中学受験ノウハウ 連載 公立中高一貫校合格への道

「魔の秋」回避!2つの目標設定|公立中高一貫校合格への道#14

2024年7月31日 ケイティ

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都立中学校など公立の中高一貫校には、いわゆる「入学試験」は存在しません。代わりに行われる「適性検査」を受(「受」ではなく)することで、6年間の一貫教育に「適性」があるかどうかを見られます。本連載では、公立中高一貫校を目指すうえで踏まえておくべきことは何なのか、私立受験とは具体的に何がどうちがうのか、公立中高一貫校合格アドバイザーのケイティさんにうかがいます。

こんにちは!公立中高一貫校合格アドバイザーの、ケイティです。公立中高一貫校合格を目指す、保護者のための「ケイティサロン」を主宰しています。

突然ですが、「魔の秋」という言葉を聞いたことがありますか?

例年、秋は学校行事も多く、委員会活動も忙しくなる時期です。

そんな中、公立中高一貫校を受検する子達は「報告書」という非常に厄介な存在を意識せざるを得ないため、学校のテストはもちろん、授業中も全ての科目で気が抜けず、その他行事におけるまとめ役にも励み、下校後は、掴みどころのない適性型の対策に追われ、毎週末のように模試会場へ足を運び……という、心身共に大きな負担を抱えることになります。

覚えれば解ける、というような問題が適性検査にはほぼ無いため、頑張った時間に比例して伸びるわけではありませんし、ストレスや疲れが蓄積してスランプを起こしたり、体調不良になったりと、親子共に苦しい日々が数週間、数か月と続くことから、このような時期を「魔の秋」というふうに呼んでいます。

先輩受検生たちも乗り越えてきた時期ではありますが、今のうちに適切な目標設定をしつつ、柔軟な声がけをすることによって、少しでも気持ちに余裕をもって頂けるよう、今回は目標設定のポイントについてご紹介したいと思います。

【目標設定①】数的目標

まず、避けられないのが数的な目標です。

数的目標とは、「総合偏差値〇以上」「全受検者数の中で上位〇%以内」「平均点に対して+〇%以上」「作文は60点中〇点以上」など、数値で測ることのできる基準に対するものを指します。

夏休み明け、9月以降は模擬試験の回数も多くなりますが、「とにかく場慣れのために受ける」ということも大事ではあるものの、目標を設定しておくことで、夏の頑張りに拍車をかけることができます。

受検本番は数か月先だと考え、まだまだ油断も楽観もあるのが小学生ですが、公立中高一貫校は倍率も高く、狭き門だからこそ、夏明けからは適度な緊張感を持った学習が望まれます。

1か月~1か月半ごとに数的な目標設定を行って、スモールステップで達成していくようにしましょう。

目安とすべき目標数値は受検生本人のレベルや対策状況にもよるので一概には言えませんが、

・受検学年(首都圏では、小学6年生になる年の2月から「受検学年」という扱いになることが一般的です)になってから受けた模試の結果から乖離しすぎない

・目標はひとつではなく、細かく複数設定する

この2点をふまえ、設定すると良いでしょう。

たとえば6月に受けた模試で、偏差値が40台後半で、志望校の偏差値が60の場合、9月の模試の目標偏差値を「60」とするのは無理があります。

(9月以降、ライバルもどんどん手ごわくなりますし、模試の難易度そのものも上がっています)

9月の模試は偏差値で45、10月の模試は50、というふうに、徐々に上げていく設定にしましょう。

また、お子さんの性格、特性によって、「確実にクリアできる目標」の方が励みになるような子もいれば、多少の発破はかけないと到達できない目標の方がやる気がでる子もいれば、さまざまですよね。

目標を確実に達成することで前向きに頑張れる子、ギリギリ手が届きそうな目標に対して悔しさをバネに奮起できる子、さまざまですので、性格に合わせた設定をしたいところではありますが、どうしても心身の疲労が蓄積しやすい時期だからこそ、基本的には高すぎない目標を複数設定しておくことを勧めます。

「〇番以内」というようなひとつだけの目標を決めていた場合、万が一、全くかすりもしない結果になった場合、ただでさえ心が折れやすい魔の秋においては、モチベーションを再燃させるために数週間、場合によっては数か月かかることもあるのです。

達成可能な目標を複数設定しておいて、「いくつかはクリアできた」と手ごたえを感じてもらうような「作戦」は大いにアリだと考えています。

そして、具体的な数的目標としておススメしたいのは、

・総合偏差値

・全体の受検者の中で、上位何分の1にいるか

・正答率が30%以上の問題で、0点(完全失点)の問題が何問あるか

・誤字脱字による減点が、何か所あるか

この4つです。

模試を受けるとき、2つもしくは3つの検査で構成されていますが、ひとつずつの偏差値で見ると、あまりにアップダウンが激しいため、必要以上に低く感じて焦ってしまったり、高く見えて油断に繋がったりしてしまいます。

