【理科】日本の絶滅危惧種 ―― 中学入試で定番の3つの出題パターンも紹介
近年の中学入試を分析してみると、理科では「絶滅危惧種」や「外来種」についての出題が目立ちます。
理由はいろいろと考えられますが、たとえば次のようなニュースが報道されると出題テーマとして狙われるケースが多いように思います。
- 漁獲量が減少している「ニホンウナギ」が絶滅危惧種に指定された
- 絶滅危惧種の「クロアシアホウドリ」の生息が伊豆諸島で確認された
- 毒を持っている「ヒアリ」が東京の大井埠頭で見つかった
今回は、日本の絶滅危惧種や絶滅種、外来種についてわかりやすく解説します!
中学入試で定番の3つの出題パターンも紹介しますので、受験対策としてぜひお役立てください。
※ 本記事では、環境省の指定に加え、国際機関の「IUCN」によって指定された絶滅危惧種も紹介しています
Contents
絶滅危惧種の基礎知識
まずは、絶滅危惧種についての基礎知識を3つ紹介します。
- 絶滅危惧種とは
- 絶滅の原因
- 絶滅を防ぐ対策
絶滅危惧種とは
絶滅危惧種とは、その名のとおり「絶滅が危惧される種」のこと。
地球上から完全にいなくなってしまう危険性がある動物や植物の種類、という意味です。
日本では、環境省が絶滅危惧種を公開しています(レッドリスト/レッドデータブック)。
その危険度に応じていくつかに分類しており、たとえば絶滅の危機に特に瀕(ひん)している動植物は「絶滅危惧I類」として分類しています。
レッドリストのカテゴリー(一部)
絶滅危惧I類 …… 絶滅の危機に瀕している
絶滅危惧IA類 …… 近い将来に絶滅する可能性がある
絶滅危惧IB類 …… IA類に続き、近い将来に絶滅する可能性がある
絶滅危惧II類 …… 絶滅の危険が増大している
▼日本のレッドデータ検索システム
http://jpnrdb.com/database/species/search/
絶滅危惧種には膨大な数の動植物が指定されているので、すべてを覚えるのはほぼ不可能です。
とはいえ中学入試では出題されているので、まずは代表的な種だけ覚えておきましょう。詳しくは、この先の「具体的な生物名 ―― 5種類ずつ押さえよう!」のなかで紹介しています。
絶滅の原因
動植物が絶滅に向かってしまう原因はなんだと思いますか?
これも入試で問われるので、次の3つの原因を押さえておきましょう。
- 乱獲・密猟
- 環境破壊
- 外来種
原因1:乱獲・密猟
人間によって大量に捕まえられたり、殺されたりすることでその種が絶滅してしまうケースは少なくありません。
例:ニホンオオカミ(絶滅種)
日本に生息していたが、現在では絶滅している。狂犬病の流行により、伝染病を恐れた人間によって大量に駆除されたことが要因のひとつ
原因2:環境破壊
森林伐採や温暖化などによって環境が壊されたことで住むところがなくなり、絶滅してしまう……という例も見られます。
例:ホッキョクグマ(絶滅危惧種)
北極に生息するクマ。温暖化によって北極の氷が溶け、住むところが減少していることが要因のひとつ
原因3:外来種
もともとその地域にいなかった生物(外来種)が持ち込まれた結果、その地域に生息していた生物(在来種)が食べられてしまう、という例も見られます。
例:ヤンバルクイナ(絶滅危惧種)
沖縄に生息している鳥。外からやってきたマングースに食べられてしまったことが主な要因で数が減っている
絶滅に対する対策
世界では「絶滅危惧種を絶滅から守ろう!」という動きがあります。
私たちが住んでいる地球は、いろいろな生物がいることでバランスが保たれています。しかし、そのバランスが崩れたり偏ったりすると自然が失われ、最終的には人間の生活にも影響を及ぼしてしまいます。
だからこそ、絶滅危惧種を守る、という動きが世界中で活発におこなわれているのです。
絶滅危惧種を守る
=生態系を維持することにつながる
=人間の生活を守ることにつながる
絶滅危惧種を守る代表的な方法としては、次の3つが挙げられます。
- 個体の保護と繁殖
- 生息地の保護
- 外来種の排除
個体の保護と繁殖
個体の保護と繁殖とは、絶滅しそうな動植物を人間の手で育てて、増やしていく方法です。
たとえば絶滅危惧種の「トキ」は、絶滅を防ぐために人間の手で育て、繁殖させる試みがなされました。
数が増えてきたら自然界に戻すことになっていたため、最終的には、新潟県の佐渡で育てられていた10羽のトキが2008年に放鳥されています。
生息地の保護
生息地の保護とは、動植物が生息する場所の自然を壊さないようにする、という方法です。
環境省による「生息地等保護区の指定」などが当てはまります。
例:アベサンショウウオ生息地保護区(善王寺長岡)
京都にある生息地保護区。絶滅危惧種の「アベサンショウウオ」が生活できる環境を維持するために指定され、保護区内では人間の活動がいくつか禁止されている
外来種の排除
外来種の排除とは、絶滅の大きな要因になり得る外来種に対する対策です。外来種を持ち込んだり、捨てたりすることを禁止する方法ですね。
たとえば外来種の「アライグマ」は在来種を食べてしまうことがあるため、自治体などが主導となって“持ち込まない・捨てない”といった対策が取られています。
また、すでに放たれてしまったアライグマを捕まえるための対策も講じられています。
具体的な生物名 ―― 5種類ずつ押さえよう!
