連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

中学受験 受験校は偏差値の幅を持たせて全落ちを避ける|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2019年12月02日 石渡真由美

そろそろ受験校を決める時期になりました。首都圏の中学受験では、1月入試(埼玉県・千葉県)と2月入試(東京都・神奈川県)で、一人5〜7校を受験するといわれています。では、どのような受験パターンが理想なのでしょうか?

「M型」か「W型」で強気な受験を避ける

首都圏の入試は1月入試から始まり、2月1日、2日をピークに、遅くとも5日には終了します。多くの受験生にとって、本番となるのが、2月1日の入試です。2月1日は男女御三家(開成・麻布・武蔵・桜蔭・女子学院・雙葉)をはじめ、多くの学校が入試を実施します。最近は当日に合格発表を行う学校が多いため、第一志望校が2月1日に入試を実施する場合、そこで合格を手に入れることができたら、その時点で受験は終了します。ただし、男女御三家は入試翌日以降の合格発表となります。

受験校を決める際、2月1日から2月3日までの3日間の入試日程をどのように組み立てるかはとても重要です。私のおすすめは「M型」か「W型」の2パターンです。

M型とは、1日の午前に合格可能性の高い学校を受験し、確実に合格を取って1日の午後入試や、2日の入試でチャレンジ校を受けてみるというやり方。一方、W型とは1日の午前に偏差値が高めの第一志望校(またはチャレンジ校)に挑戦し、万が一、不合格だった場合は1日の午後入試や、2日目で安全校を受け、必ず合格を取り、3日目に再度チャレンジをするというやり方です。どちらにも共通していえることは、安全校からチャレンジ校まで、偏差値の幅を広く設定し、必ずどこかに合格する学校を入れるということです。

2月1日に確実に合格をとって、安心を手に入れる

2月の入試は短期決戦です。1日に不合格になってしまうと、ショックから立ち直れずにそのまま不合格が続いてしまうことがあります。小学生が挑戦する中学受験は、メンタルによる影響がとても大きく、塾から「合格する」と太鼓判を押されていた学校でも、子どもの気持ちが弱っていると、本来持っている力を発揮できないことがあります。

そういったことも鑑みると、やはり1日目に合格をもらえることが理想です。そのために1日は午前入試に加えて、午後入試もぜひ利用しましょう。近年は、2月1日や2日にも午後入試を実施する学校が増えています。「同じ日に2つの学校の入試を受けるのは大変なのでは?」と心配される親御さんが少なくありませんが、多くの場合、午後入試は受験生の負担を軽減するために2科目受験であったり、4科目受験であっても通常の入試より試験時間を短く設定していたりします。午前入試からの移動時間や昼食の時間を配慮して、スタート時間を遅めに設定していたり、受験生が到着してから試験を開始してくれる学校もあります。

2月1日の午後入試のよいところは、早い段階で“安心”を手に入れられる可能性がある点です。そのためには、1日の午後入試の受験校を“安全校”にするのがおすすめです。午後入試の結果発表は入試当日の夜9時過ぎになることが多いのですが、その日のうちに合格を手に入れられれば安心ですし、翌日以降の入試にも大きな自信を与えてくれます。

過去問は親がいるときにやらせる。正しいジャッジが必要

受験校の選択は、9月から12月にかけて実施される合否判定模試の結果と過去問の手応えなどを判断材料にします。模試は12月を最後に終了するので、それ以降は過去問で合格ラインに達成しているかどうかがポイントです。

ところが、その過去問。答え合わせは親御さんがするのに、解くのは子どもに任せっきりというご家庭が多いのです。実は、親御さんが見ていないところで、過去問の答えを見て書き写している子が少なくありません。「そんなことをして何の意味があるの?」と驚かれるかもしれませんが、この時期の子どもは、親御さんが思っている以上にプレシャーを感じています。

今、ここで点が取れなかったら、親がガッカリするかもしれない、怒るかもしれない。答えを写すのはいけないことだとわかっているけれど、親の期待に応えたい、応えなきゃという気持ちから、つい答えを書き写してしまうのです。過去問で必要なのは正しいやり方です。解くときはできるだけ親御さんのいる前で、本番同様にきちんと時間を測って取り組むようにしましょう。

そして、受験校を選択するには、正しいジャッジが必要です。過去問でお子さんの正確な実力を知り、無理のない受験校を選択してほしいと思います。すべてを安全校にする必要はありません。安全校、実力校、チャレンジ校をうまく組み合わせて、悔いのない受験をしてください。

なかには、「うちは○○中しか考えていない」「偏差値55以上の学校以外認めない」というご家庭もあります。また、「万が一、不合格だったら、公立中でもかまわない」とおっしゃる親御さんもいます。

しかし、私はできることなら強気な受験は避けて欲しいと思います。子ども自身がその考えに心から納得していればいいのですが、どんな子でも「全落ち」は大なり小なりこたえるのです。また、2月3日くらいになって「もっと下の学校を……」と慌てはじめる親御さんもいます。そうなる前に、事前にきちんと受験校を考えておきましょう。これまで頑張ってきた成果を感じさせるためにも、やはりひとつは合格を経験させてあげて欲しいと思います。

入試本番まであと2カ月。今一度、冷静に受験校を考えてみてください。


これまでの記事はこちら『今一度立ち止まって中学受験を考える

※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。

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