連載 男女別学を考える

学園祭に見る女子校の個性・白百合と富士見|男女別学を考える#1

専門家・プロ
2023年11月17日 杉浦由美子

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男子校、女子校といった男女別学校が共学化する例が続いています。いっぽうで、男女別学だからこそできる教育のよさもあるという声があります。男女別学校の現在と今後を考える新連載のスタートです。

「校風や教育の内容がもっとも分かるのが文化祭」

ある女子受験生のお母様がおっしゃいました。このお母様は仕事で忙しい中、娘さんといろんな女子校の文化祭を訪れました。

この意見に賛同する人は多いでしょう。文化祭では生徒さんの様子を直に見ることができるからです。

ただ、受験生も親御さんも忙しくて、気になる文化祭のすべてに見に行けないでしょう。

一方で、コロナ禍の行動制限が緩和され、今年は久しぶりに文化祭をリアルで開催する学校が多くありました。

そこで「男女別学を考える」連載のまず最初は、自身が中高一貫の女子校出身で『女子校力』(PHP新書)の著者である杉浦由美子さんが女子校の文化祭を訪れ、その様子をレポートします。

想定外に伸び伸びした校風・白百合学園中学高等学校

白百合学園中学高等学校学園祭
(写真提供:白百合学園中学高等学校)
白百合学園中学高等学校学園祭
(写真提供:白百合学園中学高等学校)

「学園祭を訪れて、一番印象が変わったのが白百合です」と多くの受験生ママたちがおっしゃいます。

入り口にはマリア像、廊下には幼きイエスズの像、祈りを捧げるお御堂もあってと、伝統あるカトリック校の風景が拡がっています。

そこにいる生徒さんたちはとにかく礼儀正しいのが特徴です。

書道部で展示物を見て、「とてもお上手ですね」と感想を伝えると、生徒さんが「お褒めの言葉、ありがとうございます」と丁寧に返してくれ、廊下を歩いていてすれ違うと会釈をしてくれる生徒さんもいます。

バザーのコーナーで、会計をしていた卒業生らしき方に「これらは卒業生が作られたものですか」と話しかけると、「さようでございます」と返ってきます。

そういった丁寧さや礼儀正しさが卒業生から在校生に受け継がれている様子が垣間見れます。

そうかといって、生徒さんたちはおとなしいというわけではなく、快活で、伸び伸びとした様子。

この伸び伸び感が多くの受験生ママたちが「印象が変わった」という点です。

今、文化祭は「インスタ映え」が求められますが、白百合は事前申請者以外の撮影は禁止ですから、そういった華やかさはありません。

しかし、部活や委員会の催し以外にも、有志たちがグループを組んでバイオリンや電子ビアノなどでポップスの演奏を披露したり、「脱出ゲーム」や「謎解きゲーム」を企画し一生懸命呼び込みをしたりしていました。

文化祭に積極的に参加したいならそれができるし、そうしないのも自由。

女子校のよさは、異性の目を気にせず個性や力を発揮できることですが、それを強く感じさせる学園祭でした。

生徒主導の洗練された文化祭・富士見中学校高等学校

富士見中学校高等学校学園祭
(写真提供:富士見中学校高等学校)
富士見中学校高等学校学園祭
(写真提供:富士見中学校高等学校)

大手塾の社員や家庭教師の先生方の間でとにかく評判がいい女子校。それが富士見中学高等学校です。

学校に手厳しいことで有名な塾講師も富士見だけは「いい学校です。生徒さんが自立している」と褒めました。

その富士見の文化祭はとにかく「洗練された祭」という印象でした。

女子校の文化祭は飾り付けが華やかですが、その中でもセンスの部分で富士見はダントツでした。

大人がお膳立てをしたものではなく、高校生や中学生たちが自分たちの感覚や工夫で作り上げている印象があります。

まず、エントランスは、女性の横顔の線画と造花で飾られていますが、黄色、ブルー、紫と抑えめの色合いで成熟したデザインでした。

校舎に入っていくと、一階のラウンジと二階をつなぐ大階段も丁寧に装飾が施され圧倒されます。

廊下に飾られる造花もシンプルかつ華やかで、他では見ないクオリティの高さです。文化祭実行委員の装飾部が中心になって二日かけて飾り付けるそうです。

また、私の目を引いたのが、外部の業者が売っているスイーツでした。

カラフルなビーズ状のアイスや切った断面が花柄になっているフルーツサンドなど、思わず買いたくなる素敵な商品が多いことでした。

これは先生たちのセンスではないなと思って尋ねると、生徒たちが見つけてきて交渉し呼んでいるとのこと。 

そして、ファストパスの制度があるのも注目です。

テーマパークで、行列に並ばずに優先的にアトラクションで遊べる制度を文化祭に導入しているのです。

確かに文化祭での悩みとしては見たい催しがあっても長蛇の列で諦めてしまうこともあります。

ファストパスがあれば、それが解決できるのですから。

「どうしたら来場者が楽しめるのか」を生徒たちが自分たちの頭でうんうんと考えて作り上げた文化祭でした。

富士見の教育方針は「生徒の主体性を尊重すること」ですが、それが実現された文化祭でした。

生徒さんたちは元気がよく、積極的な印象です。

訪れたお母様も「生徒さんが率先して動いてくれるので、こちらが戸惑うことがなかったです。明るい雰囲気で私も娘もすっかり気に入ってしまいました」とのことでした。

まとめ

今回は白百合も富士見の文化祭をレポートしました。

この二校に共通するのは「乾いた空気感」です。

中には生徒同士が監視し合うような湿った空気がある学校もありますが、この二校はそういうものがまったく感じられず、生徒さんたちが自由に行動している姿が印象的でした。

※記事の内容は執筆時点のものです

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