中学受験ノウハウ 連載 今一度立ち止まって中学受験を考える

小5の夏 この時期の頑張りが1年半先の未来を決める!?|今一度立ち止まって中学受験を考える

専門家・プロ
2024年8月08日 石渡真由美

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「受験の天王山」と言われる夏休み。

受験生の6年生にとっては最も大事な時期であるのは間違いありませんが、実は5年生にとっても非常に重要な時期でもあるのです。

では、5年生の夏に取り組むべきことは──?

1日6時間の学習量を目安に計画的に進める

40日間もあると思っていた夏休みも、気がつけば折り返し地点にきました。この夏、頑張ってきた子も、いまひとつ頑張れなかった子も、ここで一度立ち止まって、後半を有意義なものにしていきたいですね。

さて、夏休みになると、毎年保護者からあがるのが、「夏休みは一日何時間勉強をすればいいですか?」という質問です。夏休みは塾の講習のある日とない日があり、また塾によっても講習時間がまちまちなので一概には言えませんが、5年生であれば1日6時間くらいは受験勉強をしてほしい、というのが私の考えです。でも、ただ講習を受け、塾から出された宿題をこなすだけの勉強では成績は上がりません。

夏休みに最も力を入れていただきたいのは、これまで学習してきた内容の復習です。塾の夏期講習の中身も復習が中心ですが、それはこれまで学習してきたことを一通りおさらいするものです。すでに理解できているもの、まだちょっと自信がないもの、まったく分からないものなど、習熟度はお子さんによって違ってきます。そこで、この夏の家庭学習は、「お子さんにとっての苦手や穴を埋める学習」をするようにしましょう。

学校のない休みの間は、朝起きるのが遅くなったり、つい夜更かしをしてしまったりと、生活が乱れがちになります。そこで、いつ何をするか1日の予定をおおまかに計画しておくようにしましょう。あまりあれこれ詰めこみ過ぎてしまうと、計画倒れで終わってしまい、「できなかった」という印象だけが残り、お子さんのモチベーションを下げてしまいます。子どものやる気を継続させるには、「ちょっと頑張ればなんとか乗りきれる」くらいがベスト。毎日、やるべきことをコツコツと取り組む、それがこの先の成績へとつながっていきます。

子どもの苦手や穴を見つけるのは親の役目

では、具体的に何をやればよいか──。これは、お子さんによって変わってきます。それを見極める判断材料となるのが、これまで受けた模試やテストです。多くの親御さんにとって、模試やテストで最も気になるのは、偏差値や点数といった数字が表す結果でしょう。しかし、見ていただきたいのは、そこではないのです。

まず、お子さんの解答を見て、うちの子はどの単元が苦手で、どのような問題になると解けないのかと、細かく分析してください。そんなことは私にはできない、とおっしゃる親御さんもいますが、厳しいことを言いますが、これは親御さんの役目だと私は思っています。それができずに、ただ数字の結果だけを見て、お子さんに「なんでこんな点数なの?」「もっと頑張りなさい」と言うのは、あまりに無責任です。もちろん、判断が難しいと思ったときには、塾の先生に相談してみてくださいね。

5年の夏 最も優先すべきは算数の復習

特に洗い出していただきたいのが、算数です。なぜなら算数は積み上げ型の教科で、一つ苦手ができてしまうと、それ以降の成績にも影響を与えてしまうからです。

中学受験の勉強は4年生から6年生の3年間かけて行うというイメージがありますが、実はほとんどの教科が5年生のうちに単元学習が終了します。では、6年生になったら何をするのかというと、それまで学習してきた内容の総復習と演習のくり返しです。そのため、5年生の1年間は、とてもスピーディーに授業が進んでいきます。

特に算数は、5年生の1学期に「円の面積」「体積」「割合」「食塩水」、塾によっては「比」まで、入試に直結する重要単元を次々と学習します。ここで算数に対して苦手意識を持ってしまうと、その後にとても苦労します。だからこそ、5年生の夏休みのうちに苦手を克服しておくことが大事なのです。

すでに大きくつまずいてしまっている子は、基礎から学び直し、「分からない」をそのままにしておかないことです。家庭だけで進めていくのが難しい場合は、一時的に家庭教師を付けてみるのもいいと思います。まずは、算数の「苦手」をなくすことを第一目標にしましょう。

次にやっていただきたいのが、社会です。社会は5年生の1学期で地理の学習を終えます。その後、5年生の2学期に歴史、6年生の1学期に公民を学び、次に地理が出てくるのは1年後の6年生の夏の総復習のとき。つまり、約1年間、地理の学習はしないということです。そこで、この夏は、これまで学習してきた地理の範囲を一通りおさらいしておきましょう。今覚えたところで、1年後には忘れてしまうことは往々にしてありますが、ここで一度、総復習しておくのとしないのとでは1年後に大きな差が出ます。

優先順位で言うと、算数>社会となりますが、余力があれば国語と理科もやって欲しいところです。国語はとにかくたくさんの本を読みましょう。理科は単元ごとに分かれているので、苦手対策がしやすいと思います。今はYouTube動画でたくさんの教材があります。手前味噌になりますが、私もYouTubeチャンネルを持っています。特に「月の満ち欠け」の回は「とても分かりやすい」と好評を得ています。お子さんが天体が苦手という場合は、ぜひご覧になってください。

夏の立て直しで秋以降に伸びていく子はたくさんいる

4年生から中学受験の勉強を始めたとすると、この夏で1年半が過ぎ、マラソンでいうとちょうど中間地点に差し掛かりました。5年生の今の時期、お子さんの立ち位置がなんとなく見えてきて、「うちはもう難関校はムリそうね」とあきらめモードになってしまうご家庭は少なくありません。でも、本番まではあと1年半もあるのです。まだまだ伸びていく可能性は十分にあります。特に5年生の夏に、うまく立て直しができた子は、その後、グングン伸びていきます。私はそんな子ども達をこれまでたくさん見てきました。ですから、お子さんの力を信じて、応援してあげてください。

秋になると、各学校では学校説明会や見学会、文化祭などの学校行事が開催されます。6年生になると今以上に忙しくなりますので、学校訪問は5年生のうちにしておくことをおすすめします。だいたいどの学校も同じ時期に開催しますので、夏休み中に親子でさまざまな学校のホームページを見ておき、ある程度目星をつけておくといいでしょう。「この学校の制服がかわいいね」「面白そうな行事があるね」など、親子で楽しみながら学校選びができるのも、5年生の今ならでは。この時期から志望校を決めておく必要はありませんが、憧れの学校がいくつかあると、学習のモチベーションも上がり効果的です。

また、中学受験を経験したお子さんを持つ親戚やママ友・パパ友がいるようなら、夏休みの時間を使って、受験当時の思い出や中高一貫校での学校生活のお話を聞かせてもらうのもいいと思います。身近に「憧れの存在」ができることは、きっとモチベーションアップにつながるでしょう。

どうか5年生の夏を有意義にお過ごしください。

※記事の内容は執筆時点のものです

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