中学受験ノウハウ 連載 塾のトリセツ

一番下のクラスにいる意味はある? 通塾を続けたほうが良いケースとは│中学受験塾のトリセツ#39

2024年6月04日 天海ハルカ

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気づけば我が子が塾で一番下のクラスに……。

すぐに上のクラスへ上がれれば良いのですが、なかなか上がれずそのまま定位置になってしまうこともありますよね。

一番下のクラスでそのまま頑張るか、それとも転塾を考えるか。

難しい選択ですが、私はまずそのまま一番下のクラスで頑張ってみてほしいと思います。

そのうえで、子どもの様子に気になる部分が出てきたら転塾を検討してみても良いでしょう。

今回は、一番下のクラスのままでも中学受験塾を続けたほうが良いケースと、転塾を検討しても良いケースについてお話しします。

一番下のクラスでも続けたほうがいいケース

一番下のクラスでも、子ども自身が前向きに勉強ができるならそのまま続けたほうが良いでしょう。

慣れた環境がプラスに働く

多くの大手塾では、上のクラスでも下のクラスでも、テキストは変わりません。

進度やスピードは変わるかもしれませんが、カリキュラムは同じです。

しかし、転塾するとカリキュラムが変わり、重要な内容を授業で学べなかったり、すでに勉強した内容をもう一度授業で学び直したりする可能性があります。

大事な単元が授業で受けられないままになってしまうと困りますよね。

転塾でカリキュラムが変わる場合

今の授業にある程度ついていけているなら、転塾せずそのまま続けたほうが抜けや重複なしで勉強が進められます。

環境が変わらないというのは、親も含めて精神的な安定にもつながります。

転塾するとカリキュラムだけではなく、授業の曜日や時間、予習復習のペースなどを新たに組み替えることになります。

慣れている環境に追加で勉強を組み込むほうが、精神的にも肉体的にもストレスが少なくて済むというメリットがあります。

塾へのプライドで頑張れる

子どもによっては、どのクラスにいるかより、どの塾にいるかにプライドをもっている場合もあります。

とくに入塾テストを設けている塾だと、たとえ一番下のクラスといっても、そこに在籍しているだけで「入塾テストに合格するレベルに到達している」という子ども社会におけるステータスになっていることがあるんですよね。

どの塾に在籍しているかを、学校の友達に言っている子にとってはとくにデリケートな問題です。

転塾がきっかけで勉強への意欲がなくなってしまうリスクがあります。

子どもに塾へのプライドがあるなら、転塾せずそのままのほうが頑張れるでしょう。

基礎力が身についていない

基礎というと「必要だけど受験には足りない」というイメージがあり、軽視してしまう子どもも少なくありません。

国語で言えば、「漢字ができても受験でそれが出るとは限らない」などと言って、漢字より記述の勉強を優先したがる子どもは多いです。

しかし、実際は、漢字が苦手な子は言葉の意味がわからず、読解にも支障が出てしまうということが起こります。

一番下のクラスであるということは、基礎がしっかり身についていない可能性が高いと考えられます。

であれば、基礎をメインにした授業となるクラスにいる意味は大きいでしょう。

子どもにとって「基礎ができるだけで点数がもらえる、褒められる」環境は、基礎力を磨くポジティブな理由にもなりえます。

当面の目標は今のクラスから、ひとつ上へ行くこと。どんな中学校でも基礎力は必須で、直接点数にも結びつきます。

基礎力があればこそ、応用問題への対応や学校別の対策も身につけられるので、一番下のクラスでもちゃんと入試のための勉強になっているのです。

転塾を検討してみても良いケース

転塾を検討してみても良いのは、一番下のクラスであることが言い訳になってしまう場合です。

「どうせ一番下」と自分を低く見積もってしまう

「自分は一番下のクラスである」ことを意識しすぎると、子どもによっては向上心がくもってしまうこともあります。

「どうせ一番下だから」「一番下のクラスだから無理だよ」という発言をする子は少なくありません。

点数や偏差値が低くて当然と思ってしまうと、勉強しても上がらないからやる気が出ない……と悪循環に陥ってしまいます。

クラスのレベルに縛られてしまうのはもったいないので、一番下という点に意識を持たせないようにしてあげたいですね。

たとえば「一番下のクラスなんだから勉強時間を増やそう」ではなく、「算数が苦手みたいだから算数の勉強時間を増やそう」にするなど声かけのフレーズに気を配ります。

子どもは大人の言葉に影響されやすく、とくにネガティブなフレーズは前後関係に関わらず印象に残ってしまうようです。

実際に、我が娘もネガティブな言葉は妙によく記憶しているんですよね。その割にプラスの言葉はあまり記憶にないようで、「ママはいっつも嫌なことばかり言う!」と叫ばれることも。

勉強が足りないと感じても、「一番下のクラス」というフレーズで声がけすることは避けたいものです。

同じように、本人が「一番下」を理由にした場合も、「一番下というのは関係ないよ」と訂正してあげてください。

それでも「一番下」という意識が強い場合は、「一番下」にはならない塾を探してみるのも良いかもしれませんね。

下を見て安心してしまう

一番下のクラスにはいろいろな子がいます。

勉強しているのになかなか成績が上がらない子がいる一方で、残念ながら勉強意欲が低い子もいます。

予習復習をしていなかったり授業中に集中力を欠いたりする子の割合は、上位クラスより高いでしょう。

そんななかでも頑張れる子もいますが、自分より下を見て安心してしまったら困りますよね。

「〇〇くんは寝てるけど私は起きて授業を聞いてるから頑張っているよ」というような自信の持ち方は、あまり好ましいとは言えません。

「やるべきことはやる」「勉強やテストは集中する」といった基本的なことを、「やって当然」という気持ちになってほしいものです。

自分より下がいることに安心して意欲が下がってしまうようなら、環境を変えるための転塾も選択肢に入ります。

子どもの様子をよく見て考えよう

カリキュラムなどを考えると、私はクラスを理由に転塾することはおすすめしません。

まずはひとつ上のクラスを目標に、慣れた環境にもう一歩努力を加えてコツコツと勉強を進めてほしいと考えます。

ただし、一番下のクラスを理由に勉強への意欲が薄れるようなら、環境を大きく変えるために転塾を視野に入れるのもひとつの手です。

どちらにせよ、まずは子どもの様子をよく見ることが重要ですね。

今の環境をどう思っているのか、勉強への意欲はあるか、前向きに頑張れそうか……。

「一番下のクラスで勉強する意味はない」なんてことはありません。

「クラスがどこか」ではなく、「子どもがより前向きに勉強できる環境はどこか」で考えてあげたいものですね。

 

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※記事の内容は執筆時点のものです

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