中学受験ノウハウ 連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

5月病? 子どものやる気がダウン……、どうすればいい?|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2023年5月11日 石渡真由美

0

新学年コースがスタートしてから早3カ月。4年生は塾通いに慣れ、5年生、6年生は受験勉強が本格化し、ここで成績を伸ばしていきたいところです。

ところが当の本人は近ごろ、勉強に対するやる気がダウン……。

大人であれば5月病を疑うところですが、私の経験上、小学生の子どもが5月病ということはまずないと思います。

では、やる気ダウンの原因は何なのでしょうか?また、どうしたらやる気がアップするのでしょうか?

意外と多い 塾での人間関係のトラブル

塾から帰って来た子どもが、なんだか元気がない。

「授業が難しくてついていけないのかな?」「小テストの点数が悪かったのかな?」と、多くの親御さんはお子さんの勉強のことを心配します。

ところが、子どもが抱えている悩みで意外に多いのが、塾での人間関係のトラブル。

たとえば塾の先生が威圧的で怖かったり、女の子で多いのはグループの派閥や仲間外れでつらい思いをしていたりと、勉強以外のことでストレスを感じ、勉強に気持ちが向かなくなってしまうことがあります。

そういう場合は、すぐに塾に相談をしてみましょう。

クラスを変えてもらったり、先生を変えてもらったりするなど、環境を変えることで解消できることもあります。

また、小学校と違って塾は、「合格に向かって頑張る」という目的が同じなので、塾の先生が子ども達の気持ちをうまく導くことができれば、「グループ派閥のゴタゴタに巻き込まれている場合じゃない、勉強に集中しよう」と、比較的スムーズに気持ちを切り替えることができます。

つまり、良くも悪くも塾の先生の力量次第。塾のほうで何も動いてくれない場合には、塾を変えるという選択も出てきます。

成績低迷でやる気がダウンしている子には過去模試で自信を回復

塾には休まず通っているし、宿題もきちんとやっている。なのに、成績が上がらず、勉強に対するモチベーションが下がってしまう子は少なくありません。

しかし、こんなことを言ってしまうと身も蓋もないのですが、そもそも論として偏差値はそう簡単には上がりません。

なぜなら、本人が頑張っているように、ほかのみんなも頑張るからです。マラソンにたとえるのなら、みんなが同じゴールに向かって走っている中で、数人を一気に追い抜く「ごぼう抜き」などそう簡単にできるものではないということ。

ですが、「ごぼう抜き」しなくても、自分自身は確実に前に進んでいます。偏差値は上がらなくても、お子さんは確実に成長しているということです。

試しに、今5年生のお子さんであれば、4年生の12月時点で受けた模試を解かせてみてください。4年生のときは40点しか取れなかったテストが、今なら80点は取れるでしょう。

お子さんが勉強に対して、自信をなくしているようでしたら、ぜひ過去の問題を解かせてみましょう。そして、「ほらね、こんなにできるようになったんだよ。頑張ったね」と、お子さんの成長を認め、褒めてあげて下さい。

さて、ここでお子さんのモチベーションより心配すべきことがあります。親御さんの焦りです。

子どもはテストの点が悪くても、案外平気だったりします。むしろ、親御さんの方が勝手に高い目標を掲げ、「こんな点数では、どこにも合格できない」と慌てているケースが多いのです。

そして、その目標が驚くほど高い。偏差値40の学力の子に、偏差値60の学校を目指せというのは、どう考えても現実的ではありません。

こちらの連載でも再三言っていますが、目標は低めに設定し、お子さんの成績が上がってきたら、少しずつ上げていくというやり方が、親にとっても子どもにとってもいいと思います。

「わー、今回のテストはよく頑張ったね。この調子でいくと、もうちょっと上の学校も狙えるかもね!」と、希望を持って勉強に向かわせたほうが、達成感を得られますし、子どもも頑張れるものです。

子どもを元気にする3つのストレス解消法

最近、子どもの元気がない。ストレスを貯めているようだ、と感じたら、次の3つをやってみましょう。

  1. 十分な睡眠をとらせる
  2. 子どもの好きなごはんを作る
  3. 気分転換に身体を動かす機会をつくる

6年生になると、夜遅くまで勉強をする子が出てきます。

しかし、小学生の子どもにムリは禁物です。寝不足の状態では集中力を発揮することができず、たくさん勉強しているわりには効果が出にくいのです。

なんだか最近、疲れているみたいだな、と感じたら、「今日は勉強はいいから、ゆっくり寝なさい」とたっぷり寝かせてあげましょう。一晩ぐっすり寝ると、元気になる子はたくさんいます。

子どもの好きな食べ物を用意してあげるのも効果的です。気分転換に、外食するのもいいですね。

また、勉強ばかりしていて、体を動かしていない子もいます。

気分転換に散歩に出かけたり、敢えてお母さんが一緒にキャッチボールやサッカーをしたりするのもいいでしょう。

普段は「勉強しなさい!」「まだ宿題をやっていない!」とお母さんにやり込められていることが多いけれど、キャッチボールやサッカーなら子どもの方が得意。「お母さん、ちゃんとまっすぐに投げてよ」「下手くそだなー(笑)」とお母さんより上の立場になれるのは、子どもにとっては嬉しいものです。

そうやって、まずは簡単にできることからやってみてください。

受験も習い事も、と欲張らずにスケジュールに余裕を持たせる

また、過度なスケジュールが子どもを疲れさせている場合もあります。

5年生くらいまでは野球やサッカーなどのスポーツや習い事を続けながら、受験勉強をしている子は少なくありません。

子どもがやりたいことは続けさせたいというお気持ちは分かりますが、いずれ受験をするのであれば、これらの調整はどこかで必要になってきます。

どっちも頑張り続けるのは大変ですし、体への負担も大きくなります。疲れからストレスを溜め、結果的にどっちも中途半端な状態になってしまうのは一番避けたいこと。

ここは一旦、スポーツや習い事をお休みするなどし、スケジュールを見直してみてください。目標を1つに絞ったほうが、勉強にも向かいやすくなります。

そして、最後に大切なことは、親御さん自身もストレスを溜めないこと。

『わが子のために』と自分の生活を犠牲にしてまで、受験にのめり込んでしまうと、かえって子どもにはプレッシャーになります。

親御さんが自分の好きなこともやって、いつもご機嫌でいてくれた方が、お子さんはのびのびと勉強できるでしょう。

※記事の内容は執筆時点のものです

0
宮本毅

宮本毅

  • 専門家・プロ

1969年東京生まれ。武蔵中学・高等学校、一橋大学社会学部社会問題政策過程卒業。大学卒業後、テレビ番組制作会社を経て、首都圏の大手進学塾に転職。小学部および中学部で最上位クラスを担当し、多数のトップ中学・高校に卒業生を送り込む。2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。また「すべての子どもたちに自発学習を!」をテーマに、月一回の公開講座を開催し、過去3年間でのべ2000名近くを動員する。若い頃からの変わらぬ熱血指導で、生徒たちの「知的好奇心」を引き出す授業が持ち味。YouTubeチャンネル「アテナチャンネル」を運営。

■著書

『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)『文章題最強解法メソッド まるいち算』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 ゴロ合わせで覚える理科85』(KADOKAWA出版)『中学受験 ゴロ合わせで覚える社会140』(KADOKAWA出版)『ケアレスミスをなくせば中学受験の9割は成功する』(KADOKAWA出版)『合格する子がやっている 忘れない暗記術』(かんき出版)

石渡真由美

  • この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。