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理科のグラフに強くなる[前編]入試問題の傾向と求められる力|なるほどなっとく 中学受験理科

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2020年10月08日 水溜 兼一(Playce)

学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

入試理科で得点力をつけるには、グラフ問題に強くなる必要があります。そのためにどんな学習をすればよいか、2回にわたり小川先生にお話しいただきます。前編にあたる今回は、近年の入試問題の傾向と対策方法をお伝えします。

初見のデータにグラフ作成。理科的思考力を問う問題

理科学習でグラフは欠かせないものです。入試でも多くの学校でグラフ問題が出題されます。表のデータを見てどのようなグラフになるか考えたり、グラフから読み取れることを答えたり、時にはグラフを中心に大問が構成されることもあります。

入試問題では、たとえば地震のP波・S波の伝わり方を表したグラフや、酸素や二酸化炭素などの気体の発生グラフ、ばねの伸びを示したグラフなど、よくピックアップされる題材がいくつかあります。しかし、時には普段の学習で扱わないグラフや、テキスト・参考書に載っていないグラフなど、受験生にとって初見のグラフが登場することもあります。

たとえば渋谷教育学園幕張中の2020年度入試では、「対数のグラフ用紙」が使われました。対数のグラフ用紙とは、横軸・縦軸のいずれか、もしくは両軸の目盛りの間隔が均等ではなく、10などの決まった数の1乗、2乗、3乗……の対数になっているものです。見たことのないグラフ用紙の問題に、受験生は難しさを感じたでしょう。しかし、初見のグラフを扱った問題は、問題の説明文に前提となる情報が明記されることがほとんどです。説明文は長文になることも珍しくありませんが、丁寧に読んでいけば解くことができます。

また、グラフの読み解きだけでなく、グラフ自体を作成する問題が増えているのも近年の入試理科の特徴です。学校によっては、マス目が書かれた問題用紙に横軸・縦軸の目盛りを記入するところから作成する問題が出ることもあります

こうしたグラフ問題は今後、増えていくでしょう。背景には、中学校の理科の授業が、仮説を立てて実験や観察をおこない、結果を考察する、つまり理科的思考を養うことに重点を置くようになっていることが挙げられます。実験や観察では、得られたデータを表やグラフにまとめます。そして、そこから何が読み取れるかを考え、表現することが重要です。学校側もそのようなことができる子を求めているのでしょう。入試のグラフ問題も、前提の情報があり、グラフを作成したり読み解いたりして、結果を考察するスタイルが増えそうです。

受験生に求められる、丁寧に読み解く力

近年の理科入試はグラフを使った問題の切り口が多様化していて、単に頻出パターンのグラフ問題を普段の学習で解くだけでは、得点に結びつかないことも増えています。各単元の基礎を押さえつつ、グラフの作りや意味(読み解き方)を理解することが大切です。しかし、学校の授業でグラフに特化して書き方、読み解き方を学ぶ機会は少ないと思いますし、塾でも季節講習などでグラフを扱った問題演習を量的に取り組むことはあっても、通常授業でグラフの解釈や書き方を丁寧に学ぶ機会はあまりないでしょう。したがって、家庭でもグラフに親しんだり、読み解いたり、グラフで表現する機会があるとよいと思います。この点に関しては後編で記載します。

グラフ問題を解くうえで、軽視できないのが文章を読む力です。前述の渋谷幕張の入試問題のような初見のデータ・グラフが出てきても解ける子は、長い問題文・説明文を読み切る力がある子です。こうした問題は前提を理解できれば、問いそのものは難しくないケースがほとんどですが、長文を読み切れず、内容を理解できず解答できなかったりします。肝心のポイントを読み飛ばして不正解になるケースも少なくありません。

もちろん、問題に対する慣れは必要です。そこはやはり過去問演習ということになります。その時のポイントは、グラフを見て計算すれば答えが出るような問題だけでなく、さまざまなテーマの実験や観察などに関して表・グラフを交えながら考察している――長文を読んで解答する問題にチャレンジすることです。たとえば、栄光学園中、渋谷教育学園渋谷中・幕張中、開智中、本郷中、巣鴨中、吉祥女子中、普連土学園中などは、知識だけで解くのではなく、文章をしっかり読み、考えて解かなければならない「練られた良問」が多いです。

各単元の基礎を固める。そして根気よく問題文・説明文を読み、理解する。こうした力をつけることができれば、グラフ問題は得点源になります。「読めれば解ける」を普段の学習で実感することが、グラフ問題に強くなるポイントのひとつです。


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※記事の内容は執筆時点のものです

小川眞士
小川眞士 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。

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