連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

中学受験の鬼門「小5」でぶつかる壁|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2020年3月05日 石渡真由美

一般的に中学受験の勉強は、小学4年生から6年生の3年間かけて準備を進めていきます。学年が上がるごとに勉強はハードになっていきますが、なかでも5年生の勉強が特に重要です。

週3日の通塾。学習量が増え、内容も難化

進学塾の受験カリキュラムは、4年生(3年生の2月)からスタートします。4年生のうちは塾のある日は週2日と少なく、ほかの習い事と両立することも可能です。ところが5年生になると週3日になり、模試の回数も増えていきます。徐々に受験勉強中心の生活になってきます。

通塾日が増えるということは、そのぶん宿題の量も増えるということです。また、5年生になると、授業の内容が急に難しくなってきます。4年生のうちは、基礎的な学習が中心となるため、勉強についていけない子はそこまで多くありません。ところが5年生になると、4年生で学習した基礎内容をもとにした、応用的な内容に入っていきます。また算数や理科では抽象的な問題を扱うようになり、その概念が理解できない子には難しく感じてしまうのです。

【算数・理科】中学受験の重要単元が続々登場

算数では5年生になると「速さ」「割合」「比」といった、中学入試で頻出の重要単元が登場します。こうした問題は目に見えない抽象的なものなので、小学生の子どもには難しく感じます。またひとくちに「比」を扱う問題でも、相似だったり、速さだったり、比例反比例だったりと多岐に渡ります。ひとつつまずいてしまうと、いろいろな問題が解けなくなってしまうのです。

ですので5年生になったら苦手はそのままにしてはいけません。新しく習ったことはしっかり理解するよう、あらためて心掛ける必要があります。「目の前の宿題に追われそれどころではない……」という状況かもしれませんが、5年生で算数の苦手を放置しておくと、後々まで苦労することになります。

理科も「月の満ち欠け」「太陽の動き」「天秤」「光の屈折」「ものの溶け方」など、難しい単元が続きます。4年生の理科は「季節の花」だったり、「生き物の暮らし」だったりと、ふんわりとした内容のため、理科を苦手に感じる子はあまりいません。ところが5年生になると、理科にも計算が必要になります。算数に苦手意識を持っている子は、途端に「あ、ムリ」となってしまうのです。しかし理科の計算は、そこまで複雑なものではありません。概念をしっかり理解できていれば、怖がる必要は実はないのです。

平日は塾が3日もあり、かつ算数を中心にたくさんの宿題が出されるため、理科をじっくり勉強する時間をとるのは難しいかもしれません。そんなときは、週末を使って、「理科をじっくり勉強する時間」を設けましょう。理科は単元ごとに内容が分かれているため、算数のように積み上げ型の勉強をしなくても、挽回できる教科です。毎週末が難しければGWや夏休みなど、まとまった休みのときに取り組むのもいいでしょう。

【理科・社会】同じ暗記教科なのに、勉強のやり方が異なる

中学受験で暗記が必要な教科といえば、理科と社会です。しかし同じ暗記が必要な教科でも、理科と社会では勉強のやり方が異なります。

先にお伝えした理科は、単元ごとに内容が違ってくるため、一つひとつの単元をじっくり学習していくことで、知識を蓄えていきます。そういう点で、私は理科を「熟成型」の教科と言っています。

一方の社会は「地理」「歴史」「公民」の3分野に分かれるものの、何かしらつながりがあります。しかも5年生の1学期に地理、6年生の2学期から歴史といったように、スピーディーに授業が進んでいきます。このような場合は、後で時間を設けてじっくり学習するよりも、その場、その場で知識を入れていく勉強のやり方のほうがよいでしょう。「今、習っているものを、今覚える」姿勢が求められます。そういう点で、私は社会を「できたて型」「自転車型」「立ち食いそば型」の教科と呼んでいます。呼び方はなんでもいいのですが、両者の勉強のやり方の違いを理解していただけたでしょうか?

優先すべき教科は 算数>社会>理科>国語

最後に国語です。国語は素材文のなかに出てくる言葉が難しくなってくるくらいで、学年によって勉強の内容が大きく変わることはありません。現学年よりも一学年上の内容を勉強するというイメージです。

国語を得意にする一番の近道は音読です。音読のいいところは、言葉を意識して読むため、わからない言葉をそのままにしない習慣がつくことです。学年が上がっても、音読はぜひ続けてほしいと思います。

さて、ここまで各教科の勉強のやり方についてお伝えしてきました。5年生の学習は踏ん張りどころですが、4教科すべてを全力で頑張ってしまうと、息切れしてしまう場合があります。優先順位をつけるのであれば算数>社会>理科>国語の順をおすすめします。もちろん、お子さんによっては得意不得意が変わってきますので、必ずしもこの通りにする必要はありません。

大事なのは、徐々にしんどくなっていく「5年生の壁」を乗り越えることです。ここで乗り越えることができれば、6年生もスムーズに進めていくことができるでしょう。


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※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。

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