連載 合格する子どもの伸ばし方

これからの時代に必要な力【1】第三者の気持ちになれる力|本物の力を育てる「合格する子どもの伸ばし方」

専門家・プロ
2020年2月13日 松本亘正

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子どものタイプによって、親の関わり方や言葉のかけ方を変えたほうがぐんと伸びる。子どもは、大きく4つのタイプに分けることができる ―― 中学受験専門塾 ジーニアス代表、松本亘正氏の著書『合格する子どものすごい伸ばし方』から、わが子のタイプを知り、子どもの力を伸ばす方法を紹介します。

これまでの大学入試では、とにかく暗記ができればなんとか乗り越えることができるという問題形態のものが多かったといえます。しかし、そんな時代が終わりを迎え、これから求められる力は多様化していきます。

そのひとつが「第三者の気持ちになれる力」です。

8歳になったら他人の気持ちがわかる子に育てよう

「他者の視点から自分の行動を考えることができるのは8歳から、自分と他者の視点以外、第三者の視点を持つことができるようになるのは12歳から――」

ハーバード大学のセルマン教授が、自身の著書で発達段階を紹介しています。

10歳前後の子どもと接するとき、気をつけておきたいのは「まだ早すぎる」のにガミガミ叱ってしまうことや、「もう遅すぎる」のにいつかできるようになると楽観的に見てしまうことです。中学受験を目指す小学生と接していると、セルマン教授の言う発達段階よりちょっとだけ早く身につけさせたいものです。ただ、いろいろなことを早くから求めすぎると、かえって心が育ちにくくなってしまうので、配慮が必要です。

たとえば、

「あなたのその行動を、ほかの人はどう思うかな?」

という質問は、小学校に入る前から繰り返し伝え、一言でもいいから反応を得るとよいでしょう。セルマン教授は8歳から、としていますが、8歳の段階では他者の視点から自分の行動はもちろん、いろんな他者の感情を客観視できるようにしたいものです。表面上では見えない感情も、このころになれば理解できる土台はできています。

テレビを見ていて「うれし泣き」している場面があったとしましょう。

子どもは「泣く」=「悲しい、つらい」と思っているものですが、

「泣いているけど、これはうれしいから泣いているんだよ」
「ずっと心配だった分、ほっとして涙が出てきたんだよ」

と、感情を読み取れるように会話をしていくことが、客観視できる能力につながっていきます。

10歳になったら、第三者の視点で考えられるようにしよう

小学校高学年になると、チームワークが重要になってきます。ただ、そんなときに自分勝手な行動を取ってしまう子はかならずいるものです。

第三者の視点を持つことができるようになるのが12歳からなら、それは「悪い子」なのではなく、「そういう視点をまだ持っていない子」ということです。

10歳にもなれば第三者の視点を持てるようにしていきたいですね。

たとえば、あるテーマで賛成と反対があったとします。自分が賛成だったとしても、反対の立場のこともわかったうえで話を組み立てていくことができること。この能力は大学入試だけでなく、将来社会に出てからも求められていきます。12歳までには、他者の立場も考えて、話を展開できるようにしたいものです。

こういうことを家庭で身につけるのは、なかなか難しいかもしれません。

作文教室で2つの立場からの意見を伝える練習をしたり、塾でたとえば、あるテーマに対して、賛成派、反対派両方の立場から意見を書かせてみるといった勉強をしたほうが、効率的かもしれません。

家でできることは、会話の中身に気をつけてみるということです。それにはニュースは格好の材料になります。

沖縄の米軍基地に反対しているニュースがあれば、反対派の理由、賛成派の理由をどちらも一緒に考えてみる。

「それは難しい」ということなら、家族旅行の行き先はどうでしょう。子どもと親の希望や立場をそれぞれ出して、どこへ行くのかを話し合って決めていく。

そんな経験が、「第三者の気持ちになれる力、気持ちを推察する力」につながっていきます。

イラスト hashigo(silas consulting)


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