中堅校を目指したい! 気を付けるべきことは?|低学年のための中学受験レッスン#40
2024年の中学入試振り返りに関して、ネット上では「中堅校が躍進」とか「中堅校が伸びた」といった記事がたくさん出ておりました。
私個人の感想ですが、中堅校が躍進しているのは何も今に始まった話ではなくて、たとえば今やトップ校の一角である広尾学園だって、もともとは順心女子学園という中堅どころの学校でした。
とはいえ、中堅校に陽の目が当たるのはとてもよい傾向ですので、今回はココにスポットライトを当ててお話をしてみたいと思います。
そもそも「中堅校」ってなんじゃ?
では、そもそも中堅校とはいったいどのような学校を指すのでしょうか?
ぼんやりと「偏差値50前後」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるでしょうが、実はこれについては、なかなか線引きするのが難しいところなのです。
同じ学校でも、首都模試の偏差値、四谷大塚の偏差値、SAPIXの偏差値では全然値が違いますから。
たとえば男子難関校の一角である芝中学(首都圏模試80%偏差値70)であっても、SAPIXの80%偏差値では49となっています。
芝中に合格する難易度はかなり高く、決して「中堅校」とは言えないと思いますが、サピックス判断だと中堅校扱いとなってしまうわけですね。
私としては、中堅校とは、首都圏模試の80%偏差値表における48~58のゾーンに入っている学校と考えています。
四谷大塚の合不合判定の80%偏差値で45~55のゾーンに入っている学校を「中堅校」と呼ぶのが一般的と反論される方もいらっしゃるとは思いますが、そうすると巣鴨(55)や城北(55)、三田国際中(男子54、女子56)までもが中堅校のくくりとなってしまいます。
いずれも、多くの受験生がぜひにと熱望する人気校で合格はなかなか難しく、それはさすがに違和感があるためです。
また、多くの私立中学で入試機会を複数回設けておりますが、メインの入試日程(定員が一番多い入試日)が首都圏模試80%偏差値48~58に入っていても、特進クラス入試や午後入試が上記のゾーンに入っていない学校は、「中堅校」のくくりからは除外したほうがいいと考えています。
いわゆる「中堅校」の特徴として重要なポイントは、トップ校や上位校よりも受かりやすいこと、というものが挙げられると思います。
多くの私立中学では午後入試や2/2以降の入試では、2/1よりも倍率が上がりやすい傾向があるため、メインの入試日以外の難度が上がってしまっています。
それでもなお「比較的受かりやすい」といえるかどうか、これが「中堅校」のひとつの判断基準になると思われるからです。
中堅校を目指すなら何をどう勉強させたらいいの?
では具体的に「中堅校」を目指すには、どんな学習をさせたらよいのでしょうか?
多くの中堅校では、難関校に見られるような難度の高い入試問題は出題されません。
最近ではそうした難度の高い入試問題に対応するために、塾用テキストが改訂されて内容的に難しくなっている部分もありますが、中堅校を目指すのであれば、そこまでの学習は必要ないでしょう。
テキストの基本問題を中心に演習しておけば、中堅校の入試には十分対応できます。応用的な内容はすべてカットしてしまって構いません。
一方で、最近では中学受験そのものが変質してきており、データや資料が与えられてそこから考察させるタイプの問題が増えてきました。
たとえば、宝仙理数インターの2023年度入試では、社会で次のような問題が出題されました。
1978年7月30日、沖縄県の本土復帰に伴い、車の右側通行が左側通行に変更されましたが、これによって当時の沖縄では、特に路線バスにおいて大きな混乱が生じました。その理由を一つあげ、説明せよ(本文に合わせて問題を一部改変しています)
ここでは、「バスの入り口は片側にしかついていないから、右側通行が左側通行に変わると乗り降りできなくなっちゃうだろうな」、という点に考えを至らせることができるかが着目されています。
この問題は実は私立小学校入試では定番問題となっているのですが、知識として持っていない場合にはトンチを利かさないとこたえが導けないタイプの問題となっています。塾の授業でも扱いませんしね。
では、こうした問題に対応できる子に育てるにはいったいどうしたら良いのでしょうか。
パズル本や頭の体操本などを愛読し、遊びの中で「考える」ことを習慣づけるようにしてください。この「常に考える」という力は、幼少期に身につけさせておくのが楽です。
小学校高学年になってから「考えなさい」といってもなかなかできるようにならないものです。またニュースなどを一緒に見て、世の中のことに興味関心を抱かせるのも大切です。
2023年には、次のような問題が多くの中学で出題されました。
2022年に小麦の価格が急騰した理由を答えよ
ウクライナでの小麦の生産量が多く、ロシアとウクライナで戦争が起こったことを知っている生徒は、みな正解できたと思います。
普段から時事ネタに興味を持って考えてもらうのも大切です。
ところで「中堅校」って呼び方失礼じゃない?
私は以前より一貫して、「偏差値というたった一つの物差しだけで学校の価値をはかるのは不備がある」という立場をとっていました。
ですから、偏差値以外の部分、たとえば語学留学のチャンスがどれくらいあるかとか、高大連携を推し進め新たな教育形態を模索しているかとか、複数の尺度で様々な学校にスポットが当てられ、保護者にとって「通ってもよい」「通わせたい」と思える学校の選択肢が増えてきたことをとても喜ばしく思っています。
しかし一方で、塾側やメディアが相変わらず「上位校」とか「中堅校」といった呼び方で私立中学を色分けしていることには、強い違和感を覚えます。
選ぶ側、すなわち生徒本人や保護者の皆さんは少しずつ意識を変えて、「こんな中学受験のゴールがあってもいいよね」と思い始めているにもかかわらず、塾業界の側は相変わらず旧態依然とした価値観を変質できずにいる。
古くて時代遅れの体質が根強く残っている証拠だと思います。
価値観が多様化した現代、偏差値や大学進学実績だけではない別の尺度で学校選びをし、深夜までへとへとになりながら勉強して心身ともに疲れ果てることなく、心に余裕を持った中学受験の道を選ぶ受験生が、今後も増えていくことを私は切に願っています。
私立中学の側も「うちは伸び伸びと部活にいそしめます」とか「生徒たちがみな和気あいあいとしていて学校生活を送りやすいです」とか「学習カリキュラムをどんどん進めず、高校の範囲を中学のうちに終わらせるようなことはしません」とか、そんな特徴を売りにしてみてもいいんじゃないかなと思います。
これをお読みの皆さんが育てているのは、未来を担う子どもたちです。
保護者の皆さんもぜひ、古い価値観にとらわれることなく、わが子に本当にあった学校とはどこなのか、中学受験をわが子にとって有意義な経験とすためにはどういう選択をすべきなのかを、真摯に考え続けていただけたらと思います。
※記事の内容は執筆時点のものです
とじる
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