中学受験ノウハウ 連載 中学受験との向き合い方

他人と比較してしまうことの注意点は ―― 中学受験との向き合い方

専門家・プロ
2021年11月15日 やまかわ

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首都圏の一部では、4人に1人の小学生が挑戦するともいわれる中学受験。子供の受験に親はどう向き合えばよいのでしょうか。この連載では、『中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由』の著者である、田中純先生に中学受験との向き合い方をテーマにさまざまな話を伺います。

「あの子はあんなに優秀なのに、なんで自分はこんなにできないんだろう……」

「自分はクラスの中でトップの成績だから、もっと勉強して首位を守らなくちゃ」

このように、塾や学校で自分と周りの成績を見比べて、焦燥感や不安を抱えてしまう親子も多いようです。たとえ「人と比べるな」と言われても、周囲を気にするのは人として自然な感情です。私たちは「他人と比較してしまうこと」とどう向き合うべきなのでしょうか。

イルカと偏差値

やめようと思っても「人と比べてしまう」のには訳があります。それは? ……私たちは「迷子になりたくない」からです。自分の現在位置を知り、進行方向を知るために、他人と自分を比べてしまうのです。

そして、周りの人間はどれくらいの力を持っているのか、それによって自分が脅かされることがあるのか。周りを認識することで、自分の生活に脅威があるかないかを測っているのです。

これはイルカにも同様のことがいえます。イルカは水中で自分が声を出し、その反響を受け取ることで、障害物との距離を測りつつ、自分がどこにいるか、どこに向かっているかを知ります。これを“反響定位”と呼ぶそうです。人間の場合は、人間環境のなかでの相対的な位置を知る。すわなち、ある種の“環境定位”によって、自分の位置や向きを知って、安心したり不安になったりします。

受験生の場合は偏差値やテストの点数を基準に、他人と自分を比べて自分の現在地を確認することが多いですね。模試を受験した際に、自分が今 受験生全体の中でどれくらいの位置にいるのかを、数字で実感することができます。そもそも偏差値とは受験者集団の中での自分の位置を示す数値です。

しかし多くの人は、周りと比較することでネガティブな感情に苛まれがちです。それは比較によって自ら「毒」を生み出すようなもの、いわば“自家中毒”です。ではその逆で「やる気が出るような比較」というのは、どのようなものなのでしょうか。

比較の「毒」を取り除くために

まず、比較の毒を解毒するためには「あの人は自分よりもできる(優れている)」という、漠然とした見方をするのではなく、具体化することです。

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田中純

田中純

  • 専門家・プロ

開成中学校・高等学校、国際基督教大学(ICU)教養学部教育学科卒業。神経研究所付属晴和病院、中高教諭、学校カウンセラーを経て公文国際学園開講準備に参加。現在は赤坂溜池クリニックやNISE日能研健康創生研究所、コミュニティ・カウンセラー・ネットワーク(CNN)などでカウンセリングやコンサルテーションを行っている。相性はDon先生。著書「ストレスに負けない家族をつくる」「中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由」(みくに出版)。公式YouTubeはこちら

やまかわ

  • この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。