連載 中学受験は親と子の協同作業

【中学受験】6年生の夏休みは「受験の天王山」! 正しい取捨選択で燃え尽きない夏を|中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩 Vol.5

専門家・プロ
2018年7月26日 石渡真由美

6年生の夏休み前となると、入試本番まで約7カ月。6年生の受験生にとって、勝負の夏が来ました。6年生の夏休みは、受験前最後のまとまった勉強時間が確保できる貴重な期間。この夏の成果が入試の成功にもつながってくるため、どの子もがんばります。でも、ただがむしゃらに勉強をしても、 残念ながら成果は上がりません。6年生の夏の学習で大事なのは、やるべきことを「取捨選択する」ことです。

6年生の夏期講習は演習が中心。目の前の一問を「なんとかして解くぞ!」という集中力が大事

6年生の夏期講習は、演習が中心です。とはいえ、今までやってきたことを復習するのではなく、多くの塾ではこれまでよりワンランク上の問題を解いていきます。各単元を学習していた6年生一学期までは「知識を覚えて解く」というやり方でも、なんとか答えを出すことができたかもしれません。しかし、6年生夏期講習の演習で求められるのは、「これまで頭の中に蓄積してきた知識の中から、この問題を解くための知識を見つけることができますか?」というもので、さまざまな知識を引き出してそれを使いこなす力が試されます。

毎日の講習は、演習と解説のくり返しです。演習は制限時間に対して問題数が多く、ほとんどの子がすべてを終わらせることができません。けれども、解説はすべての問題をさらりと説明しておしまい。そのため多くの子が理解できないままの状態で次に進むことになります。

夏期講習の受け方として望ましいのは、演習時間は「目の前の一問をなんとか正解するぞ!」という気持ちを持って臨むことです。この時間の集中力がとても大事です。全問解き終わることを目的にせず、一問一問手をつけた問題を正解することに頑張ってほしいのです。そのせいで、手をつけられない問題があっても構いません。正解にたどり着くまでに大切なこと、例えば算数では「何を聞かれているのか」を正しく理解すること、「何がわかっているのか」を正しく判断すること、今自分が計算しているのは、何を求めるためなのかを明確にすること、単位の確認を忘れないこと、計算間違いをしないこと、などがあります。一言で表現すると注意力を高めることなのですが、その注意力の一つ一つの要素をみがき上げていくことが、夏期講習の目的になります。6年一学期では、学力を高めるための学習でした。一方、6年の夏期講習からは、これまでに身につけた学力を基礎にして、得点力を高めていく学習にシフトチェンジすることが大切なのです。

6年生の夏休み 最優先すべきことは「△」を「○」にすること

6年生の夏休みは、お盆を除いてほぼ毎日塾に通うことになります。夏期講習中は、その日の授業で習ったことを定着させるために、たくさんの宿題が出ます。小4から小6一学期までの2年半をかけて学習した内容をわずか一ヶ月で総復習するわけですから、くり返しのていねいな説明はありません。当然、翌日にもう一度解説を聞けるわけがありません。1日の授業を多量で多種類の学習をこなし、その日のうちに復習をするように要求されます。

しかし、塾から出される宿題の量があまりにも多いため、多くの子が悲鳴を上げることになります。そこで必要なのが、「宿題の取捨選択」です。多くの親御さんは、宿題は必ずやるべきものと思い込んでいます。でも、その量を見てください。こんなにたくさんの宿題を本当にやり切れるでしょうか?
むしろ無理やり終わらせようとして、うわっつらの学習になってしまう弊害が強くあらわれる子どもの方が多いのです。中学受験の目的は志望校に合格することで、塾の宿題を終わらせることではありません。実は、塾の宿題にはやらなくていいものもたくさん含まれています。

では、何をすべきか?

