中学受験ノウハウ 連載 しあわせな中学受験

新しい学校選びのモノサシ ―― 北鎌倉女子学園のICT教育|しあわせな中学受験にするために知っておきたいこと

専門家・プロ
2020年12月01日 中曽根陽子

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先日、鎌倉に行ってきました。ブラシで掃いたような白雲がなびく秋の空と色づき始めた山々が、とてもきれいでした。JR北鎌倉駅から歩くこと約7分。閑静な住宅街を抜けて急坂を登りきった場所にあるのが、今回の目的地、北鎌倉女子学園です。北鎌倉女子学園は、今私が注目している学校のひとつで、この日は、今春から学園長に就任した柳沢幸雄先生にお話を伺う約束をしていました。

柳沢先生は、2020年3月まで開成の校長先生でしたが、その前は東大、さらにその前はハーバード大学で教鞭を取られていた異色の経歴をお持ちです(私が主催するマザークエストのサポーターにもなっていただいています)。そんな先生に同校の様子と、これからの教育について伺いました。

伝統女子校が、Appleから認定されたICT活用先進校に変身

北鎌倉女子学園は、80年の伝統をもつ音楽教育に定評のある女子校です。音楽コース・音楽科の卒業生の多くは、音大に進学しています。私の考える学校選びのマトリックスに当てはめると、同校は管理型とリベラルアーツ型に分類される学校。これまでのイメージは、どちらかというと保守的な校風。校則も厳しめな印象でした。ここ何年かは、大学進学実績を重視する保護者の志向や、共学校人気の高まり、北鎌倉という立地の問題もあって、年々生徒数を減らしていたのです。しかし、そうした危機にあった同校も、ここ3年で大変身を遂げています。今はADS(Apple Distinguished School)に認定されるICTを活用した先進校になっているのです。

ICTを活用した教育イノベーションで、すべての生徒を笑顔にする

校舎は完全リフォーム済で、全校にWiFi環境を整えています。生徒全員にiPadを貸与していて、各教室には電子黒板機能つきのプロジェクターや、Apple TVが設置されています。専任教員は、全員AppleTeacherの資格を保有。授業にアクティブ・ラーニングを積極的に取り入れています。

私は授業見学をさせてもらいましたが、どの教室でも、ICTを活用しながら授業をしていました。生徒たちはノートを持たず、iPadに書き込んでいます。それを瞬時に電子黒板に映し、互いに共有しながら学びあうクラス。向き合ってグループワークをしたり、個別学習をしたりと、内容によって机のレイアウトを自在に変えながら進行するクラス。生徒たちも手慣れた感じで、iPadを操作しながら、わからないことがあれば、すぐに調べて、それを友達と共有しながら話し合う、積極的な授業が展開されていました。

アクティブ・ラーニングは「脳動学習」

北鎌倉女子学園のICT環境は、今の日本の学校のなかでも高レベルなのですが、私が注目したのはその環境のもと、生徒一人ひとりを活かす教育を行おうとしているところです。

学校全体がとてもオープンマインドで、先生同士が自分の授業をシェアし合いながら授業改善を行っていて、ほとんどの授業が、生徒自身が課題を発見して解決する能力を養う探究型学習に振り切っています。柳沢先生は、それを「脳動学習」と名付けていらっしゃいました。耳や目から入った情報を、脳の中で動かして編集し、発信することで初めて知識は定着していく。それが生きる力を育てること(=生育)で、これが学校の果たす役割だといいます。

この学校の取り組みは、柳沢先生から見てもレベルが高いといいます。これからが楽しみな学校のひとつです。北鎌倉の小さな女子校が、日本の教育を変えていく発信地になっていくかもしれない。そういった期待感のある学校でした。この時期は、お子さんの学校選びに悩む方も多いですが、偏差値だけでは測れない学校の特徴に、ぜひ今一度目を向けてみていただきたいと思います。

■関連リンク:北鎌倉女子学園


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※記事の内容は執筆時点のものです

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