連載 中学受験との向き合い方

打たれ強さ、打たれ弱さとどう向き合うか ―― 中学受験との向き合い方

専門家・プロ
2021年2月04日 やまかわ

首都圏の一部では、4人に1人の小学生が挑戦するともいわれる中学受験。子供の受験に親はどう向き合えばよいのでしょうか。この連載では、『中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由』の著者である、田中純先生に中学受験との向き合い方をテーマにさまざまな話を伺います。

さまざまな困難がつきまとう中学受験。思い通りにならないことが続いたとき、「事実をどう受け止めるか」は、子供の成長に影響を及ぼします。いつまでもネガティブな気持ちでいるのか、それとも素直に反省をして気持ちを切り替えるのか。今回は打たれ弱さと打たれ強さの観点から、心の持ちようについて解説していきます。

打たれ弱さとは

叱られたあとや、嫌なことがあったあとに、しおれてしまったり卑屈になったりすること、そしてそれが何日もダメージとして残り続けることが打たれ弱さです。また、相手に対して過度に攻撃的になったり、過剰な防衛意識を見せたりしてしまうのも、打たれ強いとはいえません。

打たれ強さとは

打たれ弱い人は「自分が悪い」「自分が負けた」というように、必要以上に自責の念に駆られがちです。一方で打たれ強い人は、ネガティブメッセージを毅然として受け止める、あるいはさわやかに受け流して気に留めない、というような気構えを持っています。

その受け止め方の違いを以下の(A)と(B)とで比較してみてください。

スポーツの試合で負けたときに(A)「自分の技術が伴わず、敵わなかった」と考えたり、試験に合格できなかったときに「自分の学力が足りなかった」と素直に反省して気持ちを切り替えたりできるのも、打たれ強さだといえるでしょう。

こうした振り返りができると卑屈になる時間は最小限で済むうえに、「次はこういう部分を意識してもう一度頑張ろう」と考え直すことができます。壁にぶつかってしまったとき、ただ漫然と(B)「自分が悪い」「自分がバカだった」と後悔してしまうのではなく、前向きに反省をしてほしいですね。

さて、(A)と(B)の決定的な違いにお気づきでしょうか?(A)は自分の技術や学力という自分の努力で改良できる所を“打たれて”いるのに対して(B)は自分という人間を“打たれて”しまっています。「鉄は熱いうちに打て」というように(A)は鍛えることです。努力することで技術は磨かれ、学力は高められます。

一方、自分というのは打たれると痛いだけです。とても大切な大原則は、「人間は打たれてはいけないし、人間を打ってはならない」です。打たれ強さにつながる受け止め方は、人間として受け止めるのではなく、改善につながる行動を打たれるように受け止めるのです。そのためには以下にお伝えするような練習が役に立ちます。

話を聞いて前に向くためのアシスト

子供が打たれ弱さを見せているときには、親御さんは話を聞いてあげて、前を向くためのアシストをしましょう。

たとえば「模試の成績が悪かった。もうダメだ……」という言葉を聞いたときは、「どこがどうダメだったのかな?」と聞いてみる。そうすると本人なりに少しずつ至らなかったポイントが具体化できるようになるはずです。ひと通りの反省が済んだら「あなたがダメだったんじゃなくて、今回は努力が足りなかっただけ。次は頑張ろうね」と励ましてみてください。

こうしたサイクルを何度か繰り返すことで、悪い結果もよい結果も自分が前に進むための反省材料として受け止められ、打たれ強さが少しずつ養われていきます。

打たれ強いように見えるけれど、実は傷ついていることも

端からはなんともないように見えても、本人の心の中にはダメージが溜まっているケースもあります。そのことに気がつかなかったり、見て見ぬふりをしてしまったりしてしまうと、子供の今後の人生に大きな影響を及ぼしてしまうこともあるので、ダメージケアは早めに的確におこなうべきでしょう。ご記憶ください、「家で言えると癒える」と。

そのためには、日ごろから『親が子供に教えてもらう』という関係性を育んでおくことが大切です。日々の学校・塾生活の話題や、一緒に見ているテレビ番組の感想、晩御飯の感想など、子供の想い・考えを聴くための話題・機会はたくさんあります。話をしやすい親であれば、子供の側も「実は最近、塾の授業がまったくわからないんだ」というようなカミングアウトをしやすくなるはずです。

そして、子供が心の弱さ・つらさを打ち明けてくれたときには、まずは気持ちに寄り添うことが大事です。苦しみや悲しみを吸い取るような気持ちで、話を聞いてみてください。

叱りすぎには要注意

打たれ弱い性格が強くなってしまう要因には、教師や親など、周囲の大人からの過度な叱責もあります。頑張ったけど間違えてしまった、一生懸命に考えているのに正解がわからない……。そうしたときに高圧的な態度を受けると、大人に助けを求めることにためらいを覚えるような子供になってしまいます。手を替え、品を替え、説明してもわからないときでも親がキレてはいけません。道を誤ってしまったときは怒らずに諭す。大人には、こうしたスタンスが必要です。スポーツの審判も選手の反則行為がコート上で見られたときは、怒りを込めずに淡々と笛を吹きますよね。

叱りすぎないコツは以下の3つです。

  • 相手が聞きたくないダメだしは一度にひとつ。親子の場合も、せいぜい2、3個
  • ダメ出しの前に「いまから3つ伝えたいことがある」とことわる。思い出したことを途中で追加するのはNG。
  • 過去を蒸し返さず、改良できる行動に焦点を当てる

何度でも強調しますが、「人間を否定せず、行動を叱る」ことです。しかし、ときには親御さんも疲れていたりイライラしたりしていて、いいすぎてしまうこともあるでしょう。あとになって「言い過ぎたな」と気づいたら、子供に対して「あのときはカッとなって言い過ぎちゃった。ごめんね」と謝りましょう。

親の存在が打たれ強さの後押しになる

「うちの親はなにかあったときにいつでも助けてくれる」

こうした安心感があると、子供は安心して受験勉強に取り組むことができます。なにかあったときに周りの人間にいつでも助けを求められるというのも、打たれ強い人間、立ち直りやすい人間の強みです。親というのは、子供にとっていつでも味方になってくれる心強い存在であるべきです。日ごろからなんでも話せるような関係性を育めるように意識してみてください。


これまでの記事はこちら『中学受験との向き合い方

※記事の内容は執筆時点のものです

田中純
田中純 専門家・プロ

開成中学校・高等学校、国際基督教大学(ICU)教養学部教育学科卒業。神経研究所付属晴和病院、中高教諭、学校カウンセラーを経て公文国際学園開講準備に参加。現在は赤坂溜池クリニックやNISE日能研健康創生研究所などでカウンセリングやコンサルテーションを行っている。「一家にひとり、一課にひとりのコミュニティ・カウンセラー」を育てることを目標としている。著書「ストレスに負けない家族をつくる」「中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由」(みくに出版)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。