連載 中学受験との向き合い方

学びの楽しさを知るために ―― 中学受験との向き合い方

専門家・プロ
2021年3月05日 やまかわ

首都圏の一部では、4人に1人の小学生が挑戦するともいわれる中学受験。子供の受験に親はどう向き合えばよいのでしょうか。この連載では、『中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由』の著者である、田中純先生に中学受験との向き合い方をテーマにさまざまな話を伺います。

今回のテーマは「学びの楽しさ」を子供にどう気づかせるかです。大半のお子さんは、勉強は「できればやりたくない」と思っているかもしれません。しかし、問題が解けたときの快感「やった!」や、知らなかったことを知る喜び「A, ha!」、そして努力して成績が上がることの嬉しさを覚えることで、勉強に対する姿勢は少しずつ積極的になっていきます。子供が学びの楽しさを知るために、親ができる簡単なアシスト方法について解説します。

勉強を通じた親子間でのコミュニケーション

子供が勉強に前向きに取り組めるかどうかは、「勉強を通じた親子間でのコミュニケーション」が大切なポイントです。ここからは「もうすこし勉強してみようかな」と思わせるための、おすすめの方法を2つ紹介します。

読書して感想を語り合う

5年生くらいまでの年齢であれば「文章を読む楽しさ」を体験してみるのがいいでしょう。たとえば、親子で同じ物語を読んでみるのがおすすめです。入試に出題された作品でもいいですし、書店に平積みされている話題の本でもいいでしょう。私は家庭教師の先生と『星の王子さま』を読み、翻訳者の内藤濯の中学の後輩になることができました。

そのうえで、親子で感想を語り合ってみてください。自分では発見できなかった視点を得たり、お互いに考えを共有したりすることで気づくことはたくさんあります。もう一度読み返してみようと考えたり、同じ作者の違う作品を読んでみようと思ったりと、本に興味を持つようにもなるかもしれません。

たくさんの活字に触れることで、集中して文章を読む力も着実についてくるはずです。まだ受験勉強に本腰を入れる前までは、楽しみながらたくさんの本を親子で読んでみるのがおすすめです。

親子で社会科見学をする

休日に親子一緒に外出することは社会勉強になります。たとえば、鎌倉に実際に行って源頼朝や北条家がどんな暮らしをしていたのかをイメージしてみたり、大仏の大きさを目の当たりにしたり、葛飾北斎の絵を見にすみだ北斎博物館に行ってみるのもいいかもしれません。

親子で一緒に「当時の人はどんな暮らしをしていたんだろうね」「大仏ってどうやって作ったんだろうね」と思いを馳せたり、「葛飾北斎って人生で93回も引っ越しをした人らしいよ」という豆知識を教えたりしてみるのもいいですね。座学で学んだ知識と自分の目で見る実態のギャップは、知識の定着を強くするのに役に立ちます。親子で歴史を感じ取ってみてください。私は還暦をかなり過ぎてから初めて登呂遺跡に行きましたが、もっと早く行っておきたかったです。

勉強に対する姿勢を見直す

勉強の姿勢を見直すことは、学びの楽しさを損なわないための有効な手段です。わかっているつもりなのにテストで×がついてしまう、わからない問題に直面したときに、どうすれば理解できるのかがわからない。こうした事態が続くと学びの楽しさを見失ってしまいます。勉強の姿勢を改めるために、以下の2点を意識してみましょう。

読み手に対する思いやり

受験においては、“答案の読み手”や“採点者”とのコミュニケーションが発生します。コミュニケーションという意味では、発信者である出題者と受信者である受験生という角度からは、いかに正確に出題者の意図を汲み取るかが解答の成否を分けます。一方、受験生を発信者としたときには、受信者である読み手や採点者に何がどう伝わるかがやはり解答の成否を分けます。そのため、お子さんにはぜひ「読み手や採点者に対する思いやり」を身につけてほしいですね。

たとえば、相手に読みやすい字を書くということもひとつの思いやりでしょう。子供自身が理解して書いたつもりなのに、実際の入試では採点官がそれを読み取れなかったら×がついてしまいます。

また、算数で途中式を書かないのも見直すべき習慣です。途中式の意義は、なぜこの答えになったのか、その思考の過程を示すことです。わからない問題が出てきて、周りの大人に助け舟を求めようとしても、途中式が書いていなければ、どこでつまずいたのか、どの部分に問題があるのかが判断ができません。問題に対してどう向き合ったのかを相手に伝えることも、問題解決のためのコミュニケーションになります。