絶滅危惧種、絶滅種、外来種について、代表的な5種類をピックアップして紹介します。
それぞれ膨大な数が指定されているため、まずは代表的なものを押さえたうえで、覚える数を少しずつ増やしていきましょう。
絶滅危惧種
まずは、代表的な絶滅危惧種を5つ紹介します。
イリオモテヤマネコ
イリオモテヤマネコは、沖縄県の西表島(いりおもてじま)に生息しているネコ科の動物です。
西表島の開発によって生息地が少なくなっていることに加え、交通事故で減少していることもあり、絶滅危惧種に指定されています。
ジュゴン
ジュゴンは、沖縄県の海に生息している哺乳類です。
数が減ってしまった大きな要因は、19世紀末から20世紀初頭にかけておこなわれた乱獲といわれています。
コウノトリ
コウノトリは、主に兵庫県に生息している大きな鳥です。
数が減ってしまった大きな要因は、人間による開発によってコウノトリの餌(えさ)がなくなってしまったから、といわれています。
ヤンバルクイナ
ヤンバルクイナは、沖縄県に生息している“飛べない鳥”です。
外来種によってその数が減ってしまいましたが、なかでも沖縄に持ち込まれたマングースに食べられてしまったことが大きな要因とされています。
トキ
トキは、かつてはいたるところに生息していた大型の鳥です。
絶滅危惧種に指定された理由はいくつかありますが、人間による乱獲や森林伐採によって生息地が減ったことが大きな要因とされています。
トキは絶滅したのでは?
日本に生息していたトキは、“最後のトキ”が2003年に死んだことで絶滅しました。ただしその後、日本のトキと同じ種のトキを中国から輸入し、人の手で育てて繁殖に成功したことで、現在は新潟県の佐渡などに生息しています
絶滅種
次は、代表的な絶滅種を5つ紹介します。
ニホンカワウソ
ニホンカワウソは、日本に生息していたカワウソです。
1944年に目撃されて以降、その姿は確認されておらず、2012年に絶滅種に指定されました。
絶滅の原因は、その毛皮に需要があったために乱獲されたこと、そして人間の開発によって住む場所がなくなったことです。
ニホンオオカミ
ニホンオオカミは、日本に生息していたオオカミです。地域によっては1880年代に絶滅したと考えられています。
絶滅の原因はいくつかありますが、そのひとつが人間による駆除です。伝染病を恐れた人間によってたくさん駆除されたことで、絶滅へと追い込まれていきました。
キタタキ
キタタキは、日本の対馬(つしま)に生息していたキツツキ科の鳥です。1920年頃に絶滅したとされています。
絶滅の大きな要因は、森林伐採です。もともと数が少なかった貴重な鳥でしたが、森林伐採によって住処(すみか)を奪われてしまいました。
オガサワラガビチョウ
オガサワラガビチョウは、小笠原諸島に生息していた鳥です。1828年以降、発見された記録が途絶えているため、いまでは絶滅したとされています。
絶滅の原因は不明ですが、森林伐採や狩猟が要因と考えられています。
スジゲンゴロウ
スジゲンゴロウは、日本各地に生息していた昆虫です。
カブトムシと同じ甲虫の仲間で、水の中に生息していた「水生昆虫」です。
1970年代に絶滅したとされ、宅地開発や、水田に使われていた強い農薬が原因といわれています。
外来種
最後は、代表的な外来種を5つ紹介します。
マングース
マングースは、肉食の哺乳類です。
もともとの生息地はインドですが、ハブの駆除などを目的に沖縄に持ち込まれた結果、在来種のヤンバルクイナを食べてしまうといった被害が出てしまいました。
アライグマ
アライグマは、北アメリカを生息地とする動物です。
ペットにする目的で日本に持ち込まれましたが、農作物を食い荒らしてしまうなどの被害が出ました。
ブラックバス
ブラックバスは、北アメリカに生息している魚です。
