連載 中学受験は親と子の協同作業

【6年生の夏休み】中学受験勉強は「得点力を上げる」ことに注力する|中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩 Vol.7

専門家・プロ
2018年8月16日 石渡真由美

6年生の受験生は、午前中は塾の宿題、午後は塾で夏期講習を受け、夜はその日の授業で習ったことを復習するなど、ほぼ一日中勉強をしていることでしょう。

6年生にとって夏休みは、入試前にまとまった時間が確保できる最後のチャンス。この夏、しっかり勉強して、目標につなげていきたいという気持ちはみんな同じです。でも、ここで勉強のやり方を間違えてしまうと、かえって成績が下がってしまうのです。

みんなががんばる夏休み。でも休み明けに成績が落ちてしまう子が多数

6年生の夏ともなると、それまでのんびりしていた子もさすがにそろそろ頑張らないと!と思い始める時期です。塾でも「この夏が勝負!」という雰囲気になるので、みんなががんばるようになります。

その成果を見るのが、8月末または9月初めに行われる組分けテストです。また、9月末には志望校に合格する可能性がどのくらいあるかを測る合否判定テストもあり、この夏の頑張りを試すときがやって来ます。

ところが、夏休み中にあんなにたくさん勉強してきたにも関わらず、夏休み明けのテストで成績が上がるのは全体の約4割。半分近くの子は成績が下がってしまうのです。

その理由は「勉強のやり方を間違えてしまった」からです。

複雑な内容の問題 頭の中を整理するには「書き出すこと」

小3の2月からスタートした受験勉強は、どの塾でも6年生の1学期で一通り習う範囲が終了します。そして6年生の夏休みから、これまで学習してきたことを活用する演習に切り替わります。つまり、「インプットの学習」から「アウトプットの学習」へと変わるのです。

塾で扱うテキストの問題は、知識を覚えることに重点を置いているため、短い文章で構成されています。ところが、実際の入試では、問題文はもっと長く、その内容も複雑です。

例えば算数なら、塾のテキストで扱う問題では、1つか2つの条件が書かれていて、それを踏まえて進めていけば答えを出すことができます。でも、入試問題はさらに条件が複雑になり、パッと見ただけでは気づくことができません。

問題文の条件を見落とさないコツとして、「目で読む」のではなく、たとえ手間がかかっても、メモをしたり、図に描いたりして、「書き出す」ことをおすすめします。そうすれば問題の中身を読み飛ばすことなく、「今、何がわかっているのか」「この問題は何を求めているのか」「答えを出すにはあと何がわかっていないといけないのか」と頭の中の“ごちゃごちゃ”を整理することができます。

夏期講習は演習が中心。一問でも正解を出すことに集中して!

それともう一つ大事なことがあります。それは、問題を解くときの姿勢です。6年生の夏期講習は、演習が中心になります。例えばSAPIXなら、「では、この問題を10分間で解いてみましょう」と難しい問題が3題ほど出されます。夏期講習で扱う問題は、演習といっても今までの復習をするというわけではありません。今まで習った知識を使って、さらにワンランク上の問題を解くための演習です。そのため、ほとんどの子が時間内に全問解くことはできません。3問中1問半くらいできていれば、いいほうでしょう。

そのときに目の前の1問に全力を注ぎましょう。夏休みに取り組む演習問題は、これまでテキストで扱っていたような問題ではなく、複雑な条件が書かれています。それを面倒くさがらずにメモしたり、図に描いたりして条件を整理し、そこからああでもない、こうでもないと手を動かしながら考えていきます。そうやって試行錯誤をしながら、なんとか正解を見つける。その姿勢を身につけることが、この夏の最大の課題です。

一つの問題を解くのに全力を注ぐわけですから、取り組めない問題も出てくるでしょう。でも、今はすべての問題を解き終える必要はありません。目の前の1問に集中し、「必ず正解するぞ!」という気持ちで取り組むことが大事です。それが、結果的に合格点へとつながっていきます。

成績が落ちる子の共通点は「アタフタ学習」

でも、多くの子はそう割り切って取り組むことができません。目の前にある3問を全部解こうとします。しかし、10分という時間内でその3問を解くことは、今の時点では不可能に近い。それを知らず、気持ちばかりが焦り、問題を読み飛ばしてしまうのです。

夏休み明けに成績が落ちてしまう子の共通点は「アタフタ学習」です。そういう子は、「とりあえず全部問題を解かなきゃ!」「とりあえず全部宿題を終わらせなきゃ!」と埋めることだけに気をとられ、じっくり考えることをしません。複雑な条件を書き出す作業を省くので、「今何がわかっているの」や「今何を聞かれているのか」をきちんと理解しないまま、「これは多分あの解き方だろう」とこれまで塾で習ったことや勘を頼りに進めていこうとします。問題をよく読み込まずに解こうするから間違える。すべてがそんな感じだから、得点につながらず、結果、成績が下がってしまうのです。

中学受験6年生の夏の学習のポイントは、勉強の取り組み方を変えること

6年生の夏休みは塾の宿題が多く、それに加えて苦手分野の克服もしていかなければなりません。やることはたくさんありますが、あれもこれもと手を付け過ぎて「アタフタ学習」になってしまう・・・・・・。時間に追われ、気持ちが焦ると、問題文を最後までじっくり読むことができなくなってしまいます。じっくり読まないからミスが出てしまうのです。

そうならないためには、問題を鉛筆や指でなぞりながら丁寧に読み、条件などは書き出して、一息ついてから問題に向かうようにしましょう。今はまだ1問を解くのに時間がかかり、他の問題にまで手がつけられなくても大丈夫。ここでしっかり正しい問題の取り組み方を身につけておけば、秋以降の成績につながっていきます。


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※記事の内容は執筆時点のものです

西村則康
西村則康 専門家・プロ

プロ家庭教師集団「名門指導会」代表
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員

にしむら のりやす日本初の「塾ソムリエ」としても活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導が評判。暗記や作業だけの無味乾燥な受験学習では効果が上がらないという信念から「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。また、学習指導だけでなく、受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーション術もアドバイスする。「中学受験は日常生活を犠牲にしてまで行うものではない」「主役は塾の先生や家庭教師ではなく、お子さんとご家庭だ」という「生活の延長線上の受験」を理想に掲げている。著書に『中学受験は親が9割』(青春出版社)、『中学受験基本のキ! (日経DUALの本)』(日経BP社)など、20冊を超える。

西村則康公式サイト http://www.nishimuranoriyasu.com/
名門指導会 https://www.meimon.jp/
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」 https://www.e-juken.jp/

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。