そこで必要なのが、今理解できていることとできていないことの確認です。私がすすめているのは「○△×学習法」という仕分け方法です。講習の解説の時間に、その日に解いた演習問題に対して、理解できている問題には「○」、なんとなく理解はできたけど、同じような問題が出た時に少し自信がないなぁと思う問題には「△」、先生の解説を聞いてもまったく理解できない問題には「×」をつけます。

「○」はすでに理解できているので宿題をやる必要はありません。「×」は今やっても、自力で解くことはできないので、「今はやらない」選択をします。やるべきことは、「△」を「○」にすることです。夏休みは塾での拘束時間が長く、家で勉強する時間も限られています。すべての宿題を終わらせることを目標にせずに、最短・最速で得点を上げることを目標にしてほしいのです。もうちょっとで確実な得点源となる「△」にこだわっている学習を進めてください。

オプション講座は「受けない」という選択も

6年生の夏休みは、多くの塾ですべての塾生が受ける「夏期講習」とその講習が終わって二学期が始まるまでの間に「オプション講座」が設けられています。オプション講座の内容は、算数や理科の単科講座、弱点補強講座など塾によってさまざまですが、どの塾でも半強制ですが、必ずしも受けなければいけないというものではありません。

これまで順調に進んでいる子なら、知識の定着を確認するために受けてもいいでしょう。でも、夏期講習の復習が終わっていなかったり、弱点対策に手がまわっていない子は、それらの講座を「受けない」選択をし、その期間を苦手分野の克服に充てる方が賢明です。講習中は毎日がハードで、「△」を「○」にできないままの状態の単元もあるでしょう。または、理科・社会の勉強まで手が回らずに来てしまった子もいると思います。そういう子は、講習後の「オプション講座」期間に、家でじっくりとそれをやりましょう。

6年生の夏休みは2つの選択が必要です。一つは学習の方法についてです。「○△×学習法」でやるべき宿題を選択することです。もう一つは講座の選択についてです。ここまで順調に進んでいるかどうかで、オプション講座を「受ける」「受けない」の選択をすることです。

中学受験では塾は不可欠ですが、塾のカリキュラムをすべてこなすことが、必ずしも賢い方法とは言えません。大事なのは、お子さんのその時の状況をしっかり把握し、今やるべきことを選択することです。

体力勝負の夏。親がやるべきことは子供の体調管理

夏休みはとにかく体力勝負です。この夏を乗り切れるかどうかで、志望校を狙えるかどうかが決まって来るといっても過言ではありません。

けれども、無理に頑張りすぎて体調を悪くしてしまっては、元も子もありません。塾は冷房が効いています。外の暑さと教室の冷房の温度差で体調を崩さないように、塾には何か羽織る上着を持たせるなどして体調管理には十分気をつけましょう。また、暑いからといって、冷たいものばかり食べるのもよくありません。

1日の終わりには「頑張ってね」の労いの言葉をかけて

受験生にとって、6年生の夏休みが“受験の天王山”であることは確かです。けれども、ただ闇雲に学習量を増やしても、成績につながるとは限りません。そこで、正しい取捨選択をするようにアドバイスしました。しかし、現実は勉強が計画通りに進まなかったり、思うような成果が出なかったり、思春期の難しさもあり、親子でぶつかってしまったりすることもあるでしょう。

でも、どんなことがあっても忘れてはいけないことがあります。それは、1日の終わりに「今日も頑張ったね」とお子さんに労いの言葉をかけてあげることです。親からすると、「まだまだ足りない」「もう少し気合いを入れて欲しい」など思うことはあるでしょう。

でも、目標のために子どもなりに頑張っている。そのことは認めてあげてねぎらってあげてください。

また、親にしても「小学生の子供にこんなに勉強ばかりさせてかわいそう」と気持ちが揺らぐこともあるでしょう。今は、正しくがんばる方法を学んでいるんだととらえ、今のがんばりがこの先のお子さんの将来の貴重な財産になると信じて応援してあげてください。


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※記事の内容は執筆時点のものです

西村則康
西村則康 専門家・プロ

プロ家庭教師集団「名門指導会」代表
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員

にしむら のりやす日本初の「塾ソムリエ」としても活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導が評判。暗記や作業だけの無味乾燥な受験学習では効果が上がらないという信念から「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。また、学習指導だけでなく、受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーション術もアドバイスする。「中学受験は日常生活を犠牲にしてまで行うものではない」「主役は塾の先生や家庭教師ではなく、お子さんとご家庭だ」という「生活の延長線上の受験」を理想に掲げている。著書に『中学受験は親が9割』(青春出版社)、『中学受験基本のキ! (日経DUALの本)』(日経BP社)など、20冊を超える。

西村則康公式サイト http://www.nishimuranoriyasu.com/
名門指導会 https://www.meimon.jp/
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」 https://www.e-juken.jp/

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。

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