読み手や採点者とのコミュニケーションについても意識できるよう、親御さんは「途中式を書いてあなたの思考過程を表現できたかな?」「解答を読んでくれる人の立場に立てたかな?」などと声掛けしてみてください。

自分で調べて学ぶ姿勢

わからない問題を自分なりに調べて考え、正解できるようになるのも、勉強の楽しさのひとつです。こうした楽しさを習慣にするためには、自分なりの調べ方を確立することが大切。親ができるアシストとして、お子さんが「わからないから教えてほしい」と言ってきたときには、「自分でやれることは何かな?」と促してみるといいですね。また、問答する場合でも、質問の仕方、問いの立て方を一緒に考えるのはおすすめです。

わからないことを誰かに教えてもらう以外には「自分で調べる」という手段もあります。教科書や参考書などの書籍やインターネット、いずれを使わせたほうが良いのか迷われるかもしれませんが、それぞれの性質が違います。情報源の性質についても一緒に考えていくことで、情報リテラシーを高めることができれば、“一生ものの勉強力”を身に付ける機会になります。

書籍とインターネット、それぞれのメリット

書籍の強みは、調べ物をするときに周辺情報が視野に入りやすいこと。たとえば、「全然」という言葉を辞書で調べたときには、「前前」「戦々恐々」という言葉が目に入ってきやすいはずです。また、算数でわからない単元があったときに教科書を調べると、例題が豊富に載っていたり、前のページにさかのぼることでどこにつまずいてしまったのかを明確にできたりしますよね。そのように、時間をかけて熟読することで理解がしやすくなり、周辺知識も合わせて吸収できるのが、書籍を使うメリットです。

インターネットを使った調べ物は、写真や動画、イラストが盛り込まれていて親しみやすさがあるのが特徴です。そのため「どうせ調べたってできっこない」というようなアレルギー反応が起きにくいです。最近では、YouTubeにも塾の先生がさまざまな単元をわかりやすく解説している動画がたくさんあります。また、PCがなくても、スマホやタブレットでお手軽に調べ物ができるのもメリットですね。

詳しく知りたい歴史上の出来事を調べて、そのなかの登場人物についてさらに調べる、というように、気になった情報はどんどん深掘りできます。そのため、うまく活用すれば、好きな科目や単元がもっと好きになることもあるでしょう。ただし、インターネットは書籍に比べて誰でも簡単に情報提供者になれてしまうので、情報の質にバラツキあることを承知して使う、そんなリテラシーが必要です。

書籍とインターネット、それぞれの使いどころを知って上手に使いこなすことができれば、学習が効率的になります。また、自分で何かを調べることで「知りたい」という欲求は大きくなるものです。その欲求を満たしていくことで、「もっと調べてみたい」という気持ちが強くなり……というように、“学ぶ楽しさの好循環”が生まれる場合もあるのです。

親は子供の成長をサポートするのが主な役割

子供が学びの楽しさに気づくためには、むやみやたらと成績が悪いのを叱らないことが大事です。ただ、なかなか壁を乗り越えられない子供を見ていて、不安や焦りを感じてしまう親御さんもいるでしょう。そんなときは、塾の先生に相談するなど周りの人間にサポートをお願いすることで、親御さんも負担が減り、余裕を持って子供の成長を見守ることができるでしょう。中学受験は子供が主役。子供が自ら成長するためにはどうすればいいのかを考えながらサポートしていきましょう。また、〇(できた)か×(できない)かの二元論ではなく、いまだ結果に結びつかない水面下の努力と成果をどう扱うのかもとても大切です。


これまでの記事はこちら『中学受験との向き合い方

※記事の内容は執筆時点のものです

田中純
田中純 専門家・プロ

開成中学校・高等学校、国際基督教大学(ICU)教養学部教育学科卒業。神経研究所付属晴和病院、中高教諭、学校カウンセラーを経て公文国際学園開講準備に参加。現在は赤坂溜池クリニックやNISE日能研健康創生研究所などでカウンセリングやコンサルテーションを行っている。「一家にひとり、一課にひとりのコミュニティ・カウンセラー」を育てることを目標としている。著書「ストレスに負けない家族をつくる」「中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由」(みくに出版)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。