連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

記憶に残りやすい、忘れない漢字の覚え方|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2020年8月20日 石渡真由美

「漢字がなかなか覚えられない」「字が汚くて×になる」など、漢字が苦手・嫌いな子は少なくありません。苦手だからと言ってたくさん練習させると、漢字の勉強が苦行になり、かえって効果を減じてしまいます。何かよい手立てはないものでしょうか。

たくさん書けば覚えられるというわけではない

漢字が覚えらない。漢字練習が嫌いだ。漢字の勉強は子どもにとってあまり楽しいものではありません。実は私も子どもの頃は、漢字を覚えるのが苦手でした。

漢字の勉強というと、同じ漢字を「10回、20回書きなさい」と、とにかくたくさん書かせます。同じ漢字を20回も書くなんて、苦行以外の何ものでもありません。人は楽しいと思うことは夢中になって取り組みますが、楽しくないことに対しては、やる気が起きないもの。20回書いて覚えられればいいのですが、やらされている感が強くなってしまい、気持ちが入らないので、当然のことながら頭も働きません。つまり、たくさん書いたところで、覚えられないものは覚えられないのです。

とはいえ、中学入試の国語には必ず漢字が出題されます。学校によっては15~20問も出すところがあり、得点にも大きく関わってきます。また、文章問題のなかにもたくさんの漢字が扱われます。読解力が優れている子であれば、その前後の文章でなんとなく漢字の意味を捉えることができますが、文章を読むうえでもやはり漢字や熟語を知っていた方が有利なことは間違いありません。また、社会入試でも国名、人名などの固有名詞は漢字で書けることが必須です。

忘れない漢字の覚え方①分解する

私は漢字が得意な子と苦手な子の違いは「意識レベルの差」だと感じています。漢字が覚えられる子は、その漢字の一画一画がきちんとイメージできていたり、漢字の意味にまで意識が及んでいたりするため、記憶に残りやすいのです。

漢字をできるだけ少ない労力で覚える方法として、まずおすすめしたいのが、分解してみることです。たとえば、社会の歴史では「浄土真宗をひらいた人は誰ですか?」といった問題が出題されます。答えは「親鸞」ですが、親鸞の「らん」はとても難しい漢字です。こういう漢字を覚えるときは、上は「糸」「言」「糸」、下は「鳥」といったように漢字を一度分解し、「糸・言・糸・鳥」と何度も唱えて覚えると忘れにくくなります。

そんな覚えた方でいいの?と思うかもしれませんが、要は忘れなければいいのです。「鸞」のような極端に難しい漢字を覚えるときに分解法はおすすめです。

忘れない漢字の覚え方②意味を覚える

一般的な漢字は部首で意味を捉えながら覚えることをおすすめします。たとえば「きへん」なら木に関するもの、「さんずい」なら水に関するもの、「てへん」なら手で行う動作の漢字が多い。たとえば「払う」「拭く」「択ぶ」「抑える」などですね。このように部首の意味をおさえておくと、漢字が覚えやすくなります。

漢字が覚えられない子というのは、そういう漢字が持つイメージをまったく捉えず、ただ何となく形を眺めて覚えようとするから、定着しないのです。覚えるには工夫が必要です。

どうせ覚えるのなら、楽しく覚えたいものです。私がおすすめしているのは、保護者の方やお友達と一緒に「“きへん”の漢字がたくさん書けた方が勝ちだよ!」といったようにゲーム感覚で覚えることです。やってみると結構ハマります。負けたくないという気持ちから、「もっと難しい漢字も覚えてやるぞ!」と自分からどんどん勉強をするようになる子もいます。

忘れない漢字の覚え方③書き順を覚える

よく漢字練習帳には漢字の書き順が記されたページがあります。漢字の書き順を親からとやかく言われた経験のある子は、書き順通りに書くことに対して、面倒くさいという感情があるかもしれません。しかし、私は漢字の書き順をできるだけ正確に覚えた方がよいと思います。

というのも、漢字の書き順は、文字を書くうえでとても理にかなった順番になっているからです。書道で漢字を書いているときに、書き順通りにトメハネをしっかり書くと、筆運びに無理がなく、バランスのいい美しい字が書けるようになります。また、書き順通りにきちんと丁寧に書くと、一画一画しっかり書くことで漢字が分解されるため、意外と覚えやすいのです。

自分オリジナルの「漢字克服ノート」

漢字が苦手なお子さんは、ぜひ「書き順」を意識するようにしてください。おすすめは自分オリジナルの「漢字克服ノート」をつくることです。覚えられない漢字を書き出したら、その下に音読みと訓読みを書きます。その横に、おおまかで構わないので書き順を書きます。そして、その漢字を使った熟語例などを挙げておきます。このとき、国語だけでなく社会の勉強で出てくる漢字にも触れられるとよいでしょう。すべての漢字をノートに書く必要はなく、特に覚えにくい漢字だけで構いません。そして、時間があるときにときどき見返してみてください。

画像:宮本毅『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)の内容をもとに編集部作成

中学入試の漢字は、熟語、反対語、反意語、類義語、三字熟語、四字熟語など、いろいろな形で出題されます。四字熟語などは意味と一緒に正確に覚えるようにしましょう。音だけで覚えてしまうと、「五里霧中」を「五里夢中」と書いてしまったり、「絶体絶命」を「絶対絶命」と書いてしまったりします。きちんと意味を理解していれば、このようなミスは防げます。また、反対語、反意語、類義語はある程度出題されやすい漢字があります。これらをまとめた漢字ドリルなども出ていますので、利用するといいでしょう。


これまでの記事はこちら『今一度立ち止まって中学受験を考える

※記事の内容は執筆時点のものです

宮本毅
宮本毅 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)
『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)
『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)
『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)
『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。