連載 中学受験は親と子の協同作業

志望校選びは何を基準にすべき? 何からはじめるべき? 中学受験でおさえておきたい3つのポイント|中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩 Vol.6

専門家・プロ
2018年8月02日 石渡真由美

中学受験の検討を始めたら、まずは何からすればいいのでしょう? とりあえず、塾選び? 確かに塾選びも大切ですが、まずはおおまかでいいので、目標となる志望校選びをしておくといいでしょう。なぜなら、受験する志望校によって塾選びも変わってくるからです。

とはいえ、首都圏には約300校の私立中高一貫校があり、このなかからわが子にぴったりな学校を見つけるのは容易なことではありません。そこで志望校選びのポイントを3つ紹介します。

1.志望校は子供が実際に通える場所にあるかを確認する

小学校を卒業すれば、誰もが通える地元の中学校があります。その中学校を選ばず、あえて別の中学校を受験をするのであれば、できれば「いい学校」へ入れたいと親は思うもの。そして、多くの親にとって「いい学校」とは、いわゆる偏差値が高く、大学進学実績のある学校を指します。

けれどいくら「いい学校」でも、通学に毎日往復3時間以上もかかってしまうようでは大変! 通学だけでヘトヘトになってしまい、学校生活を楽しむことができません。また、震災など予期せぬ事態が起きた場合でも、自宅から近い方が親も子も安心です。

自宅から1時間以内で通える学校を選ぶ

中高生の通学は、片道1時間以内を目安にしておくことをおすすめします。「まだ志望校が決まっていない」、または「そもそもどんな学校があるかもわからない」という場合は、まずは自宅から1時間以内で通える学校に目を向けてみましょう。

2.「偏差値○以下の学校は受けない」など、学校選びの判断基準を決める

中学受験は、高額な塾代がかかったり、家族のサポートが必要だったり、遊びをセーブしたり、小さい頃から続けてきた習い事やスポーツを途中で断念しなければならなかったりと、親も子も何かしらの我慢が強いられます。そうまでして受験をさせるのであれば、「うちはこういう教育方針である」「うちの子はこんな学校で学ばせたい」など、ある程度の基準を決めておくべきです。

わが家の教育方針を夫婦で話し合う

理由は何でもいいのです。「進学実績を重視し、御三家を目指したい」「情操教育を大切にしている学校か、宗教校に入れたい」「受験に縛られず伸び伸び過ごして欲しいから大学付属校に入れたい」「校風も大事だが、進学実績も考え、偏差値45以下の学校は受けない」など、スタート時点ではざっくりとしたもので構いません。

ただ、「まわりが受験をするからうちも」とか「学童保育園に入りそびれてしまったので、とりあえず受験塾に入れてみた」というのはおすすめできません。中学受験では親の価値観が問われます。中学受験を始める前に、わが家の教育方針を夫婦で話し合っておきましょう。

3.第一志望校と併願校は、入試問題の傾向が似ている学校を選ぶ

自宅から1時間以内で通え、わが家の教育方針に当てはまる学校があったら、初めはあまり絞り過ぎず、10校くらい候補を挙げておくといいでしょう。気になる学校があったら、4年生のうちから学校説明会や、文化祭などの学校行事に足を運び、自分の目でその学校を見ておきましょう。そこから志望校を選んでいきます。

入試問題の傾向は学校によってさまざま

いくつかの候補が挙がったら、その学校の入試傾向を見ていきましょう。ひとくちに中学受験といっても、各学校の入試問題の傾向はさまざまです。

例えば、男子御三家の一つである麻布中の入試問題なら、単に知識を答えるだけのものはなく、長文を読み解き、設問に対する自分なりの考えをまとめて、記述する問題が中心になります。また、小学生が知らないような話題や題材が多く出されるため、それをひるまずにまずは解いてみようという好奇心や前向きな気持ちが必要になります。

一方、大学付属校の一つである早稲田実業学校中等部の入試問題では、知識を大量に身につけ、スピーディーに情報を判断し、適確に答える処理能力が求められます。

また慶應付属校の入試問題では、基本的な問題が多い反面、昭和の風物詩や社会のマナーなど生活に関する知識が問われる問題も出題されます。出題にあるような観点について意識している家庭の子供に入学してほしいという学校の思いがあるのです。

それぞれの学校がどんな生徒を求めているのかが入試問題には表れます。そのため、入試問題の傾向は各学校によってさまざまなのです。

志望校選びは、家族でしっかり話し合い、5年生の夏まで決めておこう

中学受験では、第一志望校の他に、万が一ダメだったときの滑り止め校や、本番前の力試しとして受ける肩馴らし校など、4~5校受験するのが一般的です。しかし、偏差値だけを見て、「第一志望は麻布中、第二志望は慶應」と決めてしまう家庭がありますが、双方の入試傾向はまったく異なります。これらをすべてカバーするのは容易なことではなく、ムダに多く勉強をすることになり非効率的です。

併願校の選択は、第一志望の学校と入試問題の傾向が似ているところを選ぶようにしましょう。そのためには、できるだけ早いうちに第一志望校を決めておくことをおすすめします。志望校は5年生の夏を目安に決めておくといいでしょう。そうすれば、6年生になってから、第一志望校とその入試問題が似ている併願校の勉強に絞っていくことができます。


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※記事の内容は執筆時点のものです

西村則康
西村則康 専門家・プロ

プロ家庭教師集団「名門指導会」代表
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員

にしむら のりやす日本初の「塾ソムリエ」としても活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導が評判。暗記や作業だけの無味乾燥な受験学習では効果が上がらないという信念から「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。また、学習指導だけでなく、受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーション術もアドバイスする。「中学受験は日常生活を犠牲にしてまで行うものではない」「主役は塾の先生や家庭教師ではなく、お子さんとご家庭だ」という「生活の延長線上の受験」を理想に掲げている。著書に『中学受験は親が9割』(青春出版社)、『中学受験基本のキ! (日経DUALの本)』(日経BP社)など、20冊を超える。

西村則康公式サイト http://www.nishimuranoriyasu.com/
名門指導会 https://www.meimon.jp/
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」 https://www.e-juken.jp/

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。