連載 合格する子どもの伸ばし方

「のんびりタイプ」の子の失敗&成功エピソード|本物の力を育てる「合格する子どもの伸ばし方」

専門家・プロ
2020年1月27日 松本亘正

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子どものタイプによって、親の関わり方や言葉のかけ方を変えたほうがぐんと伸びる。子どもは、大きく4つのタイプに分けることができる ―― 中学受験専門塾 ジーニアス代表、松本亘正氏の著書『合格する子どものすごい伸ばし方』から、わが子のタイプを知り、子どもの力を伸ばす方法を紹介します。

のんびりタイプの失敗エピソード

ごくまれに、小学4年生でも九九を満足に言えない子がいます。繰り下がりの計算ができない子もいます。

ここでつまずいてしまうと、高学年になるにつれてだんだん難しくなる授業についていけなくなってしまいます。小学校で習う基礎問題もわからない場合には、別のアプローチで基礎学力を身につける必要があります。

のんびりタイプでうまくいかなかった子の話です。

その男の子はとてもひとなつっこくかわいらしいのですが、勉強となると集中力がなくなってしまいます。学校で習う計算も苦手のようで、塾の授業が終了したあと、一緒に残って計算の練習を手伝ったりしました。

中学受験のカリキュラムは、どうしても進みが早いので、学校で学ぶ基礎学習まで塾でゆっくり教えることができません。そのことも伝えたのですが、「ここで学ばせたい」と親御さんが強く希望されたので、なんとかしようと手を尽くしました。

ただ困ったのは、家でも勉強をしないことです。「うちの子は大器晩成型だから、じきにできるようになると思っている」と、親御さんもゆったりかまえていらっしゃいましたが、仮に大器晩成だとしても、3年以上芽が出ないことが多いのです。

このままでは小学校レベルの学力も定着しないまま、受験を迎えてしまいます。家庭で勉強するようにお願いしたものの、塾でなんとかしてくれるだろうと期待されていました。

結局、私たちではうまく伸ばすことができず、塾の150点満点のテストでも20点か30点がやっと。残念ながら、5年生の途中で他塾に移ることになりました。

集中力が続かず、小学校で習う問題でとても苦労する子の場合は、塾と家庭がしっかり連携して対策をとっていくことが必要だと痛感した出来事でした。

それ以来、とくにのんびりタイプの子は、親御さんに積極的に関わっていただくようにしています。

のんびりタイプの成功エピソード

時間の流れが彼だけ違う――そう感じる子がいました。

その子は、決して塾の授業についていけないわけではありません。でも、演習をさせるといつも時間が足りません。勉強中、気づくと外を眺めていたり、自習室で勉強しても、数問しか進んでいないことがありました。

でも、塾は好きなようで、授業も一生懸命聞いています。集中力が途切れてしまうことで、教える側として授業がやりづらいということはありませんでした。

受験も近づいた6年生の秋。学力は着実についていくのですが、スピードはなかなか上がらないままでした。こういうときは生活リズムから変えていくとよいのですが、そんなことを言っている余裕もありません。そこで、担任は次のような方法を提案しました。

1、1問4分間。ストップウォッチで管理。ただし本人には見せない。終了後、即丸つけして次の問題へ進む
2、4分×5セットが終わったら4分間休憩する
3、1、2を2回繰り返す。休憩込みで合計44分

1周目は〇×のみ解答する。
2周目は1周目に間違えた問題を同じように解く。
2周しても正解にならなかった問題は質問へ。

こんな方法で算数の自習をさせたのです。すると、いつもの半分程度の時間で終えることができました。

短時間であれば集中力が持つので、短い時間で区切って、しかも休憩もコンスタントに入れるという方法です。取り組む問題は、志望校の計算問題と1行問題、これまで授業で解いたものに限定しました。難しい問題では、このやり方では効果が出ません。

とにかくリズムを作ることが重要でした。ただし、本人も見る側も疲れるので、長時間は持ちません。でも、1日44分間集中する方法を取り入れたことで、劇的に解くスピードが上がりました。

結果、彼は偏差値55の上位校に、一発合格することができました。

集中力が続かない子に長い時間勉強を強いても、効果は出ないもの。そんなタイプの子でも取り組める方法を見い出して、短所を克服できた例です。

子どものタイプは、次のページからチェックできます。

【あなたの子どもは何タイプ?】チェックリストで子どものタイプを確認しよう

イラスト hashigo(silas consulting)


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