学園祭に見る女子校の個性・桜蔭と東洋英和|男女別学を考える#2
「文化祭」は志望校を選ぶにあたって参考になる、もっとも大切なイベントといっていいかもしれません。
なぜならリアルな学校の様子が分かるからです。
今回は、自身も青春時代を女子校で過ごしたノンフィクションライターの杉浦由美子さんが、23区内にある女子校の文化祭の様子を紹介します。
女子校離れがいわれる中で、人気を保っている2校です。やはり両校とも他にはない特徴がありました。
「勉強が好き」な受験生たちが目を輝かせる文化祭・桜蔭中学校
旧校舎の入り口から入ると、木製のレトロな靴箱があり、歴史がある伝統校らしい風景が拡がります。
桜蔭の文化祭の名物は理系の部活の展示が並ぶ、「サイエンスストリート」。生物部、物理部、化学部、天文気象部、数学部が発表をしていました。数学部では算数の問題を配り、それを来場した受験生たちが夢中になって解いています。
40代の桜蔭出身者が「小学生の頃に文化祭で数学部で問題を解いて楽しかった」と話していたのを思い出します。勉強が好きでたまらない生徒たちが集まるのは今も昔も変わらないことようです。社会系の部活では新聞部がクロスワードパズルを配っていて、やはり、受験生たちが目を輝かせながら解き、社会科部では「選挙カーについて」のディベートが繰り広げられ、他にも社会系の論考をする有志の展示もあり、CHATGPTに関する英語のレポートなども置かれていました。
そして、桜蔭の文化祭で注目なのは、アート系の展示の素晴らしさです。
廊下にかかっている書を見て、「プロの作品か?」と思って近づくと、中学生のものと分かって驚きます。
また、写真部はヨーロッパを思わせる風景を撮るというテーマで展示をしていましたが、東京の街並をうまく捉えて撮影していました。構図も実に巧みで10代の作品とは思えません。
最も感心したのは花道部の展示でした。作品ももちろん素晴らしいのですが、横に添えられている説明文が見事としかいいようがありません。視覚的なものを文章で端的に表現するのは実に難しいのですが、それを中高生が成し遂げていることには圧倒されました。
他の女子校のように学校を華やかに飾り付けることはなく、共学や男子校の文化祭のような雰囲気でありながら、他ではない桜蔭らしさが溢れている文化祭でした。
プロテスタント校らしい他者への思いやりに溢れた文化祭・東洋英和女学院中学部
昨今は多くのミッションスクールから宗教色が薄れつつあるのですが、そんな中、プロテスタントの教えを元にした教育を大切に守り続けているのが東洋英和です。
校内にも教育方針である「敬神奉仕」という言葉が書かれた大きな書がいくつも飾られています。
「神を敬い、社会や他者のために尽くしなさい」という教育方針です。
文化祭もそれを体現し、社会活動やボランティア活動の展示が充実していました。
中一の展示では、高齢者施設を訪問したり、障害者の方の講演を聴いたりと、ボランティア活動やそれに結びついた学びが紹介され、実際に障害者がどういう感覚にいるのかを擬似体験できるコーナーもありました。
このような学びの指導には専門的な知識や技術が必要ですが、東洋英和は長い伝統の中でそうした活動を続けてきたため、きちんと教えることができるのです。
他にも有志生徒が総合探究の時間をきっかけに発足させた「コーヒープロジェクト」のカフェもありました。この団体はパナマの先住民族が多く通う学校を支援しているコトワ農園の豆を使ったドリップバックコーヒーを自分たちで製作・販売しています。文化祭ではコーヒープロジェクトの生徒がその豆でコーヒーを淹れて提供していました。
現在、情操教育よりも大学受験対策を優先させる学校も目立ちますが、東洋英和は他者への思いやりや想像力を育てることを重視していることが分かります。実際、ある展示で、生徒さんたちに話かけると、一人が立ち上がって、椅子を私に差し出してくれました。こんな風に生徒さんに配慮をされるのは実は珍しいことです。
ミッションスクールのよさを実感できる文化祭でした。
まとめ
桜蔭の新校舎をはじめて訪れましたが、明るく過ごしやすそうな建物でした。理系の部活に部員が多く、賑わっている雰囲気は桜蔭ならではでした。
一方、東洋英和は伝統あるミッションスクールらしく、講堂で現役生によるパイプオルガンの生演奏も聞けました。東洋英和は卒業生がたくさん訪れていて、母校愛の強さも感じられました。
両校ともに女子校の良さを見ることができました。
※記事の内容は執筆時点のものです
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