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【算数】大学入試改革を見据えて10歳前後にやっておきたいこと |本物の力を育てる「合格する子どもの伸ばし方」

専門家・プロ
2020年9月01日 松本亘正

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子どものタイプによって、親の関わり方や言葉のかけ方を変えたほうがぐんと伸びる。子どもは、大きく4つのタイプに分けることができる ―― 中学受験専門塾 ジーニアス代表、松本亘正氏の著書『合格する子どものすごい伸ばし方』から、わが子のタイプを知り、子どもの力を伸ばす方法を紹介します。

受験で一番差がつくのは算数です。家庭学習でつまずきが多いのも算数です。学校の勉強に苦労する子も、だいたい算数で痛い思いをしています。

また、国語とは異なり、

「親がどうやって教えればいいのかわからない」
「どうしてできないのかもわからない」

という声も、よく聞こえてきます。

大学入試改革では「思考過程を説明する問題」が出されますが、算数については、

「そもそもそれ以前に基本的なことだけでもしっかり取り組ませたい」
「学校や塾の授業にしっかりついていかせたい」

というご家庭が多いように感じます。

そこで、10歳前後の子に必要なこと、家庭でできることをいくつか紹介します。

算数は受験でもっとも差がつく科目

まず、就学前や小学校低学年では、「10 の壁」でつまずかないようにしましょう。

10以上の数字が出てくる足し算や引き算を、子どもたちは学校でどのように勉強するかご存じでしょうか。

小学生の親御さんなら、「さくらんぼ足し算」「さくらんぼ引き算」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。たとえば、7+5=(  )という問題。大人であれば、見た瞬間にさっと12と答えるでしょう。このレベルなら直感で答えを出すだけで、計算に理屈などありません。

でも、最初は、どう計算するのか小学校で教えていきますし、子どもは解くのに時間もかかります。学校では、「さくらんぼ足し算」という教え方で指導されています。

5を3と2にわけ、7にその3を足す。7+3で10をつくると、2が残る。だから、10+2=12となります。

この考えで解く場合、数字の組み合わせでぱっと10を作れることで計算時間を大幅に短縮できます。ですから家庭では、子どもが10の組み合わせを即答できるように口頭でやりとりしておくといいでしょう。

10の組み合わせとは、(1、9)(2、8)(3、7)(4、6)(5、5)の5つ。

小学校に入る前の子でも、(5、5)や(1、9)は教えなくても言えるものです。でも、(3、7)(4、6)となると個人差が出ます。小学校に入るまでに、10になる組み合わせを暗唱させましょう。何でも暗記することには賛同できませんが、ここは暗記でかまいません。結局、九九だって暗唱することになるのです。

引き算でも、「10」が大事です。たとえば、15-8=(  )という問題。

まず15を5と10に分ける。そして10-8=2をする。最後に残った5を足して7と答えます。

引き算なのに最後に足し算が出てくることで、混乱してしまう子どもが多く、個人的には、この「さくらんぼ引き算」を教えることが、あまり効果的とは思えません。

8を5と3に分けて、15-5-3=7のほうが、より子どもの肌感覚には合うと思うのですが、小学校で出てくる以上、無視はできません。ですから、それに合わせて家庭でも親子で軽くレッスンしておきましょう。

ほかにしておくといいのは、10から1ケタの数字を引く訓練です。10-8や10-3を繰り返すのですが、ポイントは「1秒以内に即答できる」ことです。

それを目標にレッスンすれば、「小1算数の壁」というものはなくなり、学校の勉強でつまずくことはなくなるでしょう。

その次は、かけ算、割り算です。九九までは小学校で習いはじめる前に、暗唱させてしまいましょう。そうすると、24÷6=4といった問題にすぐに答えられます。

勉強についていけなくなるのは、遅れが出て話についていけなくなるからです。

基本の計算能力が身についていれば、それだけで遅れが出なくなります。算数の応用面で大切になってくる「考える力」は、そのあとでも十分ついてきます。

理想は、小学校分野の計算だけは先取りしてできるようにしておくことです。

10歳になったら、解き方を説明できるようにうながそう

中学校、高校を見据えると「解き方を説明できること」は大切です。

せめて途中の式はしっかりと書くことを意識させたいのですが、これもなかなか子どもはできません。塾の試験では、途中の式を書く問題をたくさん入れて、途中の式がなければ答えが合っていても減点しています。

そうすると、少しでもいい点を取りたい多くの子は式を書くようになります。でも、これを家庭で定着させるのは大変かもしれません。

10歳までは式を書かなくても、それほど厳しく言う必要はありません。

でも、10歳になったら、式を書かせるようにしてください。

徐々に、学校でも塾でも、習う内容が複雑になってきます。そのときになって、頭のなかだけで解く子は、一部の一点集中タイプを除いて、壁にぶつかります。

式を書く習慣が遅れることが、伸び悩む原因になってしまうのです。

中学受験でも、式を書かせる傾向は高くなっています。もともと、進学校の多くは、途中の式を書かせていました。開成中学校・武蔵中学校・桜蔭中学校といった学校では、当たり前のように途中の式を書かせ、部分点を設定しています。

中堅校や上位校でも、一部途中の式を書く問題を設定するようになりました。

細かな説明を日本語で書く必要はありませんが、せめて式だけは順番に書き残すように、子どもに伝えていく必要があります。

さらに、なぜ、そうなるのか説明させる問題が、中学受験でも増えているのです。

渋谷教育学園渋谷中学校は、都内共学進学校では最難関の学校です。

大学実績も急上昇しており、東大にも連続で25名以上(2017年・2018年)合格者を出しています。「納得させるように説明する」というところが、大学入試改革を見据えて「説明する能力」を問うていることを表していますね。

駒場東邦中学校も、開成・麻布・武蔵中学校のいわゆる「男子御三家」と遜色ない難度の学校です。国語や社会では、記述問題の割合がとても高い学校で、算数も途中式を書かせる問題が多いのですが、最近では、少し「変化球」のような問題を出してきました。

「『なんのために勉強するの?』という素朴な疑問を大事にしてほしい」
「きちんと何につながるのか考えてほしい」

というメッセージ性のある問題だったと思います。

「なぜ?」を考え、説明する能力が、10歳以上はとくに求められているのです。

イラスト hashigo(silas consulting)


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