく知る家族だけが暮らす “小さな世界” なので、あまり多くの言葉を使わなくても、わかり合えてしまいます。たとえば、「あれとって〜!」や「お〜い、お茶!」などの紋切り型の会話だけで意味が通じてしまいます。ですから、家庭で子どもに言葉を教えるには、親が<意識的に>伝える必要があるのです。

会話は「主語」「述語」を明確に。LINEはスタンプ禁止にしてみる

子どもがお母さんに向かって「あれとって〜!」と言ってきたら、「あれってなぁに?」「誰に向かって言っているの?」と、物分かりの悪いお母さんになってみてください。そうやって、親子の会話で主語と述語を明確にすることを教えてあげます。もちろん、親が子供に話すときも同じく主語と述語を明確に話します。

近ごろは家族の連絡にLINEを使うことが増えていると感じます。LINEは短い文章で伝えたいことが簡単に伝わりますし、スタンプをタップするだけで、「嬉しい」「残念」といった気持ちを表現できて便利です。しかし、こういった短文やスタンプ中心のコミュニケーションばかりでは、語彙力は身につきません。家族内でLINEを使うときは、スタンプ禁止のルールをつくるなど、言葉と文章で伝えるようにするとよいでしょう。

また、子どもだからといって、「この言葉、まだちょっと難しいかな……」なんて親が気兼ねする必要はありません。難しい言葉をどんどん使いましょう。子どもが「えっ? 何それ?」と聞いてきたらしめたものです。言葉の意味や例文をさらっと教えてあげてください。そうやって、子どもは家庭でさまざまな言葉を覚えていきます。

難度の高い本を読まなければ、難度の高い言葉は学べない

国語力をつけるうえで、読書はたしかに有効です。親御さんが本好きの家庭は、家で本を読むことが日常になっていることが多く、子どもも自然と本を読むようになります。本には会話では得られない言葉や表現があり、語彙力を伸ばすには最適です。しかし、「どんな本でも読めば語彙力が伸びる」というわけではありません。挿絵が多すぎる本や子ども向けの本、恋愛中心のジュブナイル小説ばかりを読んでいても、あまり期待はできないでしょう。

難度の高い本を読まなければ、難度の高い言葉は学べません。ですから、学年よりも少し難しめの本を読むことがポイントです。そのほうが、語彙力は育ちます。中学受験をするなら、中学2、3年生が読むレベルの本が読めるようになるとよいでしょう。

ただし、こういった本を親が一方的に選んで強制的に与えると、子どもが「読書嫌い」になってしまうことがあります。本を選ぶときは、親御さんはアドバイスをする程度にとどめて、子ども読む本を選ばせるほうがよいでしょう。週末に家族で図書館に行って、それぞれが自分の好きな本を選んで帰るのもよいですね。また、親子で同じ本を読み、その本の感想を話し合うのもおすすめです。家庭で語彙力を育みながら、国語力を支えるしっかりとした土台を築いていきましょう。


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※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。

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