連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

共働き家庭でも中学受験はできるの?|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2019年11月13日 石渡真由美

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ひと昔前までは、中学受験といえば専業主婦のお母さんがいるご家庭が主流でした。しかし、今は共働き家庭のほうが多数派になっています。親がやるべきことの多い中学受験。共働き家庭でも上手に進めていくことはできるのでしょうか。

子どもの学力・学習習慣・自立度によって塾選びは変わる

「中学受験は親のサポートが必要」といわれています。しかし親がつきっきりで勉強を見る必要はなく、共働き家庭でも中学受験をさせることは可能です。ただ、子どもがまだ幼いぶん、親がフォローしてあげなければいけないことはあります。例えば、子どもの健康管理や日々の学習管理、塾とのやりとりなどです。

中学受験をするのなら、それに特化した指導をしてくれる大手進学塾に通うのが一般的です。しかし、大手進学塾は受験のための充実したカリキュラムや情報は揃えていますが、各家庭のフォローまではあまりしてくれません。宿題やテスト直しといった学習は家庭で進めていくことになります。その負担度は通う塾によって違ってきます。

共働き家庭の場合、親が四六時中勉強を見ることはできませんから、子どもの学力や学習習慣の有無、自立度によって塾を選ぶ必要があります。子どもがある程度、自分で勉強を進められるというのであればいいのですが、そうでない場合は、できるだけ面倒見のいい塾を選んだほうがいいでしょう。そういう点では、大勢の子が通う大手進学塾よりも、生徒一人ひとりに目が行き届く小規模塾や個人塾のほうがいいかもしれません。

子どもはみんなカンニング経験者、ときどき疑うことも必要

中学受験の勉強は、塾で新しい単元を習い、宿題で定着させ、テストで理解度を確認するという流れで進めていきます。共働き家庭の場合、塾から出される宿題は、できれば子どもの力だけでやってほしいものです。しかし多くの場合、子どもだけに任せてしまうと「やりっぱなし」で終わってしまいます。

宿題というのは問題を解き、答え合わせをし、間違えた問題を解き直して理解できてはじめて完了します。子どもに任せると解いておしまいか、せいぜい丸付けをして終わり。それでは学力は上がっていきません。

小学生の子どもの場合、よほど成熟度の高い子でなければ、一人で宿題を進めていくのは難しいです。そのため、誰か大人がそばについて見てあげられるのが理想です。とはいえ、親にも仕事があります。では、どうしたらよいのでしょうか。

つきっきりで見てあげられないという場合は、あらかじめ家庭でルールを決めて進めておきましょう。宿題は解いて、自分で丸付けをして、間違えたところは解き直しをしておく、というところまでは、とりあえず子ども自身にやらせてみてください。終わったら、「宿題BOX」に入れておくようにします。このようにルールをつくり、ルーティーンにしておくことがうまくいく秘訣です。親御さんは仕事から帰ってきたら、宿題をチェックします。

ただし、宿題をチェックした際に全部に丸が付いているときは要注意です。実は成績の良し悪しに関わらず、子どもはみんな一度はカンニングをするものです。とにかく早く宿題を終わらせたくて、こっそり答えを写してしまう子もいるでしょう。「ちょっと怪しいな……」と思ったときは、ランダムに「この問題をもう1回解いてみて」とやらせてみたり、「この問題の解き方をお母さんに教えてくれる?」と抜き打ち解説をさせたりするといいでしょう。

そこで“しどろもどろ”になったら、カンニングを疑っていいでしょう。×がついていて、きちんと解き直しをしている(ように見える)場合も、ときどき疑ってみてください。男の子は単純なのですぐに見抜けてしまうのですが、女の子のなかにはかなり巧妙に、ところどころに×を入れて、“やっているフリ”をする子もいます。こうした行為はよくないことですが、カンニング自体は決して特殊な事例ではありません。中学受験の勉強はそれぐらい子どもにとって負担が大きいということを、保護者の皆さまにはぜひ知っておいてほしいと思います。

テスト直しは親が時間的に余裕のある週末に取り組む

テスト直しも重要です。多くの塾では、週ごとにその週に学んだことを確認する小テスト、ある程度まとまった範囲の問題が出る月例テストがあります。テスト直しは基本、答案が戻って来たらすぐにやりましょう。わからないことをそのままにせず、やり直して正解できるようにすることが大切です。

とはいえ、平日は親御さんも仕事で忙しいことでしょう。共働き家庭は、週末にじっくり付き合ってあげてください。普段はお母さんが中心に勉強を見ているというのであれば、週末はお父さんが勉強を見てあげられるといいですね。

テストというと点数や偏差値に目が行きがちですが、テストを受ける本当の意味は、今現在の学力レベルを知ることです。中学受験は子どもがまだ小さいため、「わが子には、まだまだ伸びしろがあるはず」と、つい親の期待も大きくなってしまいます。

近ごろは難関中学に入れるために、幼い時から塾や幼児教室に通わせるご家庭が増えています。しかし、幼児から小学生までは子どもの成長差の開きが大きく、頑張っても親御さんが望むような結果にならないこともあります。親の期待が大きすぎて親子で疲弊してしまい、家庭がうまくいかなくなってしまうケースは決して少なくありません。「わが子のために」と思って始めた中学受験で、子どもにつらい思いをさせてしまうのは本末転倒です。くれぐれも無理のない受験を心掛けてください。

共働き中学受験は父親の協力なしでは成り立たない

忙しい共働き家庭でも、ある程度子どもに任せて毎日やるべきことを決め、無理のない受験を心掛けていれば十分に対応できます。むしろ、親がいなくても子ども自身で勉強を進めていけるようになれば、子どもの自立にもつながります。そもそも中学受験とは、どれだけ自立しているかが問われるもの。親がつきっきりで勉強を見てあげられないことは、うまくいけばメリットのほうが大きいのです。

ただし、成功させるには絶対条件があります。それはお父さんの協力なしでは成り立たないということです。近ごろは教育熱心なお父さんも増えていますが、昔も今も変わりなく中学受験のサポート役はお母さんです。それ自体はいいのですが、仕事を持っていて、忙しいお母さんが、家の家事と中学受験のサポートをすべて担うというのでは、あまりにも負担が大きすぎます。

同じ社会で働く立場であるなら、家事を分担するなり、週末はお父さんが勉強を見るなり、夫婦で役割分担をしておきましょう。お母さんの負担が大きいと、笑顔でいられなくなってしまいます。小学生の子どもにとって、一番の安心感はお母さんの笑顔です。そのお母さんが、「なんで私ばかりが忙しいの!」といつもイライラしていたら、子どもは落ち着いて勉強に向かうことができません。お母さんが笑顔でいるためには、お父さんの協力は不可欠。しっかりできていれば、共働き家庭でも中学受験はできるものです。


これまでの記事はこちら『今一度立ち止まって中学受験を考える

※記事の内容は執筆時点のものです

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宮本毅

宮本毅

  • 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。YouTubeチャンネル「アテナチャンネル」を運営。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

石渡真由美

  • この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。