中学受験ナビ,低学年のための中学受験レッスン,宮本毅連載
中学受験ノウハウ 連載 低学年のための中学受験レッスン

2024年中学受験(東京)の振り返りと3年後、4年後の中学受験はどうなるか|低学年のための中学受験レッスン#33

専門家・プロ
2024年2月13日 宮本毅

0

2024年入試が終わりました。先日、都立入試の発表も終わり、今年の中学受験も一息ついた頃かと思います。

そこで、今回の記事のテーマに選んだのは「中学受験の現在地と未来図」。

今年の中学受験を振り返るとともに、現・小学1~3年生のお子さんが受験生になる頃の中学受験情勢について、私なりの予想や考えをお伝えしていきましょう。

2024年、過熱する「中学受験熱」は落ち着きを取り戻しはじめた

さて、今年の中学受験はどうだったのでしょうか。

一部には「今年も厳しかった」「今年は例年に輪をかけて厳しかった」といった感想もあるようなのですが、個人的にはここ数年の「中学受験熱」の異常な昂りはおさまり、落ち着きを取り戻しつつあるように感じます。

各学校の応募倍率から読み取れるもの

データの一部のみを取り出せば「相変わらず過熱状態」であるように感じられるかもしれません。

たとえば佼成学園の2/1午前入試の応募倍率は、2022年の2.9倍→2023年の3.7倍→2024年の6.2倍。2/1午後に実施された特別奨学生入試ですと、2022年の20.4倍→2023年の27.1倍→2024年の39.6倍と、今年一気に増加しています。

しかし、数字のみを切り取って「さらに激化」とするのはいささか暴論のように感じます。全体的に見れば佼成学園のように倍率が急増している学校を探す方が難しく、むしろ倍率が下がっている学校も多く発見できます。

やはり昨年人気殺到にも関わらずトラブルが続出し、話題となった芝国際の件が、熱に浮かされていた中学受験業界に冷や水をぶっかけ、みなハッと我に返ったといった感じでしょうか。昨年26.6倍という驚異の倍率をたたき出した芝国際2/1午前入試においても今年は2.0倍と、落ち着いた数値となっています。

高校授業料実質無償化による影響も

公立中についても、2024年は志願者数が落ち着いてきた学校のほうが目につきます。

たとえば桜修館では男子の志願倍率は、2022年の4.2倍→2023年の4.5倍→2024年の3.6倍。女子は2022年の6.2倍→2023年の6.3倍→2024年の5.2倍にまで下がりました。

三鷹では男子2022年の5.7倍→2023年の5.1倍→2024年の4.2倍、女子は2022年の6.1倍→2023年の6.5倍→2024年の5.4倍となっています。

これらの公立中の結果には、今年から東京都でスタートする「高校授業料実質無償化」が少なからず影響していると考えられます。

「楽になった」とまでは言えないが……

こうしてみるとやはり2024年の中学受験は、全体的に「落ち着いていた」と総括することができるでしょう。

もちろん、志願倍率が3倍を超えてくると合格難易度はグッと上がります。午後入試校などを中心に10倍以上のところが散見される様子から鑑みると、決して楽になったわけではないのですが、十数校も受験したのにすべて玉砕してしまうという悲劇は、去年や一昨年に比べて少なかったのではないかと予想されます。

これからの中学受験は「コンパクト化」がカギ

今後の中学入試の展望ですが、情報が錯綜して混乱していた昨年や一昨年に比べて来年以降はより情報がまとまり、かつ情報を受けとる受験生保護者側のネットリテラシーが向上していくことから、より「沈静化」の方向に進むと思われます。

また価値観の多様化によって「偏差値にこだわらない、我が子に合った入試」を目指す保護者の方がより一層増加し、併願パターンも洗練されていくと思います。

私の考える今後のキーワードは「中学受験のコンパクト化」

世の中に溢れかえっている情報の真贋を見極め、我が子の状況を冷静に分析し、そして中学受験そのものを冷静にとらえることが、「中学受験成功」につながります。

本来、中学受験とは、お子さんにあった学校を主体的に探し、選び、合格を目指して努力するなかで成長していくという、前向きなものであるはずです。

「私立にいかないと公立はダメだ!」「受験するなら御三家以上じゃないと意味がない!」などという熾烈な中学受験を過剰に煽り立てるような言説は明確に誤りですが、「中学受験は子どもをダメにする!」「中学受験が家庭を壊す!」というような、中学受験をおもしろおかしく悪者に仕立て上げるような言説もまた、本質からは程遠いといえましょう。

そうした雑音に惑わされて不安になることがなく、塾や家庭教師に無限に「課金」しまくることもなく、子どもに無理を重ねさせるようなこともない、本当に子ども自身のためになる賢くコンパクトな中学受験。

これから、少子化の影響もより強く出てくるはずの中学受験は、こうした理想に少しずつであれ近づいていくのではないでしょうか。

そういう明るい見通しをもつことができた2024年入試でした。

これから中学受験へと踏み出されるみなさん、是非、希望をもって、より良い中学受験体験を模索してみてくださいね。

※記事中の倍率は、日能研のHPから引用しています。「倍率速報」

※記事の内容は執筆時点のものです

0