連載 中学受験との向き合い方

試験中に緊張にのまれないために ―― 中学受験との向き合い方

専門家・プロ
2021年12月24日 やまかわ

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首都圏の一部では、4人に1人の小学生が挑戦するともいわれる中学受験。子供の受験に親はどう向き合えばよいのでしょうか。この連載では、『中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由』の著者である、田中純先生に中学受験との向き合い方をテーマにさまざまな話を伺います。

受験本番や模試の会場で問題を解いているとき、「できるはずなのにできない……」という状態に陥ることがあります。そして、帰り道や家に帰ってから思い出して悔しい気持ちになることも。親御さん自身も何かの試験を受験されたときに同様のご経験をなさったことがあるかもしれません。こうした事態を防ぎ、それまで培った力を十全に発揮するためには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。

試験会場での「ど忘れ」と、スポーツの「イップス」

スポーツの世界では「イップス」と呼ばれる現象があります。まっすぐにボールを投げたいのにとんでもない方向に飛んでいってしまう、意図せずしてスイングが途中で止まってしまうなど、技術はあるはずなのに思うように体が動かなくなってしまうといったものです。

現在でもアマチュア・プロ問わず多くの人が苦しめられていて、彼らの「できるはずなのにできない」という焦りと苦しみは、受験生が試験会場で「わかるはずなのにわからない」「覚えているはずなのに思い出せない」と苦しむのに似ています。

「こんなはずでは……」という想いが招く泥沼

あるスポーツの選手が試合前に「あの相手に自分は勝てないはずがない」とインタビューで答えたことがあります。相手選手は世界ランキングでは格下でしたが、試合が始まってみると、彼は本来の実力を出し切ることなく、敗北を喫してしまいました。

これはおそらく劣勢になった際に、彼の心の中では「こんなはずはない……」と事実から目を背けた想いばかりが渦巻いていたのではないでしょうか。「このままでは負けてしまう」「ああいう展開を予想していたのに」という仮定の未来に頭を使ってしまうと、泥沼にはまり込んでしまいます。

そうならないためには「目の前の問題に“専念”する力」が必要です。この選手も事実を受け入れ、そのうえでこの事態をどう攻略すべきかに専念していたら、結果はまた違っていたかもしれません。

同じように子供たちも、目の前の問題に集中できなくなることはよくあります。正解が何なのか悩み過ぎたとき、「不合格になったらどうしよう」「こんな出来栄えではお母さんに叱られちゃう」などの不安が心の中でむくむくと育ってしまうのです。

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田中純

田中純

  • 専門家・プロ

開成中学校・高等学校、国際基督教大学(ICU)教養学部教育学科卒業。神経研究所付属晴和病院、中高教諭、学校カウンセラーを経て公文国際学園開講準備に参加。現在は赤坂溜池クリニックやNISE日能研健康創生研究所、コミュニティ・カウンセラー・ネットワーク(CNN)などでカウンセリングやコンサルテーションを行っている。相性はDon先生。著書「ストレスに負けない家族をつくる」「中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由」(みくに出版)。公式YouTubeはこちら

やまかわ

  • この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。