範囲も分野もあってないような適性型だからこそ、たとえば作文の検査で偏差値が55取れたと思ったら次の模試では30台に急降下、またはその逆も、普通に起こります。

ひとつの検査の偏差値で目標を設定するのではなく、適性検査Ⅰ、Ⅱ、(場合によってはⅢ)までの総合の偏差値を目標に使うようにしてください。

また、おススメなのが、「上位何分の1」という指標です。(「何」の部分には、2以上の整数を入れます)

たとえば、受けた模試には400人の受検者がいたとして、順位が180位だとすると、上位2分の1にはいますが、上位3分の1には入っていませんね。このような立ち位置の場合、次の模試の目標として、「受検者の中で上位3分の1」を設定することになります。

倍率が4倍の学校に合格するためには受検者の中で上位4分の1には入っていなければいけませんよね。志望校の受検倍率を元に、「上位〇分の1」の階段を徐々に上がっていくイメージで設定をしていきましょう。

さらに、細かいですが正答率も参考にしておきましょう。公立中高一貫校の多くは倍率が少なくとも3倍を超えていますし、正答率が「30%以上」の問題であれば、「もしその問題が本番で出れば、合格者は確実に取っているレベルの問題」と考えることができます

模試によっては、問題ごとの細かな正答率が出ないところもあるかもしれませんが、結果表に記載がある場合は、正答率にも注目してくださいね。

最後に、誤字脱字の数です。私は毎月大量の添削を行っていますが、誤字脱字がどうしても防ぎきれない子と、きれいに修正し切れる子と、両極端だと感じています。

たとえば社会分野の記述問題で配点が15点の問題があるとして、平均は6点だとします。仮に、平均点レベルの記述が書けていたとしても、数か所誤字があれば、それで点が残らなくなってしまうのです。

誤字脱字でこれまでの模試において複数回減点された経験がある場合は、誤字脱字の数(たとえば検査ひとつにつき2つ以内)を目標のひとつとして据えておくのも良い防止策となります。

【目標設定②】習慣目標

数的目標とは別に、決めておきたいのが「習慣」の目標です。

たとえば、娯楽について。

受検生と話をしていると、5月頃からはもうゲーム等封印した、という子が多いのですが、夏休み開始を期に少しルールが曖昧になっていたり、封印していたはずのものが解禁になったりしている場合もあると思います。

突然、息抜きのツールを取り上げたりガラッと生活リズムを変えたりすると、不満や不調の種になるので、8月中には前もって話し合いをしておいて、親子でお互いに納得のいく「9月以降の生活」の目標を立てておくと良いでしょう。

あれもこれも我慢、という意味ではなく、本当の意味で、自分でもかっこいいと思える「本気の受検生」に変身するために、今の生活を振り返ったときに改善できそうなところはないか、明らかにもったいない時間の使い方をしているところはないか、書き出してみてください。

この習慣目標については、数的目標以上に、お子さん本人を巻き込んで「設定させる」ことが望ましいです。行動するのは本人ですし、本人が前向きに計画したことでないと、継続が難しいからです。

これまで、公立中高一貫校に合格したご家庭の体験談をもとに考えると、具体的には、

・テレビやゲーム等、際限なく続いてしまうような娯楽は、基本、距離を置くか、もしくは厳密にルールを決める

・体質的に朝がどうしても苦手ではない限り、朝6時台から計算トレーニングやドリルなど小一時間の学習時間を取る

・やるべきことを取り掛かるまでの「だらだら時間」は封印して、メリハリをつける

・塾から帰ったら、宿題とは別に、「10分復習」の時間を取る

・記述は、方眼ノートのマス目にぶつからないよう意識して、消し漏れや漢字の二度書きは封印!

このように、日々の生活や学習姿勢における「習慣」部分の目標を設定します。

あまり多すぎると収拾がつかなくなるので、2つか3つにしておく方がよいでしょう。

また、せっかく最初は気分よく決めたことを継続できていても、1週間、10日ほどで次第に元通りになってしまうこともあるので、習慣目標については2週間おきに振り返り・必要に応じて再設定をすることをおススメします。

その2週間の範囲で達成ができれば、ご褒美タイムを設けるなど、継続することが楽しめるような施策、作戦も有効です。

まとめ

何かとスランプが起きやすい「魔の秋」を少しでも短く、軽くするためには、適切な目標を立て、「できた!」「さすがだね!」を積み重ねることが大切です。

小さな目標を複数立て、そして定期的にフィードバックを行うことで、前向きに本番まで走り続けることができます。

また、数的目標に向けて一生懸命頑張ることは、これから先もまだまだ続く人生において大きな糧にもなりますし、決めた習慣目標を継続することができれば、自分自身に対する肯定感も上がります。

中学受験は「親子の受験」です。目標を立てる、取り組む、振り返る、試行錯誤する、達成する、といった成長過程に深く携われるのは中学受験だからこそなので、ぜひ親子で話し合って、楽しんで目標設定をしてもらいたいと思います。

 

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※記事の内容は執筆時点のものです

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