連載 プラスにする中学受験

【連載第5回】「プラスにする中学受験」~生きる力をたくわえる~

2016年4月22日 杉山 由美子

「メシの食える大人に育てる」のが、子育ての最終目的。そこさえブレなければしっかり育ちます。

『わが子を「メシの食える大人」に育てる』のは親の最終目的かもしれません。中学受験をめざす夢いっぱいのお父さんやお母さんにとって、まったくちんぷんかんのことに感じられる、当たり前すぎる目標かもしれません。

この本を書いたのは『算数脳パズル なぞぺー』の著者「花まる学習会」を主催するカリスマ塾講師の高濱正伸さん。 「自分でメシを食っていける大人」になるために「ことばの力」「自分で考える力」「思いうかべる力」「試そうとする力」「やりぬく力」の5つの力が必要だと10歳までの小学生のために「花まる学習会」をひらき、その後、中学受験もてがけるようになりました。

高濱さん自身かなりユニークな経歴の持ち主です。8年もかけて東大を卒業。世界を旅行するなど、試行錯誤を繰り返し、友人たちと学生時代、ひきこもりの若者をめんどうみる小さな塾を開いたのですが、とても難しいことを実感したそうです。一週間でもひきこもってしまうと、「人間はかんたんにこわれてしまう」のです。社会的な関係がひとをひとにしているのです。

そして方向転換。小さいうちに生きる力をつける塾を作ったのです。思いっきり体と脳をフルに活動させる塾です。おもしろい問題を解かせ、こうだろうか、ああだろうか、手を使い、頭を回転させ、全力で挑む。だめなら初めに戻ってやり直して、解答にたどりつく。やりぬくことのできるタフな子供を育てる。それが「花まる学習会」の目的です。

「勉強することがおもしろい」と思える体験ををさせるのです。

高濱さん自身、子供時代に、当時ベストセラーになり大人も子供も夢中になった多胡輝さんの『頭の体操』を必死に解いた経験があります。

ムダな役に立たない時間に思えても、子供が夢中になって一心不乱にやっている時間を邪魔しないでください。その時間にこそ脳と体は育っているのです。高濱さんは毎年サマースクールを開催し受験生も連れて行きます。かなり危険な川遊びもさせます。

そうやって「夢中になる」ことで勉強もすっきりできるのです。

大人は「くだらない」「時間のムダ」としりぞけてしまいがちな、テレビ、ゲーム、パズル、マンガ、どろ遊び、などでたっぷり遊んだ子供は成績上位クラスにかなりいます。

中学受験は「生きる力」をたくわえるとき。「メシの食える大人」に成長できる力をつけるときでもあるのです。

※記事の内容は執筆時点のものです

杉山 由美子
この記事の著者

出版社勤務をへて、フリーランスライターに。おもに教育、女性が働くことについて取材、執筆をしている。著書に『長男が危ない』(草思社文庫)『中学受験SAPIXの授業』(学研新書)『お金をかけずに「できる子」を育てる』(岩崎書店)など多数。