連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

ゲームは勉強の敵? ゲームとの適切な距離感とは|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2020年9月03日 石渡真由美

ゲームをしているときは集中しているのに、勉強になるとすぐに飽きて、ダラダラ。一体、この違いは何? そう思っている親御さんにとって、「ゲームは勉強の敵」かもしれません。では、勉強もゲームのように楽しんで取り組むことは本当に不可能なのでしょうか?

東大生はゲーム好きが多いと聞くけれど

「うちの子、ゲームばかりしていて全然勉強しないんです!」
「ゲームをしているときはイキイキしているのに、勉強になるとまったくやる気を感じません」

いつの時代にも聞く親御さんの声です。特に今年は新型コロナウイルスの影響で家にいることが多く、いつも以上にゲームをしているお子さんが多いと聞きます。

しかし、私はゲームそのものがいけないとは思っていません。また、ゲームをすることによって、学力が伸びないわけではありません。実際、東大生の多くはゲーム好きと聞きます。ただ、彼らと一般のお子さんには大きな違いがあります。それは「自己管理ができるかどうか」です。

同じゲームをやるにしても、彼らは「ゲームをするなら30分まで」「ゲームは宿題が終わってから」など、自分なりのルールを決めて、それを守りながらゲームを楽しんでいるので、ゲームのやりすぎで勉強がおろそかになることはありません。このように、自分を律することができるかどうかが大きなポイントです。

ただ、小学生の子どもに対して、自己管理を期待することは難しい。そこでもし子どもにゲームを与えるのであれば、家庭でルールを決めておく方がよいでしょう。そして一度決めたら、易々と例外を認めないことです。そうやってはじめは親が厳しく管理することが必要です。成熟度の高い子であれば、そのうち自分で自己管理ができるようになります。「ゲームもしていたのに、勉強ができる」東大生の共通点は、この「自己管理」にあるのです。

ゲームをご褒美にしてメリハリをつける

なかなか自己管理ができないというお子さんには、「ご褒美制」にするといいでしょう。たとえば、「夕食前に宿題を終わらせたら、食後30分ゲームをしていい」としておくのです。すると、子どもはゲームやりたさに宿題も頑張ります。ただし、早く終わらせることに気持ちが走ってしまうと、問題を解くのが雑になってしまうので要注意です。受験生の場合は、毎日やるべき勉強があるので、平日のゲームは認めず、休日のまとまった時間にゲームを許可する「貯金システム」にしてもいいでしょう。そうやって楽しみを用意しておくと、子どものモチベーションが上がり、メリハリがつきます。

ゲーム性を取り入れた勉強

「もっといい点数を取りたい」
「○○ちゃんには負けたくない」

まわりと競争しながら、自分を高めていくという点では、受験勉強とゲームは似ています。また、ゲームをしていると集中力や記憶力がアップしそうなイメージがあります。インターネットで調べてみると、実際、そう述べている論文もあります。一方で、ゲームをやり続けると、脳の報酬システムが過剰に反応してしまい、より大きな報酬が与えられないとモチベーションが上がりにくくなるという声もあります。

私は専門家ではないので、くわしい事実はわかりませんが、ゲームで脳をトレーニングするという方法は、受験勉強には向かないように感じます。なぜなら、受験勉強は長期戦で、努力が必要だからです。ですから、ゲームそのもので学力が伸びていくことはないと考えています。でも、ゲーム性を取り入れた勉強はおすすめです。たとえば、計算や漢字などのルーティーンの勉強は、子どもにとってあまり楽しいものではありません。そこで、ストップウォッチを使って、「よーし! 今からお母さんとどっちが早く解けるか競争だよ!」と競わせてみると、子どもは俄然張り切ります。

また、漢字の勉強も「“きへん”の漢字は何個知っているかな? お父さんとバトルしよう!」とやってみると、負けたくない気持ちから頭をフルに働かせます。このときの集中力といったらものすごいものです。そうやって、ゲーム感覚を持たせると、子どもは「勉強=嫌なもの」と感じにくく、比較的楽しく取り組みます。これこそが一番大事なことです。

『信長の野望』『桃太郎電鉄』は社会の興味の入口に

中学受験の勉強は、覚えるべき範囲が多岐に渡ります。それらを塾と家庭学習だけで覚えきることはとても大変です。しかし、子どもに「楽しい!」という気持ちがあれば、どんどんのめり込みます。ポイントは興味・関心を持てるかどうかです。私は先ほど、ゲームそのもので学力が伸びていくことはないと述べました。ですが、ゲームは興味の入口には効果的な場合もあります。

たとえば、『信長の野望』という歴史シミュレーションゲームがあります。歴史に名を残す戦国武将たちが繰り広げる戦いを疑似体験できるゲームで、これをきかっけに歴史好きになる子はたくさんいます。また、『桃太郎電鉄』というゲームは、鉄道好きな子に人気のゲームですが、単なる鉄道ゲームではなく、日本全国の地名や、その土地の産業・文化も知ることができます。楽しく遊びながら、いつの間にか地理に強くなっているのです。

このように、ゲームをきっかけに、それに関連する教科が得意になることがあります。ただ、これらのゲームは子どもによって好き嫌いがあります。「勉強につながりそうだから」と親御さんが与えてみても、あまり乗って来ない子もいるので、「ハマればラッキー」くらいに思っておいた方がいいかもしれませんね。「ゲームは勉強の敵」と決めつけず、上手に活用してみましょう。


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※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。