連載 「下剋上受験」桜井信一 特別インタビュー

算数の成績が大きく伸びない理由|「下剋上受験」桜井信一 特別インタビュー(6)

2017年2月24日 中学受験ナビ 編集部

両親は中卒、それでも娘は最難関中学を目指した! そんなインパクトある実話がベースのTBS系ドラマ「下剋上受験」……。その原作者である桜井信一氏に、自身が監修を務める「マイナビ家庭教師」のこと、中学受験のこと、勉強方法についてなど、受験生を抱える保護者はもちろん、すべての親御さん必見の話を聞いた。

算数の成績が大きく伸びない理由……。それは算数の勉強が“解き方を覚える作業”になってしまっているから。「解き方を覚える→忘れる→復習する」の繰り返しでは、いつまでたっても前に進めない

――小学4年生以下など、受験までに時間的余裕がある場合には「日常生活に即した目で数字を捉えられるようにしたい」という前回のお話ですが、具体的にどのような準備をすればよいでしょう?

なにも特別なことをする必要はありません。ぜひスーパーに連れて行ってあげてください。ぜひケーキを切らせてあげてください。そして、世の中のあらゆる数字に関心を持たせてあげてほしいと思います。

整数、分数、小数、これらを見つめる目が生活に即したとき、学力は劇的に上がります。1ダースが12である理由が説明できて、電車が満員の時間もあればガラガラの時間もあるのに電鉄会社は損をしていないことがなんとなく予想できて、お小遣いを使うペースと貯めるペースがどうなれば貯金が底をつくかが把握できたとき、倍数や約数、平均という考え方、ニュートン算の仕組み、これらがスーッと吸収できるはずです。

低学年のうちから塾に通うこと、先取り教育をすること、それだけが有利な勉強法とは限りません。急いで難問に挑戦するより、むしろ物事の本質にどのくらい近づけるかのトレーニングを重ねたほうが 「学力の足腰」は鍛えられるのではないでしょうか。

生活のなかで数字がどう使われているのかを深く理解できると、算数の問題を見たときに頭のなかで数字が上下左右、自由自在に動き回ります。数字を見ただけで量を感じられるようになります。

そうして数字をリアルに捉えることができれば、受験までのラストスパートで一気に学力は伸びることでしょう。

――「ラストスパートで一気に伸びる」ための秘訣が日常生活に潜んでいるという指摘は実にユニークですね。

算数という科目は多分に誤解されているんじゃないかと思うんです。単に解き方を覚えてそれを繰り返し演習するだけが算数ではありません。本来は解き方を学んだときに「なにか」を感じなければならないと思うんですね。

まず「へえー、うまく考える人がいるね」とその道筋に感動しなければならない。そんな「算数的感性」を養うためにこそ、日常生活での数字トレーニングが大きな意味を持ってくるのだと思います。

たとえば特珠算を習ったとしましょう。線分図を書いて解きなさいと教わる。地頭のよい子はその便利さを感じ、解き方の裏側にある仕組みを自然と理解します。スパッと問題の本質にたどり着いちゃうわけです。そして理屈がわかっているからいずれ線分図なしで解くようになる。線分図という手段を省略して、スピーディーに答えを導く術を自然と見つけ出すんです。

それに対し、多くの子は線分図という型だけを覚え、ひたすら図を書き続けます。「特珠算を覚える作業」に必死になって、「思考する」という発想まで至らないんですね。

極端にいうと、頭を働かせていない状態になる。難関中学を狙うのでしたら、この機械的に解く、解き方をただ暗記しているというやり方では間違いなく限界がやってきます。

――範囲が決まっている週テストならばそこそこできるけれど、幅広い単元が出題される模試では結果が出せない……そんなご家庭の声をよく聞きます。

「算数の成績が大きく伸びない」という悩みの多くはここに問題があるケースが多いのではないでしょうか。算数の勉強が「解き方を覚える作業」になってしまっていてはそれは「忘却曲線」との闘いでしかない。

「単元を習う→解き方を覚える→忘れる→復習する」の繰り返しでは、いつまでたっても前に進めません。

そもそも単元を習ったばかりの週テストで点数をとるのはそんなにむずかしいことではないですよね。覚えたての解き方で機械的に式を立てていけばクリアできちゃう。

ところがしばらく時間が経って行われる模試で同じ単元の問題が出されると、今度は「解き方を思い出す作業」になってくるんですね。あれ? 線分図ってどう書くんだっけ? ここで解き方を忘れていたらアウト。

もし覚えていたとしても、それが応用問題だった日には太刀打ちできず、答案用紙を前に途方に暮れるしかない。

いずれにしろ暗記算数の限界です。理屈や仕組みごと自分のものにしておかないかぎり、この状況は変わりません。たくさん類題を解いて複数の解法パターンを暗記すればスラスラできるようになるという話ではないんですね。

算数という科目は、本質的な理解ができてこそはじめて記憶として定着し、さらに応用がきくのだと思うんです。

文◎「マイナビ学生の窓口」編集部

※この記事は「マイナビ家庭教師」Webサイトに掲載されたコラムを再編集のうえ転載したものです


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※記事の内容は執筆時点のものです