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台風はどうやってできる? 台風の大きさ、強さはどうやって決まっている?|なるほどなっとく 中学受験理科

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学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

入試理科では、理科的思考力が求められます。子どもの理科的思考力を養うためには、普段から身の回りの事象に興味を持ち、その原因を理科的視点で捉える姿勢が大切です。今回は、さまざまな事象のなかから「台風」にフォーカスして、小川先生にお話いただきます。

大量の海水が水蒸気になり上昇すると台風ができる

毎年、夏から秋にかけて台風のニュースをよく見かけますよね(2020年に日本に上陸した台風はゼロでしたが……)。そのとき、台風発生のしくみを理解していると、ニュースで言っていることがより理解できます。

みなさんはどうして台風が発生するか知っていますか? じつは台風は夏から秋にかけてだけでなく、赤道に近い北緯5~20度付近の温かい海域で一年中発生しているのです。台風の発生には、26.5℃以上の水温の海水が必要だと考えられています。

水温が高いと海水がどんどん蒸発して水蒸気ができ、この水蒸気をたくさん含んだ空気のかたまりが上昇すると、上空で積乱雲ができます。この積乱雲にまわりから水蒸気をたくさん含んだ空気が流れ込んで渦ができ、やがて台風へと発達していきます。ちなみに台風は「最大風速が17.2m/秒 以上の熱帯低気圧」のことをいいます。台風は太陽からの熱を多く受ける春から秋の間に発生する数が多く、一年に平均で25.6個(1981~2010年)発生しています。

台風の眼

みなさんは、気象衛星が撮った台風の写真を見たことがありますか? 宇宙から台風を撮影すると白い渦状の雲が写っていて渦の中央付近に黒い点が見えます。この黒い点が「台風の眼」です。台風の中心は雲がなく晴れています。

ちなみに、今は台風を気象衛星で観測できますが、昔の台風観測は相当大変なもので、飛行機を台風に向けて飛ばしていたのです。私が昔読んだ本には、「台風に突入すると飛行機は木の葉のように揺れ、暴風圏を通り過ぎて台風の眼に入るとそこは晴れていて、実に穏やかな天気で快適な飛行となった」と書いてあった記憶があります。

台風を断面図にすると、下図のようになっています。外側は上昇気流で積乱雲が何層にも発達しています。台風の外側から内側に向けて渦のように風が流れ込むのですが、中心は空気の回転で外側に生じる力(遠心力)があり、眼の周りは、さらに強い上昇気流になっているのです。

台風の眼の「周辺」は強い上昇気流ですが、実は眼の「内部」は下降気流になっていて、雲がありません。だから、気象衛星から撮った写真では黒い点に写ります。

なお、台風の発生や台風の眼については、まだまだ解明されていない問題がたくさんあります。今後より詳しくわかることで、災害の被害を抑えられるかもしれません。

台風の大きさ、強さはどうやって決まっている?

天気予報を聞いていると「大型で非常に強い台風12号」などといった表現で台風の規模を説明していますね。台風の規模の分け方には国際的な基準もあるのですが、日本では気象庁が「大きさ」と「強さ」をわかりやすい表現で発表しています。

台風の「大きさ」を示す表現は、強風域(風速が15m/秒 以上の地域)の半径がどのくらいかで表します。強風域が半径500~800 km未満の台風が「大型」。半径800km以上の台風を「超大型」といいます。半径500km未満 の場合は表現しません。上図は名古屋付近に台風の中心があったときの台風の大きさを示しています。台風の大きさをイメージしていただけるでしょう。

台風の「強さ」は、最大風速(m/秒)で決めています。そもそも台風は最大風速が17.2 m/秒 以上の熱帯低気圧ですが、最大風速が33~44m/秒 未満のものを「強い」、44~54m/秒 未満のものを「非常に強い」と表現します。最強クラスは54 m/秒 以上で「猛烈な」と表現します。ちなみに50m/秒は、時速180㎞です。猛烈な台風の風速がいかに凄いかがわかりますね。

前述の「大型で非常に強い台風12号」の大きさと強さの表現を読み解くと……、強風域が半径500~800kmで最大風速が44~54m/秒 未満の、その年12個目の台風となります。大きさと強さの基準と表現がわかると台風の規模がイメージしやすくなるでしょう。

台風は移動する。台風の東と西で強さが異なる

みなさんはコマ回しで遊んだことはありますか? 水平な所でコマを回すと、同じ場所で回り続けますよね。台風もコマのような性質があって、他から力がかからなければ移動しません。しかし台風は動きます。それは風の影響を受けているからです。

台風は高気圧の縁(ふち)に沿って動くことがありますが、その理由は高気圧の縁では時計回りの風が流れているからです。そして日本付近では偏西風などの影響を受けます。日本にやってくる台風が西から東へと動くのは、偏西風に流されるからです。

台風の「上陸」も天気予報でよく聞くでしょう。「上陸」とは、台風の気圧の一番低いところ(気圧の中心)が北海道・本州・四国・九州のいずれかの陸地に達したときのことを言います。沖縄本島などの島や小さい半島を横切って、すぐに海上へ出た場合は上陸ではなく「通過」と表現します。本州に上陸した台風は勢力が弱まって、温帯低気圧になることが多いですね。上陸で台風の勢いが弱まるのは、海面から水蒸気の供給がなくなることと、地面との摩擦が原因です。

台風は中心に向かって左回り(反時計回り)に強い風が吹き込むことも、ぜひ覚えておきましょう。台風の進行方向に向かって東側(右側)では、台風の中心に吹き込む風と、台風を移動させようとする風が同じ方向に吹くため、風が強くなります。台風の被害を伝えるニュースで、東側に被害が多くなるのはそのためです。逆に西側(左側)では、台風の中心に吹き込む風と台風を移動させようとする風が逆方向になるので、風速はいくらか小さくなります。

近年の中学入試では、台風による災害が起こりそうなときに、どのような行動をとればよいかを尋ねる問題を出題する学校もありました。台風が接近したら、実際にどんな警報が出ているのかをチェックしたり、普段から自分が住んでいる地域のハザードマップを確認したりして、親子で会話をしてみることも大事です。


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※記事の内容は執筆時点のものです

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