連載 プラスにする中学受験

【連載第12回】「プラスにする中学受験」~夏休みに思い出に残る体験をさせてあげよう~

2016年7月28日 杉山 由美子

「体感することが大切」

夏休みを夏期講座に費やすのは受験生の家族のもはや常識となっている。夏期講座はカリキュラムに組み込まれているから休むわけにはいかないのだ。当然長期休暇は取りにくい。そこをどう考えるか。

数日でも出かけた家族はいる。「このギザギザの海岸線はどこかわかるかな?」講師の質問にすっくと手を挙げたのは日焼けした少年。「リアス式海岸です」。聞けば、彼は夏休みに宮城県に親子で旅行して、実際の海岸線を見てきたそうだ。

講師はそれ以上話を引き延ばしはしなかったが、彼の眼には入り組んだ美しい海岸線が映っているようだった。記憶にも定着していることだろう。

中学受験は受験勉強だけに限らない。余力にある子が強いなと感じさせられる。

ある子は理科の授業で、ベーキングパウダーでパンがふくらむことを知っていた。お母さんがよくお手伝いをさせ、買い物にもついていくらしい。その女の子はスーパーマーケットで何が売られているかよく知っていた。どうやら流通の仕組みも母親から教えてもらっているらしい。

「今の子は賢いですよ。いろんなことをよく知っています。僕は生徒を尊敬しています。見聞も豊富で、親も子どもにいろんな体験をさせています。音響の話しをしたとき、世界のどこのホールがすばらしいか目を輝かせて話してくれた子がいました。ああいう子が育っている日本の未来は明るいと思いました」

夏期講座の講師の声も明るかった。講師のやりがいはできる子を育てることにあるのではないだろうかと、この講師の話を聞いても思った。

夏休み、ついカリカリして子どもを追い立てることに躍起になってしまうが、ちょっと気分にゆとりをもって子どもの「ひきだし」を増やしてあげようではありませんか。

中学受験は「算数」が肝だが、ほかの国語、社会、理科もかなり高度な知識を必要としている。「これぐらいの賢さ、社会知識を持った子に入ってほしい」という願いをもって、各学校の教師が作成した問題である。

落とすためにむずかしくしているわけではない。

普段からテレビなどを見ても、時事問題を話題にし、親がそれとなく解説してくれる家庭の子どものほうが中学受験向きなのである。きつい言い方だが中学受験は家庭の教養の差がでるのである。「中学受験は親の責任が大きい。落ちたら子どもにはほとんど責任はない。親と塾講師の責任です」 そう言い切る講師もいるほどである。

しかし私が取材した範囲ではわが子のために夏休み子どもが体験をふやし、社会体験をさせ、考えさせる訓練をしていっしょに学んだ親子もたくさんいたのである。

子どもはどこでどう伸びるかわからない。長い目で見て、子どもにとっていい体験をさせ、頭も心も育つようにしてあげることこそ大事なんだと思います。

※記事の内容は執筆時点のものです

杉山 由美子
この記事の著者

出版社勤務をへて、フリーランスライターに。おもに教育、女性が働くことについて取材、執筆をしている。著書に『長男が危ない』(草思社文庫)『中学受験SAPIXの授業』(学研新書)『お金をかけずに「できる子」を育てる』(岩崎書店)など多数。