釣りなどがさらに楽しくなるように日本の湖に放流されましたが、捕食によって在来種のアユやマスなどの数が減ってしまいました。
アカミミガメ
アカミミガメ(ミシシッピアカミミガメ)は、北アメリカに生息しているカメです。「ミドリガメ」としても知られています。
ペット用として日本に持ち込まれましたが、在来種に影響を与えただけでなく、レンコンなどの農作物にも被害が出てしまいました。
アメリカザリガニ
アメリカザリガニは、その名のとおり北アメリカに生息しているザリガニです。
食用ウシガエルの餌として日本に持ち込まれましたが、いまでは全国に生息地を広げ、その土地の在来種を食べてしまうという被害が出ています。
中学入試の出題パターン
絶滅危惧種や絶滅種、外来種については、中学入試でもよく出題されています。
大きく分けると、次の3つのパターンで出題されていますね。
- 生物の名前を答えさせる問題
- 絶滅の危機に瀕している原因を答えさせる問題
- 絶滅から守るための対策を考えさせる問題
出題パターン1:生物の名前を答えさせる問題
<例題1>
日本の固有種のうち、絶滅してしまったと考えられる動物は環境省のレッドデータブックに掲載されています。
絶滅したとされる動物を次のア~オから1つ選び、記号で答えなさい。
ア:エゾヒグマ
イ:エゾシカ
ウ:ニホンオオカミ
エ:ニホンリス
オ:ニホンマムシ
「絶滅種の生物名」を答えさせる問題ですね。
特にシンプルな問題で、多くの中学校で出題されています。入試では絶滅種だけでなく、絶滅危惧種を問う問題も出題されます。
答え:ウ(ニホンオオカミ)
出題パターン2:絶滅の危機に瀕している原因を答えさせる問題
<例題2>
沖縄にはヤンバルクイナという鳥がいます。
この鳥は飛ぶことができず、世界で沖縄だけに生息している固有種です。しかしこのヤンバルクイナが、ある外来生物に食べられてしまい、数が減っていることが問題となっています。
この問題を引き起こしている外来生物を次のア~エから1つ選び、記号で答えなさい。
ア:ハブ
イ:マングース
ウ:ベンガルトラ
エ:キタキツネ
「絶滅の危機にさらされている原因」を答えさせる問題ですね。
この例題のように、「外来種の名前」を答えることに行き着く問題が多く出題されています。
答え:イ(マングース)
出題パターン3: 絶滅から守るための対策を考えさせる問題
<例題3>
天然ウナギの数を再び増やすために、今後するべき努力として適当でない選択肢を次のア~オから1つ選び、記号で答えなさい。
ア:シラスウナギをいけすで大量に育て、成熟させた後に海に放流する
イ:ウナギのえさになる生物が住みやすい川や湖を維持する
ウ:河川の工事の際に、ウナギが川をさかのぼるための通り道を残す
エ:シラスウナギを捕まえる量の上限を決めて、養殖する量を減らす
オ:ウナギが健康に育つように、河川や湖にゴミを捨てないようにする
「絶滅危惧種を守る対策」を選ばせる問題ですね。
先ほど「絶滅に対する対策」で紹介した3つの対策を押さえておけば、適当ではない選択肢を選べるでしょう。
答え:エ
※「養殖の量を減らす」ことは保護とはいえないため
まとめ
今回は、中学入試で出題が目立つ「絶滅危惧種」について解説しました。
ポイントを改めて整理すると、次のとおりです。
入試で着実に点数を取るためにも、絶滅の危機に瀕している3つの原因や、絶滅から守るための3つの対策についても押さえておきましょう。
絶滅危惧種・絶滅種・外来種は無数に存在し、すべてを暗記することはほぼ不可能です。そのため、まずは代表的な5種を押さえたあとに、覚える数を広げてみてくださいね。
※記事の内容は執筆時点のものです
とじる
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