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【英語】大学入試改革を見据えて10歳前後にやっておきたいこと |本物の力を育てる「合格する子どもの伸ばし方」

専門家・プロ
2020年9月09日 松本亘正

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子どものタイプによって、親の関わり方や言葉のかけ方を変えたほうがぐんと伸びる。子どもは、大きく4つのタイプに分けることができる ―― 中学受験専門塾 ジーニアス代表、松本亘正氏の著書『合格する子どものすごい伸ばし方』から、わが子のタイプを知り、子どもの力を伸ばす方法を紹介します。

このところ騒がれている「4技能」とは「聞く・読む・話す・書く」のことです。大学入試センターが出題する問題とは別に、英語に関しては4技能をすべて評価するため、外部の資格・検定試験を活用することになりました。

これまでは「聞く」「読む」が重視されてきましたが、「話す」「書く」が重要になったということです。その流れに応じて「英語の早期教育を!」という考えが定着しつつあるのですが、私は安易に英語に飛びつくのは危険だと考えています。

小さいうちから徹底的に触れさせるのなら◎

もちろん国際社会で活躍していくためにも、英語ができることは重要です。

2020年から、小学3、4年生では外国語活動が、5、6年生では外国語科(すなわち英語)が教科化されます。教科になると評価もされますし、アルファベットの読み書きなど、文字の学習も始まります。ただ、どこまで小学生段階で英語に力を入れるのかは、家庭で話し合いをしておいたほうがよいと思います。

一番避けたいのは、習い事として週に1回や2回英語を勉強したけれど、どれだけ身についたのかわからない――という状態になることです。

今後、こういったご家庭がどんどん増えてくるのではないかと推測しています。

でも、中途半端になってしまうのなら、もっとほかのことに時間を使えばよかったと後悔することにもなりかねません。

まず、2018年3月10日のニュースを引用します。

2020年度から始まる大学入学共通テストで英語の「4技能」を測るため導入される民間試験について、東京大は10日、合否判定に使わない方針を明らかにした。民間試験の目的や基準が異なるなか、入試に必要な公平性の担保などに疑問があるためという。民間試験の活用は大学入試改革の目玉の一つだが、東京大が合否判定に用いなければ、他大学の方針にも影響を与えるとみられる。(朝日新聞デジタル)

つまり、これまでの英語の試験が大きく変わることはないということです。もちろん、いまでも入試問題のなかで、コミュニケーション力をはかられていますし、今後、試験の内容が変わっていったりすることはありますが、民間試験の結果で合否が変わることはないということです。ただし、その後民間試験を活用することも検討されることになり、方針が定まっていないようです。

国公立大学でも異なる方針を示している大学もあります。広島大学入試センターは2017年2月27日に次の方針を示しました。

英語4技能(Listening / Reading / Speaking / Writing)の能力を判定する英語外部検定試験の結果を利用し、本学が定める基準を満たしている場合には大学入試センター試験の「外国語(英語)」を満点とみなします。これにより、英語コミュニケーション能力が高く、SGUトップ型等高いレベルの大学の教育を受けることを希望する者の本学への入学を期待するものです。

これは、世間で注目されていないのかもしれませんが、とてもインパクトのある発表に感じました。

広島大学が定める基準を満たしている場合には、大学入試センター試験の「外国語(英語)」を『満点』とするということです。満点というのは、東京大学に合格する生徒でもそう取れるものではありません。

ただ、ここでも気をつけてほしいのは、新しい試験に向けて、新しい勉強をしなければいけない、ということでもないということです。

たとえば、満点の認定方法はさまざまですが、「英検準1級」という項目もあります。何も新しいテストだけで判断されるということではないのです。

こう考えると、まだ大学入試のために新しい英語の勉強をしなければならない、という段階ではないといえますね。 

では、中学受験に英語教育が導入されていくのでしょうか。ひと言で言うなら、「YES」です。

すでに私立中学校のなかでも、英語を選択できる学校は増えています。これまではどちらかというと難関校ではない学校が先を見据えて、あるいは独自色を出すために英語も選択できるように見受けられたのですが、ここにきて広がりを見せています。

週1〜2回勉強するぐらいでは、受験で有利にならない

2019年には、慶應湘南藤沢中等部で、英語を選択できるようになりました。一般入試生であっても、①国語・社会・理科・算数の4科目受験か、②国語・英語・算数の3科目受験か、本人が選択できるようになったのです。

つまり、理科と社会の代わりに英語を選べるということです。

ここで、とても重要なことをお伝えしておきます。

慶應湘南藤沢中等部の英語試験内容は【英検2級~準1級程度の筆記試験(リスニングを含む)】と発表されていることです。つまり、英検2級以上の英語力が身につきそうであれば、中学受験でも英語を活用して難関校を受験できるようになります。

逆に言うと、英語が中学受験に必修化されていない以上、ちょっと勉強したくらいなら有利になることもないということですから、英語で受験するなら徹底的に、そうでないなら慎重に考えたほうがいいということです。

いつかは英語が中学受験でも必修化されるかもしれませんが、まだ、向こう何年かはその流れはこないでしょう。

武蔵中学校の梶取弘昌校長は、2018年2月に行われた意見交換会で、否定的な見解を示しました。

「当面、(入試科目への英語)導入の予定はありません」
「算数、国語、理科、社会の4教科でも受験生には大変な負担がかかっている」「英語は大事だし、それは当たり前のこと。でも巷で言われている“4技能”について私は否定的」

中学受験でも英語を当面導入することはないと明言しましたし、当面、難関校では一部の学校に限られそうです。

英語は大切ですし、軽視するつもりもありません。でも、その前にまず母語で「読む」「書く」「聴く」「話す」ことが大切だと思うのです。

英語を勉強する場合には、インターナショナルスクールに入れることを考えるくらい本格的に取り組むか、あえて小学生の段階では、学校の勉強以上のことには取り組まないか。このどちらかでいいのではないでしょうか。

学校の勉強に苦労しているなら、英語を一発逆転のツールにするのはあり

極論かもしれませんが、わが子を見ていて、

「学校の勉強も苦労している。この先も全然伸びていくように思えない。このままでは、将来受験したときや社会に出たときに、相当苦労しそうだな」

と思ったら、英語に特化してみるのはひとつの方法であると思います。英語を母国語と同じように話せるのは、やはり将来武器になります。

もちろん、いまでは「日本語も英語も話せる外国人」が重宝されています。英語を話せる日本人よりも、楽に求人できるからなのでしょう。

そういうライバルはいるものの、それでも英語を日常会話で話せるのであれば、仕事に困ることはないでしょう。

もしも、そちらを目指していくのなら、早期留学も含めて、徹底的に英語漬けにすることは、子どもの可能性を拓く方法のひとつだと思います。

イラスト hashigo(silas consulting)


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